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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第五章 虚空記録層(アカシックレコード)

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第12話 両親の魔力と深まる謎

 レアとの話を終えるとそのまま温泉に向かった冬夜。露天風呂に入り、周りを囲む岩の中でも一際大きなものにもたれ掛かるとぼんやりと夜空を見上げた。レアから聞かされた両親の過去を含めた話で頭がいっぱいだった。


(フェイの因縁はそんなに昔からあったのか……それに、親父と母さんに起こったというあ()()……アビーと戦った時にメイに起こった変化と似すぎてないか……)

「あれ? どうしたんすか、冬夜さん? 難しそうな顔で考え事とはめずらしいっすね」


 突然声をかけられ、慌てて顔を向けると露天風呂の入り口にいつもと変わらぬ笑顔のレイスが立っていた。


「ビックリした。レイスさんも温泉に来ていたんですね」

「ええ、食後の運動にちょっと汗を流してきたんすよ。おかげで頭の中もすっきりしました。ご一緒させていただいても構わないっすか?」

「もちろんですよ。そうだ、レイスさん、少し相談に乗ってもらえませんか? 気になることがあって……」

「大丈夫っす。自分でよければ話を聞きますよ」


 二つ返事でレイスが受けてくれたことにホッとした表情を浮かべる冬夜。慎重に言葉を選びながら話を切り出す。


「ありがとうございます。さっきレアさんから両親の過去について話を聞いたんですけど、いくつか引っかかることがあって……もしレイスさんが知っていることがあれば教えてくれませんか?」

(ふむ……レアさんから何を聞かされたのか予想もできないっすけど、おそらく肝心な部分はぼかして話してるでしょうね。今の冬夜さんに情報を与えすぎるとパニックになりかねない。慎重に答える必要があるっすね、それに、副会長からの伝言も気になりますし)


 右手を顎に当て神妙な顔で冬夜へ向き直る。


「どこまでお力になれるかわからないっすけど、自分のわかる範囲でお答えしましょう。ただ、あんまり長湯するとリーゼさんのようになっちゃうので手短でも良いっすか?」

「リーゼの二の舞は勘弁したいですもんね」


 二人は顔を見合わせると思わず噴き出して笑い合う。保養所に着いてすぐ、ソフィーを温泉で待ち構えていたリーゼがゆでだこの様に真っ赤になっているのが発見された。その後、言乃花のお説教に加え、ソフィーからも怒られたリーゼは魂が抜けたように真っ白になっていたのだ。


「アレは面白かったっすけどね。どうしたら露天風呂に入って待ち構える発想になるんでしょうね」

「入口前のロビーならソファーもあって待ち合わせできるようになっているのに、ですよね。ほんとソフィーが絡むと考えられないことばかりしますよね」

「今頃大きなくしゃみをしているかもしれないっすよ」


 露天風呂ににぎやかな笑い声がこだました。それから一呼吸置くと冬夜は切り出す。


「レイスさん、相談したいことというのは俺の両親についてです」

「冬夜さんのご両親についてっすか?」

「はい、どんな些細な事でもいいです。特に母について何か知っていることはありませんか? レアさんから母が幻想世界出身であることは聞きました」

「そうっすね、他にどんなことを聞いたのか詳しく教えてもらえますか?」

「幼いころに不慮の事故に巻き込まれてレアさんのもとに来たこと、フェイの襲撃によって闇の力を覚醒したことですね」

(……なるほど、不慮の事故ってことにして説明したんすね。ルナさんの一件はイノセント家にあった()()()()を読んだだけ。ここはうまく話を合わせておくっすか)


 冬夜の話を聞いたレイスは少し俯くと神妙な声色で話し出す。


「そうっすね……自分が知っている情報としては、レアさんと大差ないかもしれないっすね。ただ、何らかの事情があってご結婚された時に改名されたとは聞いたことがあるっす。あと、響さんの魔力はもともと闇ではなかったらしいです」

「親父の魔力が闇の力じゃない?」

「ええ、違う魔力だったはずです。それもかなり特殊で、たしか『重力』を操ると……」

「重力を操る? じゃあ、闇の魔力はいったい誰が?」


 レイスの口から語られた新たな事実に何も言えなくなる冬夜。


「すいません、さらに混乱させるようなことを言ってしまって……」


 神妙な顔で謝るレイスを見て我に帰った冬夜。両手を前に突き出して慌てて頭を下げる。


「いえいえ、レイスさんは何も悪くないですよ。そういえば、レアさんから俺の実家に行くと聞きました。明後日に出発らしいです」

「それは楽しみっすね。ところで冬夜さん、だいぶ顔が赤くなっているみたいですが大丈夫っすか?」

「そういえば頭がボーッとしてきたような……」


 自分の顔に手を当てて確かめる冬夜に、レイスが笑いながら言う。


「のぼせちゃうっすよ。お風呂から出たらロビーで水分をしっかり取ってゆっくりしたほうがいいっすね」

「そうですね。じゃあ先に上がります。相談に乗ってくれてありがとうございました」


 冬夜は露天風呂を出るとフラフラとした足取りで脱衣場へ向かって行った。見送ったレイスは改めて湯の中に身体を沈める。


(冬夜さんの話は興味深いっすね。レアさんが何かを掴んでいるのは間違いないし、副会長の伝言も謎のまま……しかし、あまりにもタイミングが揃いすぎている。少し探りを入れる必要がありそうっすね)


 冬夜の実家へ向かうタイミングと芹澤の伝言の意味……そして、水面下で動き出した妖精たちの影。


 全てが揃う時、何が起こるのか?

 冬夜の実家で何が待ち受けているのか?

 運命の歯車はゆっくりと時を動かし始めた……

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