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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第五章 虚空記録層(アカシックレコード)

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第24話 仲間割れは好機か否か?

「何の用があって現れたのですか? クロノス」


 全身に紫色の妖気をまとい、あふれ出す殺気を隠そうともせずに問うノルン。


「いえ、何やら楽しそうな気配がしたので来たまでです。あなたから熱い視線を向けられるとは嬉しいものですね」


 気絶している響を抱えたまま嘲るような笑みを浮かべ、地上を見下ろしているクロノス。ふと左手を拳にすると口元に当て、少し考え込むような仕草を見せる。


「ふむ……今の状況では少し身動きがとりにくいですね。あなたたちの相手をしていられるほど暇ではないのですが、気分がいいので少し遊んで差し上げましょう」

「つくづく癇に障る言い方しかできないのですね……まあ、いいでしょう。あなたには聞きたいこともたくさんありますし、これは良い機会ですね」


 ノルンが言い終えると同時に隣にいたアビーが目を輝かせる。


「お姉さま、早く遊びたくてうずうずしております。ああ、あの余裕たっぷりな表情を今すぐ絶望に染め上げてしまいたい! それに先ほどからお姉さまの妖力がどんどん増していて……」

「そう、あなたも遊びたいのですね」

「はい! お姉さまと一緒なのは本当に久しぶりですから……先ほども楽しく遊んでおりましたが、コイツ(クロノス)に邪魔されてしまいましたので」


 言い終えると空を見上げるアビー。ノルンと同じように紫色のオーラが全身を包み始める。


「ほう、()()()()()()あなた(アビー)も力を使えるとは……魔法を(ソーサリー)消し去る者(・ブレイカー)の名を持つだけありますね。いや、これはもう一つの……」


 そこまで口にしたところで、突然アビーが空中にいるクロノスの目前に現れた。同時にヘリポート内に金属がぶつかり合うような甲高い音が響き渡る。


「余計なことを口走らないほうが身のためですわよ?」

「おや、何か不都合な事でもあったのでしょうか?」

「ご自身の胸に聞かれた方がよろしいのでは? そんな物()を抱えながら私たちの相手が出来るとは思えませんね」


 アビーが次の一手を繰り出そうとした時、目の前からクロノスの姿が消えた。同時に背中に蹴り飛ばされたような強い衝撃が走り、地面に叩きつけられるように落下していく。激突する直前、ノルンに抱きかかえられた。


「危なかったですわ。あのままでしたらあなたでも無傷ではすみませんよ」

「申し訳ありません」


 ノルンがアビーを立たせていると後ろから冷たい声がかかる。


「チッ、解除するのが少し早かったようですね。無礼を働いた者にはお仕置きが必要だと思いませんか? ノルン」

「誰に物を言っているのでしょうか? ……()()()()()()は達成しましたから」


 ノルンが視線を向けた先にはアビーを蹴りつけた勢いのまま地上へ降りたクロノス。感情を映さない瞳で周囲を見渡すと響を無造作に地面へ転がし、怪訝そうにノルンへ向き直る。


「目的? 私を空中から降ろすことでしょうか?」

「ええ、あなたが空中にいたままでは私たちには不都合が多いのですよ」

「ますます言っている意味が分からないですね。あなたたちと遊ぶのに何の不都合があるのでしょうか?」

「あら? まだわからないのですか?」


 わざとらしく大きく手を広げると大げさにため息を吐いて見せるノルン。


「ずいぶん回りくどい言い方をするのですね?」

「頭の回転が速いあなたなら理解できていると思ったのですが?」

「……どうやら本気で叩き潰す必要がありそうですね」


 全身からは青白いオーラが立ち昇り、苛立ちを顕わにするクロノス。。


「おやおや、先程までの余裕はどこにいったのでしょうか? 仕方ありませんね、ヒントを差し上げましょう。この場所にいるのが私たちとそちらの人間だけだと思わないほうがよろしいですよ」

「……なんだと?」


 クロノスが言いかけた時、不意に炎を纏った風が吹きつけそのまま額を撃ち抜いた。


「そうっすよ、自分たちの存在を忘れてもらっては困るっすね」


 ノルンの後方から現れたのは結界内に閉じ込められていたレイスと言乃花。鋭利な刃物で切られたような傷が手や腕にあり、制服にはうっすら血がにじんでいた。


「あなたたち、無事だったのね!」

「レアさん、お待たせしてすみません」

「ご心配おかけしました」


 険しい表情のまま様子を伺っていたレアだったが、レイスと言乃花を見つけると思わず大きな声をあげた。


「感動の再会といきたいところっすけど、あの程度で倒れるほどやわな相手ではないっすからね」

「ククク……私としたことが一本取られましたね、よ……全員まとめて相手をして差し上げましょう!」


 レイスが視線を向けた先には額を撃ち抜かれたまま不気味に笑うクロノス。青白い妖気が柱のように天へ立ち上ると全身を包み込む。そして、左手で乱暴に髪をかき上げると額の穴が見る間に塞がっていく。


 それぞれの思惑が見えぬまま決着のときが近づいていた。

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