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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第四章 現実世界

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第28話 すれ違う親子と虚空記録層(アカシックレコード)

「皆さん準備はいいっすね? みんなで結界をぶち破るっすよ!」

「いつでもいけるわ! 言乃花は?」

「私は大丈夫。レイス、始めるわよ」


 二人の返事を聞いたレイスは冬夜に視線を送った。


「冬夜さんも準備オッケーっすね?」

「いつでも大丈夫です!」


 三人のすぐ後ろにいる冬夜は体の前に突き出した右手に全神経を集中させる。眼が紅く染まると首から下げたロザリオの輝きも増していく。右腕に添えられた左手にはメイが手渡したお守りが握られていた。


(メイ、俺に力を貸してくれ!)

「リーゼさん、言乃花さん、デカイのをぶちかましますよ! 全てを燃やしつくせ! 断罪の業火(エルキエスド・ゼロ)

「貫きなさい! 凍てつく(アブソリュート)閃光(・フリーズ)

「切り裂いて! 永劫の斬風洞(トゥリアス・ウインド)


 三人の新魔法が結界の張られた引き戸に一斉に突き刺さる。激しい轟音と閃光が廊下中に響き渡り、視界が真っ白に染まった。同時にガラスが砕け散るような音が聞こえるとレイスが叫ぶ。


「冬夜さん、結界が破れました。あとは任せたっすよ!」

「了解した、全員伏せろ!」


 冬夜の声と共に倒れこむように身を伏せる三人。


「中にいるのが誰だか知らないが……いくぞ、陰陽(インシュレット)()一輪花(ブレイク)


 冬夜の右手から放たれたのは()()()()()()()()()()()。一直線に結界の破られた引き戸に向かう。


「冬夜くんの新技?」

「魔法の軌跡に光の花びらが舞っているわ」

「冬夜さんだけの魔力反応じゃない? まさか……」


 三人が見入っている間に漆黒の矢は室内へ吸い込まれていく。次の瞬間、鍛錬場の中から響き渡る轟音と共に引き戸が吹き飛び、おびただしい煙が噴き出してきた。


「冬夜さん、ナイスっす! 二人の救出を最優先で動くっすよ!」


 四人は煙が立ち込める鍛錬場へ飛び込むと入口近くで片膝をつき、肩で息をしている芹澤と心配そうに寄り添う弥乃を発見する。


「冬夜くん、いい攻撃だった。レイス、助かったぞ」

「無事でよかったっすよ」

「見ての通りボロボロだがな」


 駆け付けたレイスと冬夜を見ると安堵の表情を浮かべる芹澤。


「お母様、大丈夫ですか?」

「弥乃さん、お怪我はありませんか?」

「私は大丈夫ですよ、リーゼさん、言乃花」


 疲労困憊ではあったが、怪我もない弥乃の様子にホッと胸をなでおろす二人。安心する間もなく鍛錬場に声が響く。


「見事だ! 防御が間に合わなかったら危なかったな」


 声が聞こえた方向に四人が視線を送ると、煙の中に゙人影が現れる。


「その声……まさか親父なのか?」

「久しぶりだな、冬夜。なかなか良い魔法だったぞ」

「ふざけるな! 今までどこに行っていたんだ!」


 失踪していた父親との対面に抑え込んでいた怒りが爆発する冬夜。


「おいおい、久しぶりの再会だぞ。もう少し嬉しそうにしたらどうだ?」

「何が久しぶりの再会だ! 一発ぶちかましてやらねえと気が済まない!」


 冬夜が魔力を込めようとした時、いきなり強大な力に押しつぶされそうになる。


「こ、この魔力は……イノセント家の時と同じ?」

「感情のコントロールができないとはまだまだ未熟だな。だが先ほどの一撃を褒める代わりに真実の一部を教えてやろう」

「親父、何を言っているんだ……?」


 襲いかかる重圧に抗い片膝をつきながら、戸惑いの表情を浮かべる冬夜。


「いずれお前も全てを知る時が来る、()()()()()()。……そうか、お前が放った魔法は……おっと、少々おしゃべりが過ぎてしまったな。近いうちにまた会うことになるだろう」


 響が左手を体の正面にかざすと足元から徐々に姿が薄れていく。


「まて親父! 箱庭の真実って何のことだ?」


 冬夜の叫びも虚しく、響の姿は陽炎のように消えた。同時に全身を押さえつけていた魔力も消え去る。


「クソ親父め、何がなすことがある、だ」


 肩を震わせ怒りをあらわにする冬夜。全身から魔力が溢れ出しそうになったところでレイスが声をかけた。


「冬夜さん、落ち着くっすよ。今は状況の整理をすることが先決っす」

「そうですね。箱庭……残された時間……手遅れになる前に? 何か重大な見落としをしているかもしれない……」

「芹澤、芹澤! どうしたの? しっかりしなさい!」


 リーゼの声にに驚いた三人が振り返ると抱えられるように仰向けに倒れ、気を失っている芹澤の姿が。


「言乃花、すぐに佐々木さんに連絡を! リーゼさんと冬夜さんは健斗と一布さんを呼んできてください! レイスさんはメイさんたちのところにお願いします。私はここに残って芹澤さんの様子を見ます」


 弥乃からの指示を受けた四人が慌てて廊下を走っていく。姿が見えなくなると小声で話しかけた。


「見事な演技ですね、玲士さん」

「弥乃さんの目は欺けなかったですね。ちょっと無茶をし過ぎました」


 気絶していたはずの芹澤がうっすらと目を開けて答える。


「冬夜さんの使われた魔法ですが、わずかに光魔法の残滓が感じられました」

「やはりですか。仮説の域を出ませんが、響さんが見たものはおそらく虚空記録層(アカシックレコード)……」


 何かを言いかけながら気を失った芹澤。


「玲士さん、ゆっくり休んでください。……アカシックレコード? 一布さん、そこにいますね?」

「はい、師範代理」


 メイたちと一緒にいたはずの一布が音もなく弥乃の後ろに現れる。


「命じます。すぐに芹澤家及びイノセント家に連絡を。言乃花たちに気付かれぬよう連携して調査を開始しなさい」

「御意」


 言い終えると姿を消した一布。静寂が戻った鍛錬場で芹澤の頭を優しく撫でながら呟く弥乃。


「響さん、あなたは何を見てしまったのでしょう? それに、冬夜くんの魔法に付与されていた光魔法の残滓……あれは……」


 芹澤が意識を失う直前に呟いた虚空記録層(アカシックレコード)

 響が去り際に残した言葉の通り、冬夜たちに待ち受けるのは終焉の時なのだろうか。

 箱庭に隠された真実と虚空記録層(アカシックレコード)を巡り、事態は混沌とした様子を見せ始めた。

 二つの世界は終焉へ向かうのか、それとも……


 ―――第四章 完―――

連載開始から約二年、百話も超え第四章を完結することができました!

多くに皆様にに支えていただき、本当にありがとうございます。


第五章「虚空記録層アカシックレコード

物語はいよいよ核心に迫っていきます。

これからもお楽しみいただけるように頑張ります!


今後の予定ですが、この後は恒例の登場人物紹介と閑話を予定しております。

何話になるか未定ですが、ソフィーちゃんのお話と一布、美桜のお話を予定しております。

水面下でキイトさんと箱庭グッズを制作しております。

こちらも近日中に発表できるかと思いますので、楽しみにお待ちいただけたらと思います。


五章「虚空記録層アカシックレコード」編の開幕まで、本編の裏側をお楽しみください!

それでは今後とも「絶望の箱庭~鳥籠の姫君~」をよろしくお願いします!

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