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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第五章 虚空記録層(アカシックレコード)

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第2話 哀しき絶叫と託された伝言

「……トレーニングマシンについての説明文がおわったら『おっと忘れるところだった、襲撃のことについてだが……すまない、紙が足りなくなったので今度説明してやろう! プロフェッサーのありがたい話を聞けることを光栄に思いたまえ!』で終わってるってどういうことだよー!」


 保養所のロビーに思わず手紙を握りつぶした冬夜の絶叫が響き渡る。


「冬夜様……どうされましたか?」


 心配そうな顔で佐々木が話しかけてきた。


「すみません。手紙が肝心なところで切られていたのでつい……」

「左様でございましたか。先ほど玲士様より、少々気にかかる報告を聞きました」

「副会長に何かあったのですか?」

「ええ、診療後の処置を行っている間に玲士様の病室に宅配業者がなだれ込むように入ってきて、大小さまざまな段ボール箱を山積みにして帰っていったそうなのです」

「ええっ、副会長の病室にですか?」

「主治医が止める間もないあっという間の出来事だったそうで……玲士様の指示だとは思いますが、会長がご覧になればなんとおっしゃるのか……」

「……」


 小さく息を吐き、遠くを見つめるような目をする佐々木。


「こんな時に奥様がいらっしゃれば一喝していただけるのですが……」

「奥様?」

「いえ、なんでもございません。玲士様は順調に回復されておりますので、検査が問題なければ近日中に保養所に戻られるそうです」


 いつも冷静な佐々木が珍しく口ごもる様子を不思議に感じる冬夜。


(さっき奥様がいればって言ってたよな……そういえば、()()()()()()()()の話は聞いたことがないな)

「難しい顔をされておりますが、何かございましたか?」


 冬夜が左手を顎に当て、俯いて考えを巡らせていると佐々木が話しかけてきた。


「いえ、少し考え事をしていただけです。……佐々木さん、一つお聞きしたいことが……」

「あ、冬夜くんここにいたんだ! ソフィーと美桜ちゃんが外を散歩したいって言っているから一緒に行かない?」


 芹澤の母親について聞こうとした時だった。エレベーターから降りてきたメイが手を振りながら冬夜に声をかける。


「すみません佐々木さん、なんでもないです。手紙、ありがとうございました」

「いえいえお気になさらないでください」


 優しくほほ笑む佐々木に軽く頭を下げるとメイの元へ駆け寄る冬夜。


「今ちょうど話が終わったから、俺も一緒に行くよ」

「ほんと? 良かった! リーゼさんが二人を追いかけてくれたみたいなんだけど、途中でいなくなっちゃって……言乃花さんが二人を部屋まで連れてきてくれたの」

(これは、リーゼと美桜ちゃんが後で怒られるやつだよな……)


 冬夜は二人が正座して言乃花にお説教されている様子を思い浮かべながら、メイに話しかける。


「そういえば言乃花は一緒じゃないのか?」

「リーゼさんを探してきてくれるって。その間に気分転換に美桜ちゃん達と散歩してきたらって」

「なるほどな。でも俺がまだロビーにいるってよくわかったな?」

「言乃花さんが『冬夜くんなら佐々木さんとロビーにいるはずだから』って教えてくれたんだよ」

「……」


 冬夜は背中を冷たい風が吹き抜けていくのを感じ、思わず身震いをする。


「冬夜くん、大丈夫? なんか顔色が悪いよ?」

「大丈夫だ。ちょっと言乃花が怖くなっただけだから……」


 メイが不思議そうに首をかしげていると、エレベーターの扉が開き、元気のよい声が聞こえてくる。


「メイお姉ちゃんここにいたのです!」

「二人でお話していたの?」


 美桜とソフィーが仲よく手をつないで歩いてきた。


「美桜ちゃん、ソフィー、今から冬夜くんも一緒にお庭の散歩に行かない?」

「行くのです! 今度は外の探検をするのです!」

「美桜ちゃん、ゆっくり歩いて回ろうね」


 四人が話していると、佐々木が声をかけてきた。


「皆様、本日は天気も良いですし、庭園の東屋におやつをご用意いたしましょうか?」

「おやつ!? いーっぱい食べるのです!」

「美桜ちゃん、食べ過ぎるとご飯が食べられなくなるよ」

「大丈夫なのです! たくさん動いたからペコペコなのです!」

「それじゃ、さっそく外に行くか。佐々木さん、よろしくお願いします」

「承知いたしました」


 冬夜たちは仲良く話しながら自動扉を出ると庭の方へ歩いていった。四人の様子を目を細めながら見送る佐々木の背後から声をかける人物が。


「佐々木さん、いつもご苦労様っす」

「レイスさん、お気遣いありがとうございます。気配の消され方はさすがですね」

「いやいや、佐々木さんの洞察力には敵いませんよ。さすが()()()()()()()()()()()っす」

「昔の話ですよ。今は引退した身ですから」


 佐々木が少し寂しそうな顔を見せながら語りかける。


「奥様が旅に出ておられるので私がお二人を支えなければなりませんから」

「昔から自由奔放な人っすからね……」


 目を見合わせ、苦笑を浮かべる二人。


「ところでレイスさん、玲士様からご伝言を預かっております。『レイス、俺は冬夜くんの実家には同行できない可能性が高い。()()()()()()()()()()()()()。詳細は追って連絡する』とのことです」


 何かが起こることを予測したような言葉に考え込むレイス。

 芹澤が残した伝言の意図とはいったい……

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