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58. 食いしん坊万歳

 

 獣人のエンジュと出会った俺達は昼食をとりに店に入った。少し昼を過ぎた事でやや店は空いている。テーブルにつくとメニューの読めない俺達は、適当にお勧めを持ってきてもらう。エンジュはサンドイッチを食べたから飲み物でもとメニューを渡すと、ガッツリと食事をたのむ。


「おい大丈夫か?さっきも食べたのにそんなにたのんで」


「はい。さっきは残しておいて、明日の食料にしようと少な目に食べたんです。まだまだいけます」


 さっき食べたのも相当な量だったぞ。三人分のサンドイッチを抱え込んで半分くらいは食べた。テオの分は多めに作ってあったし。そんな中、大皿に乗った料理が運ばれて来た。カゴに入ったパンと皿の料理を取り分ける。


「うっわ、美味しそうです」


 別口で頼んだはずのエンジュが手を伸ばし、自分の皿に取り分ける。エレノアも目を丸くする。パンを頬張って肉を食べた。俺達も料理を食べる。エンジュが頼んだ物も運ばれてきて、忙しく食べている。テオも負けじと食べていて、追加の料理も頼んだ。


「うう、お腹がはち切れそう」


「食べ過ぎだろう。飢えていたんだろうけど、限度ってもんがあるだろう」


「以後、気を付けます」


 どこぞのフードファイターかと思うほど食べやがって。小さな体の何処にあの量を納めたのか。これだけ燃費が悪いとそりゃあ倒れるよな。腹ごなしにギルドで討伐の以来を受ける。勿論テオ任せである。


 当然の如く肉の美味しい牛の仲間であるグレートバッファローの退治を受ける。え?三十頭程の群れだって。ちょっと待てよそんなの俺達が危ないだろう


「問題ない、俺が全員守る。集団の狩りの練習にもちょうど良い」


「美味しいお肉、ですか。頑張ります」


 新入りのエンジュもやる気満々だ。テオよりもふさふさとした尻尾が揺れている。モフりたい。エンジュは犬科の獣人だそうで、テオとは相性最悪らしい。気まぐれな猫と実直な犬。まあ気は合わないだろう。


 ギルドで以来を受けると、依頼を出した村まで送ってくれる事になった。四人で行けるのかと聞かれたが、テオが自信満々なので職員も取り敢えず納得した。


 そんな中たまたま居合わせた「烈風」というチームのリーダーが、一緒に参加したいと言い出した。「烈風」は六人のグループで、この依頼は六人では厳しいと考えていた。だが、俺達には獣人がいるのでなんとかなるのではと、参加を申し出たみたいだ。


 初対面で連携も取れないだろうから、其々のメンバーの命は自己責任でという事で、話はまとまった。「烈風」は若い男のグループで、必死にエレノアとエンジュに話しかけていた。


「君たち可愛いね。そっちの二人は彼氏なの」


「そんなんじゃ無いです。私は出会ったばかりで」


「失礼だわそんなの聞くの」


 エレノアは機嫌が悪い。まあこんな可愛い子がいたら、若い男は気になるだろうよ。見た目だけは可愛いから。


「俺達の仲間になったら楽させてあげるよ?危険な事はさせないさ」


「おあいにくね。私は十分強いの」


「私は楽よりもお肉です」


 必死に口説いているがテオより強いって事はないからね。エレノアの性格からしても、口だけの男にはなびかないだろう。エンジュはまだよく分からないけど。


 村にたどり着くと村長の家に案内された。魔物の出る場所や報酬の細かい説明を受け、村人の目撃情報を頼りに現場へと出向く。「烈風」とは二十メートル位の間隔を開け、草むらを中腰で進めば鳴き声が聞こえてきた。


 人を見ると向かって来るらしいので、風下から慎重に近寄る。まずはエレノアの弓で狙ってみる。そこそこのお値段の魔石を取り付けた弓は、岩をも貫く威力を発揮する。慎重に狙いを定める。


 ビュン!エレノアは見事に額を貫いた。ブモォオオと集団は狂ったように暴れ始めた。四方八方に逃げ惑うバッファローをエレノアは仕留める。

 エンジュも突然「うおー」とかいって飛び出した。手にした不格好なナイフを持って一頭の背中に飛び乗る。素早い動きだ。暴れるバッファローにロデオ状態で首筋を何度も突き刺す。やがてバッファローは動きを止めた。ヤバい、獣人恐るべし。


 エンジュの背後から別のバッファローが迫るがテオが顎を蹴りあげると、そいつは吹き飛んだ。テオはもっとヤバいな。


「烈風」も魔法や剣で戦っているが、仕留めるまではいかない様だ。苦労しつつも彼等はなんとか二頭は仕留めた。エレノアの弓も動き回る敵には中々致命傷を与えられない。だが弱った獲物をテオが確実に仕留める。結果、俺達の成果は十一頭になった。


 エンジュが走って村に知らせ、村から地竜の引く車がやって来た。大きな獲物が次々運ばれる。三台の車が一杯になって村人も驚く。村に帰ればとても感謝された。


「いやまさかこれ程一気に成果を上げてくださるとは。」


 俺達は十一頭分の報酬を貰える事になる。肉もお礼として塊を受けとる。「烈風」のメンバーは悔しそうだ。俺達よりも多い人数で二頭だからな。報酬はギルドを通じて支払われるので、今日は村に泊まってご馳走を振る舞われる。


 なにせ危険を減らすだけでなく、美味しい肉が大量に捕れたのだ。市場で買うよりも安く手に入れられたので、村人はご機嫌だ。ちょっとしたお祭り騒ぎで広場で鍋を囲んだ。各家庭で野菜を持ち寄って煮込んだだけだが、おいしくいただいた。


 翌日の早朝にはギルドの迎えが来て、元の場所へ帰って来た。ギルドに立ち寄り報酬を貰った。それを四等分にする。


「わあ、私こんなに貰っても良いんですか?」


 一頭につき金貨一枚プラス手間賃で金貨十三枚と銀貨八枚。テオとエレノアが殆ど倒したが、それでも二頭倒したんだ。俺か?勿論荷物もちに徹したさ。当たり前だろう。


「金貨なんて初めてです~。お金持ちになっちゃった」


 エレノアも最初に金貨を手にした時に言ってたな。なんだかニヤニヤしてしまう。荷物もちの俺と同額なのは特に突っ込まれずにホッとする。その日は宿を取って今後の方針を話し合った。


「私はここから南の国、キリバンを目指したいわ」


 エレノアが街でリサーチした情報によると、エルフが多く住んでいる国があるらしい。そこで東からやって来たエルフが居ないか調べたいそうだ。


「わっ、良いですね。キリバンはご飯が美味しいらしいので楽しみです」


 エンジュの耳と尻尾がせわしなく動く。ヤバい、凄く撫でくり回したい。だが女の子を撫で回すのはアウトなので、後でテオの毛並みを堪能しよう。




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