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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第四章 現実世界

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第22話 いたずらの代償と新たな試練

「ふむ、ようやく仕上がったな」


 険しい表情でタブレットを見ていた芹澤が顔をあげる。すると機械の扉が開き、ゴーグルとイヤホンを付けたレイスが出てきた。


「この機体が最後っすよね?」

「そうだ。ご苦労だったな、レイス」

「いい準備運動になったっすよ。でも、()()()()()()()おかしくなかったっすか? なんというか精神攻撃の側面が強いというか」


 ゴーグルとイヤホンを外して芹澤に渡すと腕を組んで考えこむレイス。


「レイスの指摘は間違っていない。パラメーターを見ると初期値から大きく変わっていたしな。開発に゙携わった者としては想定を超えるデータを回収できたのは大きな収穫だ!」

「それは良かったっすね。おや? 皆さんも到着したみたいっすよ」


 冬夜たちの姿を見つけたレイスがいつもの笑顔に戻る。


「玲士さん、レイスさん、お疲れ様です。機械の調整も無事に終わったみたいですね」


 弥乃が一歩前に出ると二人に労いの言葉をかける。


「いい準備運動になりましたし、これからの始まる鍛錬が楽しみっすね」

「開発に携わった者として想定を超えるデータを回収できてすごくありがたいですよ」


 満足げな二人の様子に安堵の表情をうかべる弥乃が、芹澤に対し疑問をぶつける。


「玲士さん。想定を超えるデータと言っておられましたが、最後の機体だけでしたか?」

「ええ、こちらの機体だけ、()()がデタラメにいじった形跡がありました。あと、見覚えのないゲームもいくつかインストールされていましたね」


 芹澤が軽く息を吐き、ちらりと美桜へ視線を向ける。すると、露骨に顔を背けて口笛を吹く真似をする美桜。


「私は何もしてないです。ゲームなんてやってないのです」

「美桜、何か知っているわよね?」


 音もなく美桜の隣に現れた言乃花が迫る。


「な、何のことかわからないです。美桜はタブレットなんて知らないのです。横についてるボタンを押すと画面が光ったり、画面にダイヤルが表示されることなんて知らないのです。触ったりなんかしてないです」

「よくわかったわ。()()()()()()使()()()なんて聞いてないけど、どうしてスラスラ答えられるのかしら?」

「……」


 滝のような冷や汗が顔中を流れ、どんどん顔が蒼くなっていく美桜。


「ちょっと話し合いが必要ですね、お母さま?」

「そうですね。皆様には申し訳ありませんが、少しお時間をいただきますね」


 仁王立ちする弥乃と言乃花の迫力に無言で正座をする美桜。室内の空気が凍りつき、当事者ではない冬夜たちも思わず正座をしていた。数十分後、健斗が到着するまで話し合いという名の説教タイムは続いた。



「これより鍛錬を開始する。皆、気を引き締めて取り掛かるように」

「「「はい、よろしくお願いします」」」

「良い返事だ。一グループは奥、二グループは中央へ移動するように。三グループはこの場所で待っていてくれ」


 健斗の指示のもと各グループに分かれる冬夜たち。


「いよいよ始まるな。メイも怪我をしないように気を付けるんだぞ」

「うん、冬夜くんこそ無茶をし過ぎないでね」

「わかってるよ。お互い頑張ろうな」


 笑顔でハイタッチをして鍛錬場所へ向かう冬夜とメイ。


「冬夜さん、リーゼさん。こちらのゴーグルとイヤホンを装着したら、トレーニングマシンに入ってください。中は見た目より広いので、思いっきり身体を動かしても大丈夫ですよ。イヤホンを通じて私が指示を出すので従ってくださいね」

「すみません、一つ質問をよろしいでしょうか?」


 リーゼが右手を上げて質問する。


「動いても大丈夫とおっしゃいましたが、具体的にはどのようなことをするのでしょうか?」

「いい質問ですね。データを基に作成した仮想の敵と戦ってもらいます。実戦を想定してプログラムされていますので、気を抜くと痛い目にあいますよ」

「わかりました」


 弥乃の言葉に改めて気を引き締めなおす二人。ゴーグルとイヤホンを装着すると扉を開けてトレーニングマシンの中へ入る。扉が閉まる音がするとイヤホンから弥乃の声が聞こえる。


「準備はよろしいですか? これより鍛錬を開始します」


 真っ暗だった空間が弥乃の声と同時に一変した。冬夜の視界に飛び込んできたのは規則正しく生い茂る木々とうっすらと漂う霧。


「まるで本当に森の中にいるようだな」


 試しに木に触れてみるとざらざらとして少し湿った感触が伝わってくる。辺りを見回そうとした時、目の前にあった木々が轟音と共に倒れ、土煙が辺り一帯を包み込んだ。


「おや? 覚えのある気配がしたと思えば、あなたでしたか」

「この声は……フェイ!」


 煙の奥から現れたのは緑色のローブを被った三大妖精の『フェイ』


「なんてすばらしい日でしょう。邪魔者もおらず、一人とは……今までの恨みを晴らすときだ!」

「望むところだ! 今日こそ決着をつけてやる」


 戦いの火蓋は切って落とされた。

 冬夜は因縁の相手であるフェイに対し、勝機を見つけることができるのだろうか?

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