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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第五章 虚空記録層(アカシックレコード)

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第25話 戦いに刺した一筋の光明

(やはりクロノスが……)


 混沌とする状況の中、因縁の相手であるクロノスをレイスが睨みつけていると背後から声をかけられた。


「レイスくん、ちょっと落ち着きさない」

「レアさん、自分はいつでも冷静っすよ」

「気配を隠していない私に背後を取られていてどこが冷静なのかしら? いつものあなたなら気が付いているはずよ」


 狼狽えたレイスが慌てて後ろを振り向くと、レアの右手が眉間に突きつけられた。


「これでも自分は冷静だと言えるのかしら?」

「……」


 否定できない状況なのに受け入れられず、黙って立ち尽くすレイス。


「おやおや、仲間割れでしょうか? ずいぶん余裕があるのですね?」


 声が響くと同時にクロノスが二人の左側に現れる。


「しまった……」

「お二人は大変仲が良ろしいようですが……私とも遊んでもらえないでしょうか?」


 笑顔のまま青白い炎を纏った拳で襲いかかるクロノス。反応が一瞬遅れたため防御が間にあわず、二人が覚悟した時、金属がぶつかり合う様な甲高い音が響いた。


「チッ……もう一人いたことを忘れていました」

「間に合ってよかった……あなたの思い通りになんてさせないわ!」


 レアたちのすぐ側にいた言乃花が魔力を纏わせた両手を前に突き出し、クロノスの拳を防いでいた。その隙を見逃さず、一メートルほど後ろに飛んでクロノスとの距離を保つ二人。続けて言乃花も後ろに退がる。


「言乃花さん、申し訳ないっす……」

「言乃花ちゃん、ありがとう。さて、反撃開始といきましょうか」


 レアを中心に左側にレイス、右側に言乃花が陣取ると三人は一斉に魔力を纏い始める。


「素晴らしい! 以前お見掛けした時よりも成長されているようですね」

「あら? よそ見していられるとはずいぶん余裕なんですね?」


 クロノスが三人の様子に感嘆の声を上げていると、不意に冷たい金属があてがわれる感触がしたかと思うと耳元で囁く声がする。


「ずいぶん物騒な真似をされますね……アビーさん?」

「私を無視するとはいただけないですわ」


 音もなくクロノスの背後に現れたアビーのポイズニングダガー・スコルピオがクロノスの喉元に突き付けられる。


「ふむ、ずいぶん追いつめられしまったということでしょうか。そろそろ私も()()()出さねばいけませんね」

「それは楽しみですわ。でも……その必要はありません」


 言い終えたアビーが一気にダガーを横へ引いた時だった。クロノスの口元が軽く引き上がると全ての時が止まり、姿が消える。


「チッ……逃げられましたか……」


 再び時が動くとダガーが虚しく空を切り、舌打ちするアビー。


「アビー、すぐにその場から離れなさい! そこの三人も巻き込まれたくないならすぐに後ろに飛びなさい!」


 少し離れた位置で戦況を見ていたノルンの怒号が響き、とっさに後方へ体を飛ばす四人。するとクロノスがいた位置を中心に強大な力に押しつぶされるかのように地面が陥没した。


「ずいぶん優しくなりましたね、ノルン」

「何を言っているのかよくわかりませんね。こんなところでくたばってもらっては困りますからね」

「何か考えがありそうですね? しかし、あなた方も必要としている虚空記録層(アカシックレコード)を見つけきれていない現状で私を倒してしまってはどうするおつもりでしょうか?」

「私たちの調査で()()()()()()となると話は変わってくると思いませんか?」

「目星がついただと?」


 クロノスの目が見開かれ、今までになく強い焦りが表情に現れる。


「あら? そんなに驚かれてどうされたのでしょうか? まさか完全版が眠る場所の見当すらついていないなどありえないですよね、三大妖精ファーストを名乗るあなたが……」

「ククク……仕方がない、その挑発に乗ってあげま……何が起こった?」


 クロノスが言いかけた時、一筋の光が空中を駆け抜け頬に紅い花を散らした。


(そうですか……気付いた人間がいましたか……)


 ノルンがわずかに視線を動かし、自分が施した結界のほうを見る。

 誰一人傷つけることができなかったクロノスに傷を負わせた者とは……? 

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