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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第五章 虚空記録層(アカシックレコード)

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第20話 戦いに迫る第三の異変

「メイ、俺から離れるなよ」

「冬夜くん、すごく嫌な予感がするから気を付けて!」


 冬夜の後ろに素早く身を隠すメイ。表情に不安の色はなく、数メートル先に立つノルンをしっかりと見つめていた。


「おやおや、二人からそんな視線を向けられるとは……少し悲しくなってしまいますね。私はお二人と()()()()つもりは毛頭ありませんよ」

「ふざけるな! お前たちの言葉を信用するつもりはない!」

「ふふふ、実に好戦的になられましたね。お話を聞いていただく前に少し遊んであげましょうか?」


 口元を吊り上げ、不敵な笑みを浮かべるノルン。


「メイ、先手必勝で仕掛けるぞ!」

「わかったよ。私も準備しておくからね」


 目を合わせて小さく頷き合う冬夜とメイ。すぐにノルンへ向き直ると黒い魔力が二人を包み始める。


「なるほど……冬夜くんの魔力でメイさんを囲い、被害を最小限に抑えようということですか。とても素晴らしい試みだと思いますわ、褒めて差し上げましょう」

「お前に褒められてもうれしくなどない、のんびり話しているとは余裕なんだな」

「焦って仕掛けるなど愚門ですよ……ん? この反応はまさか……?」


冬夜は一瞬の隙を見逃さなかった。小さく右手の人差し指を上に上げるとノルンの背後にできた影の中からナイフのような形をした無数の黒い魔力が一斉に襲いかかる。


「チッ……そうですか、影を使うとは厄介な技を使うのですね」


 無数に襲いかかるナイフを体を目にも止まらぬ速さでしならせながら避けていくノルン。


「悪くない戦術だと思いますが、ナイフを出現させるだけでは芸がないですね」


 小さく息を吐くと指を鳴らすノルン。するとナイフの軌道がわずかにずれ始める。


「クソ……やはり一筋縄でいく相手ではないな」

「ずいぶんと見くびられていましたわね。わたしの能力は『音』ですよ? 空気の微振動を起こすことなど造作もないことです」

「ずいぶん余裕だな。だけど自分の周りをもう少し見ておいた方がよかったんじゃないか?」


 冬夜の言葉を聞いたノルンが辺りを見渡すと、先ほど軌道をずらして飛び去ったはずのナイフが周囲を取り囲んでいた。


「ずいぶん状況が悪化しておりますね。これは絶体絶命と言うヤツでしょうか……」

「いつまでその余裕があるか見物だな! メイ、俺が合図したら目を閉じて身をかがめるんだ!」

「わかったわ」

「先手必勝! 爆ぜろ、黒き炎よブラスト・ブラック・ナイズ


 冬夜が両手を体の前に突き出し、拳をきつく握りしめるとノルンを取り囲むナイフが一斉に閃光を放ちながら爆発する。煙が一瞬にしてノルンの姿を覆い隠し、爆風によって巻き上げられた小石などからメイを守るように冬夜は覆い被さった。


「少しはダメージを与えられたか? メイ、怪我はしていないか?」

「うん。冬夜くんが守ってくれたから……でも、すごい煙で何も見えないね」

「ああ、だけどあの程度でくたばるような相手じゃない。メイも警戒をしていてくれ」


 ゆっくりと立ち上がると背中合わせになり、警戒を強める二人。


「魔力を察知させないために影を利用し、私の能力を利用したワナを仕掛ける……とても素晴らしい成長ですね」


 声が聞こえた方に冬夜が視線を向けるとうっすらと人影が見えてくる。


「予想通りか……少しダメージを与えられたら良かったのだがな」

「数か月前、まともに魔法を使えなかった人間とは思えないですね。せっかくのアビーとお揃いの服が少し汚れてしまいましたわ」


 煙の中から現れたのは、服についた埃を丁寧に払い落とすノルン。服に少し焦げたような跡が付いており、両手には擦れたような傷がついていた。


「無傷ではないところを見ると少しは手ごたえありといったところか」

「人間の成長速度を見誤っておりました。さて、私も楽しませていただけるようですから少し本気で遊ばせていただきましょうか?」


 ノルンが目を細めると周囲の空気が一変する。冬夜たちを取り囲んでいた煙が瞬時に立ち消え、空気の微振動が全身に伝わってくる。


「クソ……まだ奥の手は使いたくない……」

「冬夜くん……私はいつでも大丈夫だよ」

「ありがとう。チャンスは必ず来る……それまで離れるなよ、メイ」

「うん!」


 小声で話すと冬夜の背に隠れるように素早く向きを変えるメイ。両手で強く握りしめた制服の裾から微かに震えているのが伝わってくる。


「メイのことは俺が守る!」

「ふふふ、実にお熱い関係ですね。さあ、お楽しみはこれからですよ」


 ノルンが一歩踏み出そうとした時、突然立っていられないほどの振動と鼓膜を突き破るほどの爆発音が結界の外から響いてきた。


「な、なにが起こったんだ?」

「すごい爆発音……外の方から?」


 思わず片膝をついた姿勢で困惑した様子をみせる冬夜とメイ。


「もう嗅ぎつけてきましたか……ヤツの相手をしている暇はないのですが……」


 先ほどまであった余裕は消え、焦るような表情を浮かべて空を見上げるノルン。


 「ヤツ」とは誰のことなのか? 

 結界の外で一体何が起こっているのか?

 レアの行方も分からぬまま、事態は混沌とし始めてきた……

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