4. 冒険の旅が始まる?みたいな感じ
旅は順調だ。ゼルラドの街から首都ベバルークを目指す。カルロッカ国の首都で、人口約三十万人を誇る大都市だ。ちなみにヒ・イズル国は一万強の人口だ。毎日右肩上がりの人口だが、まだまだ小国である。それはさておき、カルロッカ国の首都に着いた。
「わあ、人が多いわね。リンドガルディア程じゃ無いけど、結構な大国よね」
大きな国の首都だけあって活気に溢れている。西の大陸はこの国と同じ規模の国が多いらしい。ヒ・イズル国も城の周りだけ見れば立派だが、王都 → 畑 → → エルフの村ってな感じで大都市が、いきなり終わっている状態だ。王都以外はドワーフの工房しかない、ヘンテコな国である。
カルロッカ国はそれこそ標準的な国で、王都を中心に他国を目指す為の中継地である、そんな場所が幾つかある。
「ユキツネ様美味しそうですぅ~」
エンジュは早速屋台に目移りしている。移動中も口を動かして食べていたが、何時もの食事より分量が少ない。
「エンジュ、少しは節制しないと。旅は何があるか分からないもの」
「ううう…… お城は食べ放題だったから、前よりも食べる量が増えちゃって」
「エンジュの腹の何処に入ってんだ?あと、俺に様を付けないで呼んでくれ」
「だってユキツネ様は私の主です。本当は陛下って呼ぶように言われてますが」
現在俺の城でメイドをしているから、本当は敬われるべきだろうけれども。
「旅の間は仲間だ。此方の大陸じゃ身分も、あっても無いような物だしな」
「そうよ、ユキツネなんてユキツネで良いのよ?」
「エレノアは少しは敬えよ」
「ふむ、ユキツネは呼び捨てで十分なのだ。弱っちいし」
カミルはペットのくせに生意気だ。だが本性はドラゴンだ。その気になれば俺はプチっと殺られてしまうだろう。そしてこの会話に、一切参加してこないテオも地上で最強の生物だ。
そんな強い生物?を従えて俺達はダンジョンに挑む。「竜の涙」はダンジョンの奥底で見つかる、かもしれないとの噂だ。普通の人ならば難しい最深部も、テオとカミルがいれば平気だろう。
「竜の涙」はその名の通り竜が住んでいる、山の麓のダンジョンにあるとの言い伝えがある。これから目指す北へのルートは、竜がいる山に行く。カミル曰く山の竜はドラゴンではなく、地竜と同じような生物で、翼が付いているだけだとか。
カミルみたく人型になったりせず、知能も其れほど高くない。霊獣であるテオがあまり知られていないように、ドラゴンと空を飛ぶ竜 ━━━━ 飛竜と呼ぶべきか。飛竜と区別がつかないのだ。なにせドラゴンはそれこそ滅多に人前に現れないし、出会ったとしてもカミルみたく変化していれば、見分ける事は出来ない。
首都ベバルークからダンジョン行きの馬車が、定期的にあるので一先ずダンジョンに行ってみようって話になった。このメンバーで挑む、初めてのダンジョンだ。ゲームと違って回復なんかしないし、バランスの良いチームでもない。
「心配はいらないぞユキツネ。この私に勝てる生物が穴蔵になどいるものか」
カミルの強気な発言だが、カミルの活躍を見ていないのでいまいち信用出来ない。だがテオがついている。明日は軽くダンジョンに行く準備をして、明後日の早朝に馬車に乗り込む。という訳で一旦宿を取って就寝。
翌日━━━━━━ ダンジョンに挑む準備と軽い観光だ。キャッキャとはしゃぐ女子二人の後をついてまわる。こうして見るとエレノアも可愛い女子みたく見える。普段は色気の欠片も無いが。
相変わらずの食い気一辺倒のエンジュ。エレノアは雑貨屋を見つけて入って行く。カミルも加わってはしゃいでいた。テオは店の外で待機している。エレノアはブレスレットを買おうか悩んでいる。
「ユキツネ、これを買って」
カミルは気になった物を片っ端から手にとっていた。
「金は有るけど旅の邪魔になるぞ。一個か二個にしておけ」
カミルはキラキラ光る物が好きらしい。そういえばカラスとかもそうだったな。動物だから似てるのかな。
「ユキツネお主、今変な事を考えていなかったか」
「そ、そんな事無いよ」
やべえ、野生のカンで俺の思考が読まれたか。この日は一日中、女子の買い物に付き合い宿で夕食を食べた。エンジュの食べっぷりに、宿中の注目が集まった。
翌朝は予定通り馬車に乗り込んだ。ダンジョンへの乗り合い馬車は賑わっている。
「わあ、結構人がいるわ」
エレノアの言う通りダンジョンに着くと人で賑わっている。屋台も出ていてダンジョンに入るのに必要な物や、食べ物の屋台もある。ダンジョンは人数制限があるので、入り口の受付で番号を配って、順番に入れる。幸いまだ朝早いので直ぐに入れた。
ゲームと違ってうねうねした道のりは、初心者は迷子になる。だから冒険者ギルドの職員があちこちにいて、迷った人をサポートしてくれる。ギルドの職員は腕章と角の付いた兜を被っている。この国の観光の要だけあって、しっかりしているな。
職員がうろうろしているのは浅い場所だけだ。上級者は滅多に迷わない。俺達は浅い場所はスルーして奥へと進んでいった。
「カミルは魔物と出会っても、火を吐くなよ。酸欠になるからな」
「サンケツ?」
「空気が無くなるんだ。死んじゃうだろ」
「ダンジョンは普通の洞窟と違うぞ。中で火を吹いている場所もある」
まじか。地球の常識が通じないのか。考えればここにいる霊獣やらドラゴンは、常識の外の生き物だった。ダンジョンってのも不思議な場所だしな。蟻の巣穴みたいなダンジョンを降りて行く。
「あれをみて。トカゲが一杯いるわ」
エレノアの言葉に反応し横穴を見ると、トカゲがわさわさしている。一・五メートル程のが何匹か見える。大きな獲物には襲いかからないとの事で、スルーして通りすぎた。すると背後から少年の声が聞こえる。
「やったあ、穴ドラゴン倒したぜ」
「バカねえ、お金に成らない獲物を狩るんじゃ無いわよ」
「へっへー煩い女だな。幼なじみのよしみで連れてきてやったのに」
「馬鹿言わないでよ。私があんたのおじさんに頼まれたの。息子の面倒見てくれって」
「お前らいい加減に………… 」
四人グループの少年達は何時のまにやら、シャーシャー唸るトカゲに囲まれていた。ヤバくないか?




