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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第四章 現実世界

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第25話 動き出した影と交差する思惑

 リーゼと冬夜が芹澤の説明に驚き固まっていた時、離れた位置にいたレイスは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「チッ、仮想とはいえ……あと一歩のところまでヤツ(ファースト)を追い詰めたんすけど……」

「あらあら……レイスさん? 殺気が漏れ出していますよ」


 音もなくレイスの背後に現れた弥乃。


「おっと、自分としたことが背後を取られてしまいましたね」

「珍しく冷静さを欠いていますね。それだけトレーニングマシンの成果があったということですね……」

「そうっすね。自分にとってトラウマのシーンで戦えたことは大きな収穫っす」

「期待していますよ。皆さんかなりの魔力を消費しているので、午後からは軽めのメニューにしておきますね」


 レイスの横を通り過ぎた弥乃は他のメンバーに声をかける。


「玲士さん、お話の途中にすみません。そろそろ休憩にしましょう。昼食の用意もできたと連絡を受けております。ゆっくり休んで午後の鍛錬に備えませんか?」

「お昼ご飯! もうお腹がペコペコなのです!」


 お昼ご飯という言葉を聞いて美桜が勢い良く立ち上がる。そして、全員の視線が集中したことに気が付き顔がゆでだこの様に真っ赤になる。


「美桜、あなたはほんとに……」


 言乃花が額に右手を当て、大きく息を吐く。


「美桜ちゃんらしくていいじゃない。私たちもかなり魔力を使ったし、お昼をいただきましょう」


 リーゼが話すと真っ赤になっていた美桜の顔に笑顔が戻る。


「はいです! 私が皆様をご案内するのです! ソフィーちゃん一緒に行くのです!」

「はい、一緒に行きましょう」


 隣に座っていたソフィーの手を取ると鍛錬場の出口に向かい勢いよく走り出す美桜。


「ちょっと! ソフィーちゃんが引きずられてるじゃないの!」

「みなさん、はやくです! おいていっちゃいますよ!」


 入口の前で大きく手を振る美桜とニコニコとしているソフィー。


「美桜ちゃんがいきなり走り出したからビックリしたよ。みんな迷子になったら大変だからゆっくり歩いていこうね」

「はいです! みんなで一緒に行くのです!」


 笑顔で話す二人を見ながら冬夜とメイはこんな会話をしていた。


「なんか前にもこんな光景を見たような気がするんだけど?」

「ソフィーにお友達ができるのはうれしいよね」

「まあな。しかし、ソフィーの友達って似た者同士というか……」

「ねえねえ、はやくご飯を食べに行かない? 私もお腹ペコペコだよ」


 メイが冬夜の右手をグイグイと引っ張ると二人の視線が重なり、お互い顔が真っ赤になる。二人の様子を健斗がニヤニヤしながら、微笑ましそうに弥乃が後ろから見つめていた。


「二人を見ていると学園時代のことを思い出すな」

「ええ、響くんにそっくりですね。……先に昼食へ向かっていただいてもかまいませんか?」

「何かあったのか?」

「大したことではありませんよ。玲士さんが昼食前にトレーニングマシンの調整を行いたいと言っていましたので、少し後片付けをしておこうかと思いまして」

「ほどほどにしておけよ、料理が冷めてしまうぞ」

「大丈夫ですよ。終わり次第すぐ向かいますから」


 話し終えると健斗はレイスに声をかけ、冬夜たちに続き鍛錬場から出ていった。笑顔で健斗を見送ると、引き戸が閉まる音と同時に鍛錬場に静寂が訪れる。するとおもむろに右手を上げた弥乃が魔力で部屋全体を包み込んだ。


「玲士さん、打ち合わせ通りに結界を張り終えましたよ」

「ありがとうございます。準備も整ったことですし、わざわざ干渉してきた理由を聞かせていただきましょうか、()()()?」


 手に持っていたタブレットを床に置き、左手を右肩のあたりに構えると一気に薙ぎ払うように振り抜く芹澤。すると鉱物でできた槍が無数に出現した。激しくぶつかり合う金属音が響いたかと思うと、鍛練場の中央付近が丸くくりぬかれたように砕け散っていく。


「さすがだな、玲士くん」


 鍛練場に声が響くと不自然にくりぬかれた空間が歪み、人影が現れる。


「お褒めの言葉ありがとうございます。トレーニングマシンのプログラムに干渉できる人はごく一部しかいません、開発に参加していた人間でもね」

「俺としたことが迂闊だったな。しかし、干渉したことによって有益なデータは取れたのだろう?」


 響の問いかけに不敵な笑みを浮かべる芹澤。

 トレーニングマシンへ干渉されることは想定済みだったのか、それとも……

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