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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第五章 虚空記録層(アカシックレコード)

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第9話 明かされる両親の過去(中編)

「ところで冬夜くん、ルナについてどこまで知っているのかしら?」

「母さんのことですか? 親父から聞いているのは、俺が小さいころに病気で亡くなったということだけですね」

あの()大ばか者! ルナがいなくなって寂しい思いをさせてるんだから、親子のコミュニケーションを大事にしなさいってあれほど言ったのに!」


 握った両手の拳をテーブルに叩きつけ、全身から怒りをあらわにするレア。すると冬夜の隣に座っていたメイがそっと口を開く。


「すみません、私が聞いていても大丈夫なのでしょうか? 冬夜くんのご家族の話なので……」

「メイちゃんにも聞いておいてほしいの、きっと()()()()()が必要になるから」

「私の力が……ですか?」


 レアの言葉を聞いて不思議そうな表情になるメイ。


「今はまだわからないと思うけど……意味が理解できる時が来るから。冬夜くんを支えてあげてね」

「はい、わかりました!」


 両手を握りしめ、嬉しそうな表情を浮かべるメイ。


「話がずれちゃったわね。天ヶ瀬 瑠奈、いえルナは私と同じ幻想世界出身なのよ」

「母さんが幻想世界の人?」

「そこから説明する必要がありそうね。私の両親は向こうの世界で医者をしているのだけど、ある日幼かったルナを養子として引き取ってきたのよ」


 レアの口から語られる母親の話に引き込まれるように耳を傾ける冬夜とメイ。


「ルナの家族が()()()()()に巻き込まれて、ルナだけがなんとか一命を取り留めたと聞いているわ。うちに来たばかりの頃はショックのせいか完全に心を閉ざしていて、誰にも一言も口も聞いてくれなくて……呼んでもうなずくだけだし、私も両親も本当に困っていたの。いつまでたっても変わらないルナの様子に頭にきて、ある日無理やり近くの公園に連れて行ったのよ。そこでエミリアと出会って、それから少しずつルナは明るくなっていったわ」

「そうだったんですね。エミリアさんが親友だと言っていた意味がようやく理解できました」

「そうね。家が近所だったエミリアも含めて私たち三人は姉妹のように育ったわ。あ、そうそうエミリアとハワードも幼馴染なのよ。ハワードがすぐ暴走するからエミリアによく締め上げられていたわ」

(……昔からだったのか)


 懐かしそうに話すレアに対し、右手を口に当て考え込む冬夜。


「冬夜くん、どうしたの?」

「ああ、何でもないよ。ちょっと他のことを考えていた」

「悩んだらいつでも相談してね。一人で抱え込んじゃダメだよ!」

「ふふ、二人とも仲がいいわね。まさに青春って感じ!」


 メイと冬夜の会話にニヤニヤするレアに、思わず顔を見合わせ真っ赤になって俯く二人。


「それじゃ、続けるわね。成長した私たちはワールドエンドミスティアカデミーに入学するわけだけど、ルナより年上の私は先に入学したの。一年後にルナと一緒に入学したのがあなたの父親、天ヶ瀬 響よ。響は入学当初魔力制御が上手くできなくて、よく魔力暴走を起こしていたわ。そんな時に支えになっていたのがルナだったの。ルナ自身も魔法がうまく使えなかったから……夏休みに入ってすぐくらいだったかしら? フェイが襲撃してきたのよ……うちのバカ(翔太朗)がちょっかいをかけたのが原因でね!」


 その時のことを思い出したのか、テーブルの上で拳を震わせるレア。


「あのバカ、『ちょっと実験用のサンプルが欲しかっただけだ』とか言ってたけど、フェイが激怒していたから相当やらかしたに決まってるわ! 学園には結界があるから被害がなかったのが救いね」

(やっぱり副会長の父親だ……)


 思わず首を大きく上下に動かして頷く冬夜。


「その時、ちょうど学園に残っていたのが私と翔太朗、健太郎、弥乃、シリル、エミリア、そして響とルナだったの。響とルナには『危ないから来るな』って止めたんだけど、『みんなが戦うなら自分たちも加勢する』って一歩も引かなかった。戦いは数の優位もあって私たちが優勢だったけど……」


 ここまで軽快に話していたレアが急に俯くと黙り込んでしまった。冬夜が心配になり声をかけようとすると、ゆっくり顔をあげ意を決したように冬夜とメイを見つめる。


「ここから先の話を聞く覚悟はあるかしら?」

「俺の両親にいったい何があったのか……ちゃんと聞かせてください!」

「はい、私も聞かせてください」


 レアの問いかけに一瞬たじろぐように身体を後ろに引いた冬夜は、すぐさま気持ちを引き締めて答える。


「わかったわ……あと一歩でフェイを倒せるというところまで追い詰めた私たちは、そのことについ安心してしまった。この油断が大きなミスになってしまったの。怒り心頭のフェイが乱射した雷の矢がルナに襲いかかり、とっさに盾になった響が直撃を受けてしまった……」


 その言葉に息を呑む二人。


「崩れ落ちる響を見たルナが絶叫を上げた途端、二人を中心に闇の空間が広がり始めた……今でも忘れないわ。目を疑うような光景だった」


 冬夜とメイの脳裏に浮かぶのは苦い記憶。

 レアたちが目にした驚くべき光景とは?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回の話でふと思い出したのが「そうだよ。フェイ君って、強かったんだよ」と(笑 最近、すっかりお姉様二人にイジられるイメージが固まってしまっていて。 そんなフェイ君と戦った両親がどうなっ…
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