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52. 流離いの料理人

 

 俺は悩んでいた。


 西の大陸で商人のダルウィンさんに料理を頼まれるが、そもそもパーティーの料理って何だ。カレーではないだろう。シチューでもないし、エビフラ…… いやいや此処は内陸だぜ。そしてパーティー料理でもない。


「肉だろう」


「味噌汁?」


 テオとエレノアに聞いたのが間違いだった。獣と素材を楽しむ森の民に、パーティー料理が分かる訳無かった。特にテオは血の滴る肉が大好きだ。血の滴るお肉、か。


 ポテトも庶民的だしな。美味しいんだけど、此方でも芋料理は庶民の味だ。最初に食べさせたのがカレーだが、あれはとても完成された味だ。尚且つアレンジも効くし、それ以上を求められても、難しいだろう。


 何故俺はこんな事で悩んで要るのだろう。そもそも王様に行き詰まって旅に出たのに、旅先で悩みを抱えるとは。まだパーティーまでは日にちがある。街でヒントを探すか。


 だが街を見て回ってもヒントは得られない。揚げパンみたいのが売っていて、エレノアがおやつに食べているが、それ意外はやっぱりピリ辛の味付けだし。

 食堂も入ってみるが、それほど変わった物は無いみたいだ。


 市場でも聞いてみる。川魚も売っていて食べ方を聞いたが、やっぱりピリ辛になるようだ。後は塩焼き。

 悩んだ末に肉でいいかと思った。どうせ素人料理だ、多大な期待をされても困る。ただ、牛肉がいいのだけれど余り出回っていない。主に鶏肉次に豚、もしくは猪。この辺はどこの国でも大体一緒で、牛の魔物は少ないみたいだ。


「牛の肉が欲しいのか。だったら任せろ」


 やったねテオさん、男前だ。欲しい肉は自ら狩る、それが肉食ってものだよ。冒険者ギルドで牛の魔物が出る場所を聞く。丁度魔物が増えて最近困っている村があると教えてくれた。その村へ向かう。


 途中まで行き先が同じ商人に便乗させてもらい、少しばかりの謝礼を払って歩く。ギルドはそういった紹介もしてくれるんだな。村では村長に挨拶し、依頼を確認する。増えすぎた魔物の討伐。一頭は村で買い取り、その他に取れればギルドが引き取りに来てくれる。勿論、討伐の代金は別だ。


 村人ではなかなか倒せない牛が手に入るかも、と村人の期待が高まる。魔物が現れる場所に向かうが、なかなか見つからない。テオも獣姿になって探すが、結局見つからなかった。


 仕方がないので村で一泊する。村には宿泊施設がないので、開けた場所に野宿させて貰う。翌日も朝から魔物を探した。


「あっちに何かいるな」


 テオが素早く獣になると、走っていった。少し経つと獣の鳴き声が聞こえる。鳴き声のする方へ走って行けば、テオが一頭の牛の魔物に噛みついている。近くにも二頭ほど倒れていた。


「ブモォオオオ!」


 暴れるそいつを押し倒し、エレノアが近寄ってとどめをさした。他の二頭も息があったので、エレノアが仕留める。そうして三頭も仕留める事が出来た。エレノアが村人を呼びに行って、村へ運ぶ。無事に肉を手にいれる事ができて、村人は喜んだ。


 約束通り一頭は村へ。残りもギルドに運ばれ、無事に肉を手にいれた。これで一応料理は出来るな。


「新鮮な畑の野菜も欲しいとこだが」


「ユキツネ、それなら任せて」


 エレノアが俺が欲しい材料を、紙に書いて大きなずた袋に入れた。明日には届くはずだと。何とこの袋にも魔方陣を組み込み、旅の間も必要な物をエルフの村人が送ってくれるらしい。紙に書けば翌日には送られるだろうと。


「便利だな。なんでもありかよ」


「これも特別よ。ユキツネが不自由しないように、皆が考えてくれたの」


 この袋があれば旅の間は干し肉ばっかりとかにならないな。エルフは腹持ちのいい木の実を結構用意してくれているけど。だが新鮮な野菜には勝てない。品種改良された野菜は、こっちの物より美味しいからな。全国の農家さん有り難う。


 肉が手に入ったので後は上手く調理出来る様に、特訓せねば。そしてパーティーの当日を迎えた。下味を付けた肉を焼いていく。塩、胡椒とハーブをまぶして味を馴染ませた肉を、フライパンで強火で表面をしっかり焼く。


 焼けた肉をオーブンで焼いていく。二十分も焼けばオッケーだ。肉を焼いたフライパンは味を洗わずに、そのままソースを作る。赤ワイン、刻んだ玉ねぎ、醤油にすりおろしリンゴ。さっと混ぜれば完成だ。

 もう一個肉料理にする。荒く刻んだ肉に、塩胡椒、ナツメグ、パン粉を混ぜてこねる。形を整えて楕円形にし、中央を少しへこませて焼く。これも強火で表面だけ焼ければいい。トマトソースを作って鍋で煮込む。


 ローストビーフと煮込みハンバーグだ。ハンバーグはパーティーって感じではないが、俺のレパートリーの限界である。ハンバーグは見かけなかったから、きっと物珍しい料理だろう。


 更にトマトを取り出す。このトマトは俺の畑のもので、こっちの物より大降りなみずみずしいトマトだ。それに合わせるチーズ。モッツァレラと言いたいが、そんなものはない。なのでヤギ乳を火にかけ、塩少々を入れる。弱火で煮えてきたら、レモン汁を加える。すると鍋の中でポロポロ固まって来るから、それを布で越して纏める。


 そうして出来たものと、スライスしたトマトを交互に重ねれば、カプレーゼになる。オリーブオイルと胡椒を掛けて、バジルを散らせばおしゃれだろ。目新しい感じのものが良いだろうと、これにした。ローストビーフとカプレーゼは、何となく豪華っぽいからな。


 今回は完全に裏方だから、食べる様子は分からないが、概ね好評のようだ。まあ万が一俺の料理が受けなくっても、ダルウィンさんの料理人が品数を作っているから問題ないだろう。パーティーの終盤に、ダルウィンさんが顔を見せた。


「ユキツネさん、今回の料理は素晴らしいですな。どれも初めての味ですよ。とても美味しいです」


「喜んでもらえたなら、何よりです」


「やはり惜しいですな。これだけの腕前を是非とも生かせる場所があればいいのに」


 別に惜しくはない。城に食堂が出来てからは、週に一、二度料理すれば良い方だ。子供相手なら適当な料理でいいけど、店で作るのは別だろう。


「今回はカレーは無かったのですね」


 寂しそうに呟くダルウィンさん。カレー食べたかったのか。前回同様に謝礼を頂いたので、カレー粉をあげる事にした。肉と野菜を入れて煮込んでくれと渡せば、ダルウィンさんは喜んだ。謝礼を二倍払うと言うが、断って帰る事にした。


 しかし裏方に徹すると、直接の反応がわからないな。エルフの子供達は何でも喜んでくれるから、作りがいがあった。


 ここから隣の国まではそう遠く無いみたいだから、次の国を見てみる事にしよう。

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