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63. ヒ・イズルの住人

 

 俺は癒しを求めていた。ヒ・イズル国は発展し、とっても国民が増えた。王様として忙しくなったしあんまり気楽に出歩けなくなってきた。旅に出て気分転換したけど現実は厳しい。


 だからモフっとしたペットが欲しかったんだ。だがテオはモフっとしてないペットを拾ってきた。ドラゴンだってさ、はっはっは。


「私の名はカミル、正式な名は教えないぞ。特別に名前を呼ばせてやる人間よ」


「俺はユキツネだ。一応この国の王様だ」


「王様か、ドラゴンの飼い主はそれ位でないと格好がつかんな。良いだろうユキツネ」


 これはこれで可愛いが求めていたものと大分違う。第一モフモフが良いって知っているだろうテオよ。もしかして、わざと?


 夕方になりカミルを食堂へと招いた。メイドに絡まれる。こんな子供を何処から連れてきたのかと。カミルが私はユキツネのペットだと言うと複雑な表情を見せた。


 食堂では何種類かのメニューがあって好きなのを選べる。カミルが困った表情で選べないと訴えるので、おばちゃんに少しずつ色んなのを取り分けてもらった。

 唐揚げ、パスタにシチューとしょうが焼き。盛りだくさんだ。


 カミルは一口食べては目を輝かせる。慌てず騒がず味わって食べていた。エンジュにもこれくらい落ち着いて食べて欲しいものだ。黙々と食べるテオと俺。カミルは満足そうだ。


「他の人間の国でも食べたが、ここのは一段と美味しいの。気に入ったぞユキツネ」


「そりゃあどうも。この国の自慢の料理だからな」


 しかし食事に釣られてペットになるドラゴンってどうだろう。普通の生物の中では最強らしいが、プライドは無いのか。子供だからかな。

 屋上の家に帰るとテオとカミルはもめた。屋上の庭はテオの縄張りらしい。


「お前は外で寝ろ。朝に飛んでこい」


「何故だ。ペットは可愛がられるって、貴族が言っていたぞ。飼い主と寝食を共にするのだと」


「チッ!」


 テオが忌々しそうに睨む。自分で連れてきたんだから責任持って欲しいよな。だがカミルがこっちを見た。


「そうだ、家で寝れば良いのか。ユキツネと一緒に寝る」


「ばっ、駄目だ!世間的にも俺が変態だと思われる」


「なんでよ。ペットにしたんだから責任とってよ」


 ペットにしたのは絶対テオの責任だと思うんだ。俺が欲しいのはモフモフであって、ロリコン疑惑を持たれる真似はしたくない。


「ペット失格だな。ドラゴンは駄目だったか」


 ペットなのに首を言い渡されるカミル。テオも連れて来といてそんな言いぐさは無いだろう。それにいつの間に俺の庭がテオの縄張りになったんだ。


「とにかく女の子と一緒に寝てるなんて思われたくない」


「それは見た目?だったら」


 カミルはドラゴンに変化した。俺より少しデカい姿で縦長の瞳が俺を見つめる。


『ガオー』


 顔だけ見るとワニっぽいな。爬虫類はいまいちペット感が少ない。大きいし食べられそうだ。


「テオの方が可愛いな」


 テオが獣に変化し俺の前に来る。これこれ、求めていたのはこの柔らかい手触りだよ。フッとテオは勝ち誇ったようにカミルを見た。


『ソイツの何処が良いんだ。ドラゴン、可愛いでしょ』


「ドラゴンは毛がない。ペットにモフモフは必要だ」


 あ、カミルが落ち込んで丸まった。少し可愛いと思ってしまった。仕方ないので居間で寝てもらう。居間と言っても隣の部屋だけど。山にいたのだから山で寝た方が良いのでは。


『あるよ毛、たてがみあるもん』


 背中に一筋毛が生えているが俺の考えているモフモフではない。爬虫類なのが問題なのだ。


 翌日は食堂に行くとエレノアとエンジュがいた。まあ朝は大体居るのだが。カミルを連れて行くとエレノアが人聞きの悪い事を言う。


「ユキツネその子何処から拐ってきたのよ」


「俺じゃないテオの仕業だ」


 二人はテオを凝視する。二人ともテオにはあまり話しかけない。霊獣だからか?


