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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第四章 現実世界

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第24話 データに現れた不穏な影

 二人が放った全力の一撃が激突し、激しい閃光とともに冬夜は思わず目を閉じる。同時にイヤホンから弥乃の声が響く。


「そこまで!」

「あれ? フェイは?」


 ゆっくり目を開けると森もフェイの姿も消えており、見えるのはマシンに入ったときと同じ暗闇だった。


「冬夜さん、お疲れさまでした。トレーニングマシンでの鍛錬は終了です。ゴーグルを外して扉を開けるまでしばらく待ってくださいね」

「わかりました」

(さっき対峙したフェイは()()()()()()()のか?妖力も殺気も全てが本物だったぞ)


 先ほどの戦闘を思い返しながら考え込む冬夜。するとイヤホンから弥乃の声が聞こえてきた。


「お待たせしました。扉を開けるのでゆっくりと出てきてください」


 扉が静かに開くと外の光がトレーニングマシンの内部に差し込む。


「こんな感じになっていたのか。見た目よりもだいぶ広い空間なんだな」


 冬夜は目の前にある壁に触れようと右手を伸ばしてみるが、空を掴むだけで触れることはできない。


(どうなってるんだ? これなら派手に暴れても問題ないはずだけど……)


 そんなことを考えていると扉の外から心配そうなリーゼの声が響く。


「冬夜くん、大丈夫? まさか倒れてないわよね?」

「ああ、大丈夫だ。すぐに出るから待っていてくれ」


 小さく息を吐くとゆっくり扉から外に出る。途端に差し込む光の強さに目を開けていられなくなり、思わず声を上げた。


「うわ、眩しい!」


 真っ暗なトレーニングマシンの中にいたせいで、鍛錬場の明るさに目が追い付かない。再び目をゆっくりと開けていくとホッとした顔をしているリーゼの顔が見えた。近くに弥乃とメイも立っている。後ろには手をつないで笑顔で話しているソフィーと美桜、その隣には疲れ果てて座り込んでいる一布の姿があった。


「冬夜くん、大丈夫だった?」


 心配そうな顔をしたメイが駆け寄ってくる。


「大丈夫だよ。無事に終えることができたみたいだ」

「よかった。弥乃さんから予定の時間を超えているって聞いたから心配したんだよ」

「……え、そうなのか?」


 メイから聞かされた言葉に驚きを隠せない冬夜に対し、弥乃が説明を始める。


「お疲れさまでした。メイさんが言われたように終了予定の時間を大幅に超えていましたよ」

「どういうことですか?」

「その事について私から説明しよう」


 タブレットを片手に芹澤が冬夜のほうへ歩いてきた。


「トレーニングマシンのデータはタブレットで随時記録している。リーゼくん、言乃花くんは予定通りのプログラムに沿ったデータだが、レイスは感情の乱れに課題がある」

「そうっすか。ちゃんとコントロールしていたつもりなんですけどね」

「後ほどゆっくり説明してやろう。気になったのは()()()()()()()()()。予想外のことが起こったので少々調整させてもらったぞ」

「何があったんですか?」

「データを見せたほうがいいだろう」


 芹澤がタブレットを操作すると、鍛錬場の壁に数値と線グラフが映し出される。


「今映し出したのはトレーニングマシンから得たデータであり、感情、魔力、体力などを数値化したものだ。分かりやすいようにリーゼくんのデータと比較してみよう」


 芹澤がタブレットを操作すると画面が切り替わり、二つの線グラフが表示される。


「左側がリーゼくん、右側が冬夜くんのデータだ」

「左のグラフは基準みたいな点線に沿って推移しているけど、右は結構乱れているわね。最初は赤い線が大きく上に外れているけど、徐々に点線に沿うようになっているわ。でも、青い線は途中から激しく上下していない?」

「その通りだ。赤い線は感情、青い線は魔力を現している。見てわかるようにある時点を境に魔力が急激に増大している」

「もしかして……」

「どうやら当たりがありそうだな。冬夜くんが覚醒したことを見計らうように()()()()()()()()があったようだ」

「干渉? そんなことができるの?」


 芹澤の衝撃的な発言に驚きを隠せない冬夜、リーゼ、言乃花、健斗。そして、いつもの笑顔の仮面は剥がれ、冷たい光を放つ瞳をスッと細め考え込むレイス。


「やはり仕掛けてきましたね……」


 芹澤の説明を聞いた弥乃は、天井を見上げると誰にも聞こえないほどの声で呟いた。

 誰が冬夜のトレーニングマシンに干渉してきたのか。

 鍛錬場に不穏な影が少しずつ迫ってきていた。

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