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71. 王様の休息

 

 海辺の領地の件が一旦落ち着いたので、俺は相変わらず自宅でごろごろしていた。以前は休日ならば昼過ぎまで寝て、あっという間に一日が終わり仕事に戻るという、怠惰な生活をしていた。

 だが異世界の朝は早い。大抵は日の出と共に活動するので五時頃には街は活気づく。


 あまり遅いと朝食を食べ損ねるし、夜更かししても見るものがない。昔よりは健全な生活だが、こちらの基準よりはのんびり過ごしている。

 宰相であるカイラスは今や多くの部下を抱え、忙しなく仕事をこなす。そんな中、色々な書類を抱えて俺の元にやって来た。


「そろそろどうでしょう」


 食堂から出たところで彼の部下に捕まり、政務室へと連れていかれた。


「どうでしょう、とは?」


 ざっと取り出した書類の中には女性の姿絵が書かれていた。モノクロからコマ送りで動く仕掛けまであって様々な女性の姿。


「陛下は人族でいらっしゃいます。我々よりも限られた寿命である身。そろそろ御身を固めても宜しいのでは」


 身を固める━━━━━ ミヲカタメル。セメントじゃあるまいしっていや、それってあれだな。


「そろそろ後継ぎの事も視野に入れるべきかと」


 この書類は、お見合い写真みたいなものか。国によっては凝った魔術の道具で描かれているが。


「えーっと。俺は恋愛結婚が良いなっと」


「恐れながら陛下。それほどのご身分でありながら、それはむずかしいかと。この中の数人とお会いして、恋愛をすれば宜しいかと存じます」


 お見合いなんて考えた事もないよ。だってまだろくに交際もしたこと無いのにさ。


「国王である御身なれば、複数人選ばれるのも有りかと」


 おっと意外な提案来たー!俺はそんなに器用じゃないから、一人でも十分手に余ると思うよ。ハーレムなんて実際は大変だと思うんだ。俺んちは父が早くに他界して、母と姉と暮らしていた。女二人でも肩身の狭さは感じていたのに、複数居るなんてとんでもない。


「俺は自分の家族を王族にする気はないよ。次の王様は投票とかで皆で選ぶべきだ」


「なんと………… 王を退くお考えか」


「この国は出来るだけ発展させるが、王様ってしんどいと思うんだ。元々向いてないし、見合った人間がやるべきだ」


 本当は王族なんて撤廃して、大統領とかにした方が良いと思うけど、他所の国とやりあうには身分が必要だ。大統領みたくころころ代わる人間じゃ、他の国と交渉出来ない。貴族や王族を廃するにはこの世界には早いだろう。


 そんな訳でカイラスの持ってきた見合い話は、お茶を濁す事にした。お姫様と結婚とか大変そうだ。俺には庶民が似合っている。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




 数日たったある日、エレノアが連れて来たエルフの子供達に、俺の手料理を振る舞う事にした。何だかんだで十二名。新旧入り交じっている。今回は和食がメインだ。昆布がとれたから美味しい出汁を味わって貰おう。


 先ずは炊き込みご飯。ドワーフに作ってもらった抜き型を用意して、人参の調理を頼む。紅葉とハートと星の形にするのは、子供には面白い作業だ。皆やりたがった。

 茹でた枝豆も出してもらう。これも枝豆が飛び出るのが面白いらしい。しめじと鶏肉を入れて一晩昆布を漬け込んだ水を入れて、醤油と酒、砂糖を入れて後は釜で炊くだけだ。


 そして大根。これを米の磨ぎ汁で軽く茹でる。茹だったら水を捨てて味付けをするのだが。


「ねえユキツネ。その茶色い物体は何かしら」


 エレノアが恐る恐る聞いてくる。大根と一緒に煮込む謎の物体。その正体は。


「これはイカと大根の煮物だ」


 和食の定番だ。イカの旨みが大根に染み込んだ美味しいやつ。


「ユキツネ。イカってクラーケンよね。干して食べるって言ってた」


 そう持ち帰った巨大なイカは様々な食事で楽しんだが、なにせ大きな物だった。小さく切って干物にして保存していた。おやつとしても楽しんでいたが、今回は皆に食べてもらう為に煮物にした。


「とっても美味しいぞ。まあ食べれば分かる」


「うう…… 海ってゲテモノが多いわよね。確かに今までのは美味しかったけど」


 更に昆布出汁を黄色い液体に注ぎ込み混ぜた物を、具材を入れた陶器の器に注ぎ込む。それをタオルを入れて水を注いだ鍋に並べて蒸していく。茶碗蒸しだ。


 焼き魚も並べれば料理が全部完成した。


「いい匂いがしますぅ~」


 エンジュがやって来た。エレノアが招いたのだ。常に腹ペコなエンジュはよだれを垂らす勢いだ。全員着席したところで実食だ。


「いただきます」


「いただきまーす!」


 昆布の出汁の効いたご飯と味噌汁。魚も旨い。イカの染み込んだ大根。日本人で良かった。


「この茶碗蒸しって美味しい。卵がこんなになるなんて」


 ふんわりとした茶碗蒸しも大好評だ。子供は好きな味だろう。エンジュはおかわり何杯目だよ。そんなに一杯作って無いから後で食堂に行くのだろう。頃合いを見てデザートを用意する。


「今日はデザートもあるぞ。好きなのを取れよ」


 新鮮な果実を使った簡単なデザートを用意した。


「王様~。これはなに?プルプルしてる」


「フルーツを使ったやつだ。まあ食べてみろ」


 イチゴに桃、ミカンやブドウ。カラフルな半透明の物が器に入っている。


 スプーンで掬えばプルンと揺れる。


「ユキツネまさか、スライムまで食べるのかしら?!」


「アホか。これはゼリーって言う物だ。海で拾った天草を使ったんだよ」


 天草を何度も洗って乾かした物をミキサーで砕いた。液体に混ぜて冷やせばゼリーになる。ゼリーは本来動物性の油で作るが、臭みのない天草を使った。プルプル食感のゼリーは子供達がよろこんだ。


 久々に賑やかで楽しい食事となった。







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