「こいつはカミル。こう見えてドラゴンだぞ」


「うむ、カミルだ。故あってユキツネのペットになった。宜しくな」


「ええー!!ちょっと待ってよ、ドラゴンといえば人語を理解し、自分の種族こそが最高の生物と考える、誇り高き生き物よ。それがペットですって?!」


「ユキツネが愛らしい私を望むので、仕方なくペットになってやったのだ」


 そんな会話をしている。エレノアとエンジュはじっとりとした視線を俺に送るが、俺が望んだのではない。エンジュも食い付く。


「ドラゴンって間近で見たこと無いわ。本当の姿を見てみたい」


 そこで空いてる部屋に入りカミルがドラゴンへと変化した。乳白色の鱗が輝く。


『ガオーッ!』


「わあ凄い、本当にドラゴンなんだ。しかもとっても綺麗な色ね」


「ユキツネは凄く他の種族に好かれる才能があるのかしら。精霊に霊獣、果てはドラゴンまで仲間にするなんて」


 俺が集めている訳ではないのだが。第一こちらでは異民族と呼ばれるエルフやドワーフも勝手にやって来た。人間が来ない場所だから、それ以外の者が集まった。俺は誰も集めてはいない。


 カミルは二人に誉められ満足げだ。艶々で綺麗な鱗は光によって虹色に見えたりする部分もある。ギルドでは高値が付きそうな綺麗な鱗。


「ユキツネ良からぬ事を考えてないか?」


 人間の姿になったカミルが難癖をつける。野生の感ってやつだろうか。ソンナコトナイヨと返しておく。


「ペットとしてユキツネの下僕と仲良くしてやる。そこの獣とエルフよ」


「けっ、獣じゃあないわ、獣人よ。ちゃんと言葉を話せるわ」


「ユキツネの獣も言葉を話すぞ」


「ユキツネのケモノ?まさかやっぱり変な趣味が ………… 」


 変な趣味はない。エンジュはまだテオの正体を知らなかったっけ。獣人は同種属の霊獣を崇拝するってテオが話したけど、テオは猫科でエンジュは犬科だから平気かな。


「テオの事だ。テオは霊獣なんだよ」


「霊獣?まさか~霊獣様は人を嫌いなんだよ。無闇に攻撃を仕掛けて来るから滅多に姿を表さないんだ。だから人間は霊獣の存在を信じない奴が多い」


「エンジュ、本当よ。ユキツネの護衛のテオ様は霊獣なの」


 エレノアがテオに様を付けた!!王様である俺は基本呼び捨てなのに。知らない人の目がある時だけ敬称になる。


「テオ、元の姿を見せてやれ」


 テオを振り返るとテオの姿が変化する。大きなブルーブラックの美しい獣。長い尻尾がゆらりと揺れる。


「れ、霊獣、さま」


 エンジュは突然膝立ちになり、そこから土下座になる。


「存じ上げませんでした。今までのご無礼をお許し下さい。どうかお怒りにならないで下さい」


「なんでテオに畏まってんだよ。テオはテオだ」


「ユキツネさん、霊獣様はとっても尊いのです。無下に扱えばそのお怒りを買うでしょう」


 テオが人の姿になった。


「これだから獣人は厄介だ。人間は攻撃してくるし、獣人は崇める。別に俺はどちらも興味がない」


 テオにとって一番の感心は美味いものだ。生肉も食うが調理してある物は美味いって。だから色んな料理のあるヒ・イズル国が気に入ってる。


 それにしても新しい住人?が入って益々ややこしくなったぞ。



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