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44. ヒ・イズル国

 

 大国リンドガルディア。人口五十万超の立派な国家。つい先日お隣の新興国家であるヒ・イズル国へと派遣した魔術師達が帰って来た。予想ではもっと日にちが掛かると思われていたのに、意外に早く帰って来た。


 今まで謎に包まれていた、ヒ・イズル国の全貌を聞き及び、再び大陸に震撼が走る。「罪深き帰らずの森」に一大都市があると。リンドガルディアの首都にも劣らない立派な街並みだと言うのだ。


 あの森を切り開くだけでも大変な作業なのに、既に巨大な建築物が並び、多くのひとが暮らしている。そこには立派な城が有り、あの頼りなさげな青年がいた。城では見たことも無い料理も振る舞われ、それは大変な美味であったと。


 山奥にある集落のような都市を想像していた一行は、度肝を抜かれた。王城から真っ直ぐ伸びる広場前には噴水が有り、絶える事なく水が涌き出ていた。そこに暮らす人の顔に悲壮感はない。


 難民を使い捨ての道具程度に考え、送り込んだリンドガルディアの思惑は外れた。炭鉱で働く者の要に危険と隣り合わせで森を切り開く。そう思っていたのだ。


 この事実は直ぐ様各国に知らされ、居残った冒険者からの更なる情報を待つことになった。



  ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 リンドガルディアから難民がやって来た。その数おおよそ三千人。既に振り分けは間に合っていない状態だから、暫く収用施設で暮らして貰う。ここでも一階に食堂が有り、そのまま何人かを一時的に雇う。ここは住居問題が落ちついたら、一旦用済みになる施設だからだ。


 先に来た人の中には独自に新しい商売を始めた者もいる。早朝には広場に市が出来て、個人が商売をしていた。丁度俺がエルモニアに行った時みたいに。


 少ない資金と資源でやり取りをする人の姿を見て、頼もしいと思う。そんな中冒険者の代表が俺に会いたいと言ってきたらしい。城に出入りするエルフが伝言を頼まれた。俺は申し出を承諾し、城の一室へと冒険者を通した。


 最近はドワーフの若い職人が鎧姿で付き添う事が多い。テオがいるが、国王に万が一があっては成らないと、警備が強化されている。まあ大勢の人間の中には変な奴もいるから。


 部屋に入ると冒険者が頭を下げて出迎える。男二人と女一人。


「あー、その場所に顔を上げてくれ。気楽にしてくれ。先ずは座って落ち着いてくれ」


 着席を促し席に着く。彼等も戸惑いながらも席に着いた。徐に体格の良い男が喋りだす。


「初めまして陛下。俺は冒険者なもんで畏まった喋りは苦手だ。先に謝っておく」


「ああ、この国は貴族なんか居ないし、そんなに畏まらなくても大丈夫だ」


「有難い。俺はマーティアス、暁の咆哮というパーティーのリーダーを勤める者だ。ヒ・イズル国の王に是非に話して置きたい事があってな」


「聞こう」


「俺は難民の管理をする為に雇われたんだが、別件で冒険者ギルドから頼まれていてな。新しい国であるヒ・イズルに是非ともギルドを設立したいそうだ」


 曰く此までこの森は罪深き帰らずの森と呼ばれ、おいそれと手出し出来ない場所だった。


 その場所に新しく国が出来、道が整備されるならば、ギルドを設立したいのだそう。森の深い部分で取れる未知の素材を、いち速く収集する為にギルドは不可欠。そして現在職に溢れている人も、働き口が出来て街も活性化すると。


 うん。確かに今は無職の人が溢れている。全員を兵士にするわけにもいかないし、物資が少ないので商売も申し訳程度に営まれている。現在は配給制の食料だが、いずれは打ち切って自立出来る体制を整えないといけない。


 ギルドの進出は国に取って願ってもない申し出だ。むしろ此方からお願いしたい位だ。快く了承した。


「しかし陛下の護衛はおっかないねえ。あの兄さん、只者じゃ無いだろう?凄い圧を感じるよ」


 テオを見てそんな事を言う。テオは頭に布を巻いて耳を見られない様にしている。そのままだと獣混じりと揶揄される。でもテオって元は霊獣だから、耳が四つである必要は無いんじゃなかろうか。


 獣の姿でも人の姿でもテオは恐れられるんだな。テオは常に不機嫌そうに見える。回りを警戒し、他者を寄せ付けない雰囲気を纏っている。ああ見えて夜は可愛いんだぜ。獣姿のテオは最高である。


「俺の護衛だからな。愛想は無いがとっても強いぞ」


「俺はかなり強いんだが、あの護衛に勝てる気はしないね。ドワーフの二人も強そうだが、普通に見える。陛下の護衛じゃなきゃ、うちのパーティーに誘いたい所だ」


 テオがいなければ、俺の防御力はゼロに等しい。テオが居てくれて良かった。


 ギルドの進出を了承すると、直ぐ様王都のギルドに通信が入れられる。通信手段は様々な方法が有るらしい。数日後には視察団が組まれ、ヒ・イズル国の現状を見て、支部が作られる様だ。


 殆どがドワーフの造る物で外貨を得ているのが現状だが、ギルドが出来れば誰でも簡単に稼げる様になる。リンドガルディアからの物流も出来、もっと国としての体裁が整う。


 誰もが幸せに暮らす国になるんだ。





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