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64. 外食もいいけどカレーもね

 

 俺とテオ、ドラゴンのカミルはエレノア達と別れた後、城を見て回る。カミルを案内してやった。そうしてこの件は報告せねばなるまい。気が重いな。


 兵士に声を掛け宰相であるカイラスの元へと向かう。俺は自由気ままな王様だが、大事なことは直に報告すべきだろう。

 部屋の扉を叩き政務室に入る。


「陛下、お帰りなさいませ。陛下に任された城は恙無く運営されております」


 真面目なエルフだ。政治的には駄目な王様の代わりに城の全てを仕切っている。有能な右腕なのだ。


「ところで陛下、そちらの女性は」


 そう来るよね、仕事中に女の子連れてきて何の話だってーの。


「うん、一応紹介しておこうと思ってね。これはカミルまあなんだ、その」


「我が名はカミル。崇高なドラゴンの一族だが、今回特別にユキツネのペットになってやった。後にも先にもない特例だぞ」


「ドラゴン、ですか?」


 流石にいつも俺を崇めているカイラスでさえ、疑わしい事案のようだ。まあ珍しいペットだろうね。人間に媚びない生き物みたいだし。


『ガオーッ!』


 女の子のままでドラゴンの声を出した。部屋中に響く声だ。


「こんな狭い部屋で大きな声を出すなよ。びっくりするだろ」


「陛下 ………… ユキツネ殿、私は陛下の裁量をまだまだ見誤っていたようです。ドラゴンを従える者は伝承でもほぼ確定出来ませんでした。だが、陛下は生きた伝説となるのですね」


 ああ、なんだかキラキラした目で俺を見ている。カイラスは現在自分の見解を元に作家にヒ・イズル国の物語を書かせているんだと。まあ歴史を後世に残すのは大切な仕事だろう。だが、盛り沢山な案件が多過ぎて、後世で信じて貰えないんじゃ無いだろうか。俺なら信じない。


 その後もメイドに絡まれたりしつつ、カミルに城を見せて回った。そうして俺の家の下の階にカミルの部屋を用意することにした。壁を作り替え両サイドに開くようにすれば、そのまま部屋から飛んでいけるし、屋上にもすぐこれる。

 後で改装したらメイドに頼んで可愛い部屋にしてもらおう。正直女の子の部屋を作るセンスは俺にはない。


「広いけど一緒に寝ないのか?」


「ペットにも自立は必要だ。家で飼ってた犬も外で寝てたぞ」


 外と言うか本当は玄関だが、些細な事だ。猫は半分野良だったし。


「後でメイドさんに可愛くしてもらうから、その時にカーテンとか寝具を好きなのを選べ」


 カミルにはいまいちピンと来ないみたいだった。今まで洞窟とかで寝ていたみたいで、いきなりカーテンとか聞かれてもしっくり来ないみたいだ。


「カミルはなんで山に戻らないんだ?山で育ったんだろう」


「うぅ、それは ………… 色々あるんだ」


「ユキツネ、ソイツはまだ弱い。あの山はドラゴンが多いから、縄張り争いが激しいんだ」


 なんと驚きの理由である。確かに遠目で見たドラゴンは二十メートル以上はある。カミルは俺より大きい程度だから勝てないんだな。


「あの様な野蛮な輩と一緒にするな。人間は全部ドラゴンと呼んでいるが、山に住むのは殆ど人語を介さぬ。私のように喋り、変化する生き物ではない」


「違うのか。カミルは綺麗な色をしてるもんな」


 カミルはテオに近い種類のようだ。地竜も大きいトカゲだし根本的に違う存在みたいだ。縄張り争いに負けて巣穴を追い出された所をテオが捕獲したらしい。

 まあ城は空き部屋ばっかりだから丁度いいか。


「久々に帰って来たから、カレーが食べたいな。今日はカレーを作るか」


「カレー?」


「カレーはスパイスと米を使うから、食堂では出していないんだ。とっても美味しいぞ」


 エルフ村ではスパイスを乾燥したりして、パンでカレーを食べるが、食堂でスパイスまで作っていられない。だからカレーが食べたい時は自分で作る。カレーライスじゃないとね。

 エルフ村特製のガラムマサラはエレノアの店で売っているが、商人が時々貴族用に買っていく。一般人では食材に其ほどお金をかけないから。


 多めに作って冷凍しておこう。水分の少ないキーマカレーにしようかな。一階の部屋で作る。家の台所は狭いからだ。タッパーも用意しておくぞ。


 材料はなんでもいいが、玉ねぎ人参、トマトは外せない。セロリとナスも入れ、細かく刻む。更に重要なのが合挽き肉。手で刻むのは大変だから、ドワーフにミンサーを作ってもらったんだ。

 此方では挽肉は無いので。


 だが挽肉を作るには腕力がいる。しかし俺には強い味方がいるんだ。テオに頼めば謎の肉が次々にミンチになる。カミルは肉は歯ごたえが命だと言うが、これはカレーである。


 大きな鍋に油を引きニンニク、しょうがを入れ玉ねぎを炒める。しんなりしたら挽肉を入れる。テオが張り切って作ったので何故か山盛りだな。まあいい、どうせ冷凍するから全部炒めるか。残りの野菜も入れて炒める。塩胡椒してカレー粉を加える。


 いい感じになってきたら更にトマトを追加し、煮込む。部屋中にいい臭いが充満しているぞ。


 既に土鍋で米も用意してある。まだ夕食には早いから後で、って部屋の扉が開いていて、兵士やメイドがちらほら覗いている。


「お前たち何をしているんだ」


「あら、嫌ですわ陛下。此方からえもいわれぬ香りがするので、ついね」


「ああ、なんだか腹の底を刺激するいい香りだ」


「お腹空いた」


 メイド、兵士、カミルが順に呟く。カレーは臭いがするから人が集まって来たのか。カミルは待ちきれなさそうなので、皿に少しだけ盛ってやり、食堂でパンを貰って食べる用に促す。それを見ていたメイドと兵士のお腹が鳴り出す。


「食べたいなら食堂からパンを ………… 」


 それを聞いたメイドの一人が私、取ってきますと勢い良くかけていった。その場にいたメイド五人、兵士四人は部屋でソワソワしていた。籠にパンを入れてメイドが戻ってきたので、丸いパンにカレーを挟んでやる。


「ウマー!ナニこれ、食堂に無いわよね」


「この香り、癖になるな」


 メイドと兵士がモグモグし始めた。そこへカミルが帰って来た。食堂のおばちゃんを伴って。


「陛下、何食べてるんです?なんか食堂に香ばしい香りがするんで見に来ましたよ」


 カミルがカレーを持っていったことで、食堂にカレーの香りが漂ってしまったようだ。メイドと兵士が食べているパンを凝視する。これ以上カレーが減ってはたまらないので、ミンサーを貸して簡単に作り方を説明する。カレー粉もつけてやる。

 食堂も今ではそこそこの人数がいるので賄いは自分達で作って欲しい。


 俺の夕飯が無くならないように、部屋に鍵をかけて出よう。テオもカレーを挟んだパンをたべてるし。しかしメイドと兵士はこれで良いのだろうか。


 後で聞いたらやっぱりメイドを管轄する三人のエルフにこってり叱られたらしい。兵士も今は立派な兵士長がいて、怒られたみたいだ。普通ないよね、王様のご飯を食べる部下。



 俺もカイラスに怒られたよ。もっと王様らしく振る舞って下さいってさ。




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