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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第四章 現実世界

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第26話 響の魔法と隠された真実

「とても良いデータが取れましたよ」


 眼鏡の奥で光る瞳を細め、左の口元を吊り上げ笑う芹澤。


「素晴らしい。しかし、あっさりとプログラムの改変を受け入れたのはどうしてかな?」

「ご自身が一番よく分かっていらっしゃるのでは? わざわざ干渉する余地を残しておいたわけですから、()()()()()()()()()()()()()()()()ね」

「すべてはお見通しというわけか……どの時点で俺が干渉したと気が付いたんだ?」

「いつからでしょう? ところでのんびりお話していてよろしいのですか? この場にいるのは俺一人ではないですよ」


 芹澤が言い終えると同時に響の周囲を風でできた無数の刃が取り囲み、背中には魔力を帯びた手が突きつけられる。


「響さんらしくないですね」

「さすがだ、弥乃さん。今の状況は……絶体絶命と言うヤツか」


 視線を左右に動かし、乾いた笑みを浮かべながら小さく息を吐く響。


「怪我をする前にキチンと説明していただけると助かります。友人に手荒な真似はしたくないですから……」

「お気持ちだけ受け取っておこう。残念だが成すべきことがある以上、立ち止まっているわけにはいかないのでな」


 響が目を閉じると、取り囲んでいた無数の刃がガラスが割れるような音をたてて砕け散る。砕けた刃が霧散すると同時に響の体を黒い(もや)のようなものが包み込んでいく。


「弥乃さん、危ない!」


 芹澤が大声で叫ぶと同時に、弥乃を鋼鉄製の壁が取り囲む。次の瞬間、何かがぶつかり合うような金属音が鍛練場に響いた。


「玲士さん、助かりました」

「間に合ってよかった。できるならば穏便に済ませたかったのですが、力づくで聞き出さねばならないようですね!」


 先ほどまでの冷静さから一転し、怒気をはらんだ声で響に問いかける芹澤。


「目的を知りたいのであれば俺を倒して聞き出してみてはどうだ?」

「望むところだ! あなたが何を見てしまったのか、自分の推論が正しいのか確かめさせていただこう!」


 普段の様子とは打って変わり、感情をむき出しにして響を睨みつける芹澤。全身を金色のオーラが纏い、魔力が膨れ上がっていく。弥乃の施した結界がビリビリと揺れ動いた。


「さすが純粋な魔力では学園長にも引けを取らないと言われている玲士くんだ。以前よりもさらに研ぎ澄まされているんじゃないか?」

「闇雲に実験ばかりしているわけではありませんからね。レイス以外に力を開放するのはあなたが初めてだ!」

「そうか、とても光栄なことだな……チッ、油断しすぎたか」


 感心した様子で芹澤を見ていた響が顔をしかめる。背後にはいつの間にか弥乃の姿が。


「私の存在もお忘れにならないでほしいですね」

「見事だ。さすが椿流を極めし者だな」


 弥乃の手刀は背中側からみぞおちへと突き刺さっており、響の口から一筋の血が流れる。すると不意に天を仰ぐように顔を上げ高笑いを始め、鍛錬場に響き渡る。


「実に素晴らしい一撃だ。玲士くんの魔力で気を引き、急所を避けているとはいえ、俺に大きなダメージを与えるとは……お手本のような連携だな」

「たしかに手ごたえはありました。深手を負ったあなたに勝ち目はありません」

「弥乃さん、すぐに後ろに飛ぶんだ!」


 芹澤の声を聞くと即座に飛びのく弥乃。すると先ほどまで立っていた床がミシミシと強大な力に押しつぶされたように陥没していく。


「君たちのことを少し侮っていた。()()()()()()()必要がありそうだな」


 響の身体から紅い輝きが放たれると、その光が弥乃に刺された場所へと集約していく。光が吸い込まれていくにつれ、大きく開いていた傷口がみるみるふさがっていく。


「傷が……ふさがっていくだと?」

「そんな、一瞬で治るなんて……」


 ありえない光景を目撃し、攻撃の手が止まった二人。響は口元に垂れていた血を右手の甲で拭うと、さも当たり前のように話し始める。


「昔から変わらぬ見事な手刀だ。しかし、相手が悪かったな」

「まさか、その光は……」


 芹澤の表情から余裕が消え、一筋の汗が右頬を流れる。


「さて、()()()()()()()はできているか?」


 漆黒のオーラを纏い、芹澤と弥乃を交互に見る響。眼は紅く光り、口元には薄ら笑いを浮かべている。


「冬夜たちに戻ってこられては厄介だ。手短に終わらせてもらおう」


 底知れぬ響の隠された力と何かに気付いた芹澤。

 残された時間が限られる中、絶体絶命の状況を打開できる策は二人に残されているのだろうか。

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