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60. カモナマイハウス

 

 新たな国キリバンで俺達は街をさ迷った。目新しい物もなくテオが早々に飽きて狩りに行きたいと言い出した。街に居れば安全に美味しい料理が手にはいるから、正直行きたく無かったけど以前の旅よりも余裕がある分、テオの退屈度は上がっているみたいだった。


 置いていかれても困るからテオに付き合って 森に入った。俺の城の周りよりも歩きやすい。テオは俺にはさっぱり分からない足跡を見つけ、どんどん進む。やがて少し開けた場所に出ると川があった。テオが人差し指を口に当て静かに獣の姿になった。洋服がすっと消えるんだがどんな仕組みなんだろう。荷物とマントだけはその場に置き去りにされている。


 川原には立派な鹿がいる。うっすらクリーム色のソイツは何やら神秘的な雰囲気さえ漂わせ、狩っても良いのか?と疑問すら抱かせる。テオは背後から忍び足で近付き、草むらに埋もれたかと思うと、一気に飛びかかった。


 獲物はかなり大きく暴れ回るが、一気に頸動脈を絞めてミシミシと骨を砕く音が聞こえる。相手があまり動かなくなると、テオは人の姿になった。俺は荷物を抱えテオに駆け寄った。


「随分大きな獲物だな。持ち帰るのに苦労しそうだ」


「ああ、暫く川で冷やしておく。メシにしよう」


 安定の食欲である。食事をしなくても生きて行けるが、食べないという選択肢はない。テオにとって食事は数少ない楽しみの一つだから。今回は簡易コンロを用意しているので、スープと味噌漬けにした肉を焼いていく。


 普通は危険な森の奥で調理などご法度だが、ここには最強生物がいる。テオを倒せるのは同じ霊獣くらいだ。霊獣同士が出会うことは少ない。でもテオは幼い頃に霊獣に出会って、霊獣の事を色々聞いたらしい。ヒ・イズルの通貨に描こうとしていた鳥の霊獣に。


 ジュウウウとフライパンから良いにおいがする。じっくり味噌に漬け込んだ肉は、一気に食欲をそそる。


「やっぱ味噌漬けはうまいな。日本人で良かったよ」


 テオは黙々と食べている。既に追加の肉も焼いている。あって間に食べちゃうから。二枚目も直ぐ食べる。さらに焼いていく。テオが落ち着いたので、テオは鹿を担いでそのまま木の上に飛び乗った。驚きの身体能力である。


 一旦街で台車を借りて森の近くまで運び、そこに鹿を乗せる。巨大な鹿を乗せた台車をテオは軽々と運び、冒険者ギルドで解体と買い取りをしてもらう。ギルドのカウンターで声をあげる。


「たのもう!」


 厳ついオッサンが現れた。筋肉モリモリの顔に傷のあるオッサンだ。俺には分かる、コイツはヤバい人だ。


「おう、兄ちゃん何用だ!」


 俺がビビってわたわたしていると、テオが喋った。


「解体と買い取りを頼む。表の台車に乗ってるやつだ」


 オッサンの指示で裏手に回って運び込む。塀に囲まれた開けた場所だ。そこにいる連中もヤバめの厳つい男どもだ。


「えらいでっかい台車だが、さて獲物を拝見しようか」


 獲物を縛っていた縄を解き、布を取るとオッサンらにどよめきが走った。


「お、おい。こりゃあルーンディアじゃないか?!こんなのお前さん達が狩って来たって言うのかい。この大きさなら相当な労力だぜ」


 鹿を見に職員が集まってきた。とっても珍しい獲物らしい。毛皮と角は良い値段がする高級品で、肉は上質で王族に献上される事もあるとか。えらい騒ぎになってきたな。


 鹿を解体する職員が気付いた。その首筋にしっかりと深く刻まれた牙の後を。


「こりゃあ肉食のヤツにやられたな。成る程、命がらがら逃げ出したが、首の骨も折れている。相当弱っていたのを見つけたって事か」


 勝手に解釈してくれて助かった。人間がどうこう出来る相手じゃないからね。もも肉と心臓をもらいあとは売る。心臓は食べない部所だそうだが、テオが食べたいって事でもらった。薬師が薬として買い取ったりもするが、一般の人はまず買わない。


 買い取り金額は金貨二百八十五枚と銀貨三枚になった。ええ?!ちょっと待てよえらい金額だぞ。テオはいつも金はあるって言ってたな。こうしてテオの貯金は増えていくんだな。一辺には支払えないって事で、数回に分けて振り込まれる手はずになった。


 ギルドを出た後夕方になりエレノア達と合流した。やっぱり仲間の情報はここには無かったようだ。この国はこの大陸の中央辺りに在るので、周辺に転移門を設置したいそうだ。西と東の大陸をエルフ村から行き来出来るようになる。


 ここでエンジュをどうするのかって話だ。


「私はエンジュさえ良ければ私達の国にエンジュを連れて帰りたいの。良いわよね?」


「私ですか。でも、私お金も無いしご迷惑をお掛けしたく無いんです」


「迷惑じゃ無いわよねユキツネ。ユキツネの所で働かせて貰えば良いよね」


 城で働くのは今じゃすっかり見知った顔ばかりだ。変なヤツは入れたくないが、ケモミミは大歓迎だ。


「エンジュが良ければいいぞ。食事と住居は確保される」


「ほ、本当ですか!私が行ってもいいの」


「私達の国は良いところよ。食堂のご飯はタダで美味しいし」


 城で働く人間は賄い付きだからな。でもエンジュの分は多めに用意が必要になるだろう。


「いいけど私達には実は秘密があるの。誰にも言わないと約束してくれるなら、一緒に行きましょう」


「言わない。私は村の外で親しい人はいないもの」


 そこいら辺で行き倒れているエンジュに、知り合いはいないだろう。ヒ・イズル国は秘密ではないが、エルフの転移門の存在は大きい。

 人間の国では大金をはたいて、魔術師を大勢動員した大変なものらしい。それがエルフはじっくりと魔力を込めて、人を集めずとも転移するんだ。その方法を人間は知りたがるだろう。


 翌日にはヒ・イズル国に帰る事になった。テオが一旦外に出て獣姿で転移門を設置する場所を探す。薬草を摘みながらテオの帰りを待ってはや四時間。やっとテオが帰って来た。


 テオに連れられ向かった場所には洞窟が幾つかあった。そのうちの一つに目をつけエレノアが入って行った。


「こんな場所で何をしているの?」


 エンジュが不思議そうにしている。暫くしてエレノアが出てきて、準備が整ったと告げる。全員で洞窟に入いりエレノアが呪文を唱える。


 魔方陣がうかびあがって、俺達はその場から消えた。




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