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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第五章 虚空記録層(アカシックレコード)

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第27話 二人のクロノスとノルンの計略

「ちょっと……なんで二人いるのよ? 双子だったの?」

「レアさん、落ち着いてください。レイス、何が起こっているの?」

「わ、わからない……自分が掴んでいる情報にクロノスが二人なんて聞いたことがないっすから……」


 レア、言乃花、レイスがパニックに陥っていた時、冬夜は隣で真っすぐにクロノスを見上げていた。


「おやおや? そちらの三人の方はどうされてしまったのでしょうか?」


 空中で嘲るような笑みを浮かべながら見下ろしている二人のクロノス。


「そうか……お前の正体が分かったぞ!」

「冬夜くん、どういうことなの?」

「何が分かったの?」

「自分もどういうことか説明が欲しいっす。なぜ片方のクロノスだけが傷を負っているのか……額を()()()()()()()()はずなのに一切ダメージが入らなかったんですよ? なのに……理解できないっすよ」


 突然大声を上げた冬夜に向けて三人が次々に質問を投げかける。


「ちょっと落ち着いて! 異変に気が付いたのは俺じゃなくてメイなんだ」

「「「え? メイちゃんが?」」」


 三人が驚きの表情を浮かべたまま一斉にメイの方を向くと頬を赤らめ、慌てて冬夜の影に身を隠す。


「あの、結界の中から皆さんの戦いを見ていた時に気が付いたのですが……クロノスだけ影がなかったんです」


 冬夜の背中から半分だけ顔を出すと恥ずかしそうに話し出すメイ。


「何かおかしいなと思って冬夜くんに話したんです、準備していた魔法をどうしようって……」

「そうなんだ、なぜかレイスさんたちには影があるのにクロノスだけ影がなかった。どこに向けて撃とうかと悩んでいたら、いきなり一布さんが現れて副会長から渡された()()()()()を空に向かって打ち上げたんだ」

「「怪しい機械?」」

「……なるほどね、玲士やるじゃない」


 レイスと言乃花が唖然とした表情を浮かべる中、口元を吊り上げるレア。


「そう、何の機械なのかはわからないけどそれが音もなく弾けた。そうしたら人影のような輪郭が浮かび上がってきたんだ」


 冬夜の説明を聞いても呆然としているレイスと言乃花にレアが口を開いた。


「あのね、簡単にいうとあなたたちが戦っていたクロノスは『本体じゃなかった』ってことよ。おそらく妖力で作られた幻影……」

「素晴らしい! 人間という分際で見破ることができたことを褒めて差し上げますよ!」


 レアの言葉を遮るように高笑いと歓喜の声をあげるクロノス。


「やっぱりね。何がおかしいと思ったのよ、攻撃を受けても反撃をしないし……」

「さすが私と対等に渡り合った実力者です。……私が傷を負うことなどありえない、いやあってはならないのですよ!」


 クロノスが叫ぶと様子が一変した。憤怒の表情に変わると妖力が全身からあふれ出し、天まで突き抜けるような青白い火柱がヘリポートを取り囲むようにいくつも立ち上る。そして二人いたクロノスが青白い炎に包まれるとひときわ大きな火柱が上がる。


「いよいよ本気を出してきたってわけね……」


 その様子を見たレアが呟くと頬に一筋の汗が流れる。隣で見上げていた言乃花が何かを思い出したかのように冬夜へ問いかけた。


「そういえば、冬夜くん? 誰の指示で空中にいるクロノスへ魔法を放ったの? 一布が的確な指示を出せるわけがないし……」

「そうよ! いくら本体がいる位置が分かったところで相手はあのクロノスよ? 普通に魔法を放ったところで気が付かれてしまうわ!」


 言乃花の言葉を聞いて我に返ったレアも畳みかけるように冬夜へ詰め寄る。


「レアさん、落ち着いてください。俺に指示を出したのは()()()なんです」

「「はあ? どういうことなの?」」

「俺にも分からないのですが……声が響いたんですよ、『私がアシストしてあげましょう。空中に見えている人影へ向かって二人で魔法を放ちなさい』と。罠かもしれないと思いましたが、三人を助けるためにはこうするしかなくて……」


 冬夜の口から語られた事実に目を丸くするレアと言乃花に対し、無言で空を見上げるレイス。



「ふふふ…ここまでは順調ですね」

「そうですね、お姉さま。ただ……気になる気配も近づいてきていますわ」

「ええ、さすがに感付かれましたか。観測者(ウオッチャー)と遭遇することは避けねばなりません……()()()()()()ですが、あのバカ(クロノス)を止める手助けをしますか」


 笑みを浮かべ、意味深な呟きとともにクロノスを見上げるノルンとアビー。

 二人が指す『契約』とはいったい?

 観測者(ウオッチャー)とはいったい誰のことのなのか? 

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