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43. 国交

 

 俺の国にまた人が増える。リンドガルディアから白いカラスが飛んで来た。難民と食料を送り込むと。その為に付き添いの兵士、そして暫く難民を管理する人を送るとの事。ヒ・イズル国を見て回る冒険者も着いてくる。彼等には一切の気遣いは無用と説明された。


 ヒ・イズル国はまだ大変な時期だろうから、リンドガルディアが面倒を見るので、ただ受け入れてくれれば良いと。そこまでしなくても良いのだが、恐らく開拓村みたく思われているのだと、カイラスが言う。


 この国を見たリンドガルディアの反応、そしてその後が楽しみだとカイラスは笑った。それにしてもカイラスは少しやつれたみたいだ。忙しくて大変じゃないかと聞けば、今は仕事がしたくてしょうがないと。


 以前に王宮に勤めて居たときは煙たがられていたが、今は自分が好きに国を作れるので、あれもこれもやりたいのだと。エルフが考える人族には無い、理想的な国家を造ると張り切っていた。まあ理想はいいが体を壊さない程度に頑張って欲しい。


 俺も地味に忙しかった。夜中に起き出してはちっこいオッサンの踊りを見て、街を拡張したり作り変えたり。別に見てなくても良いだろう、とドノムに聞けば主に見ていて欲しいとせがまれる。


 ひっそりと拡張される街。おおよそ二十日程経った頃に、リンドガルディアからの一行がやって来た。


「ようこそ、ヒ・イズル国へ。ワシはドワーフ族のタロスと言う者じゃ」


 がっしりと鎧を着込んだドワーフ五人が出迎える。そこへリンドガルディアの代表らしき人物が、出て挨拶をする。


「初めまして。私はリンドガルディアで仕官をしている魔術師、トゥル・テレジオスと申します。この度は難民を受け入れてくれるとの事で誠に感謝致します」


「まあ硬い挨拶はさておき、案内致すぞい」


 リンドガルディアからの一行は度肝を抜かれる。森の中を馬車でやって来た時から思っていたが、とても付け焼き刃で作られたとは思えない、立派な道だった。丸太の柵で囲まれ、魔物に襲われる事もなくたどり着いた。


 途中には空っぽではあるが、寝泊まり出来る施設もあって、不自由さを感じられ無かった。そうしてたどり着いたのが、壁に囲まれたこの国。自国の王には未開のジャンルにある、発展途中の国だから侮る事の無いように仰せ使っている。


 侮るどころか一歩中に足を踏み入れれば、石畳の道路に大きな建物。そこに行き交う人の顔に悲壮感は無い。道の両脇には沢山の野次馬で溢れている。


 一行は先ず難民を一時的に、寝泊まりさせる施設に案内させる。大きな建物で、新しい人は一旦ここへ収用されると。難民は徒歩で来るので少しだけ遅れてやって来る。


 魔術師トゥル・テレジオスとその部下三名、護衛の兵士が城へと案内された。





 初めてヒ・イズル国王として人を出迎える。緊張するな。だだっ広い広間にまだ形ばかりの兵を配置し、俺は玉座の前で行ったり来たりを繰り返す。


「陛下、落ち着いて下さい。彼方の者が来たら玉座に座って出迎えるのですよ」


「だってカイラス~。俺はそんなのした事無いぜ」


「主な会話は私に任せて、貴方はドンと構えて居れば良いのです。心配は要りません」


 そこへリンドガルディアからの客人が上がって来ると、知らせが入った。にわか兵士も緊張している様子。いよいよ広間の大扉が開かれた。彼等は目線を下げ、玉座の近くまでやって来て膝をついた。


「この度は良くぞ参られた。私はこの国の宰相であるカイラス・ジ・トゥレーイユス」


「面をあげよ。ヒ・イズル国、国王ユキツネ・ヒヤマが発言を許す」


 俺の言葉に合わせて使者が顔を上げた。


「お初にお目に掛かります。私はリンドガルディアの魔術師を勤める、トゥル・テレジオスと申します。この度は我が国の問題をお引き受け下さり、誠に感謝致します」


 そこからの会話はカイラスに任せた。何だか小難しい話をした後は、歓迎の宴を開く手筈だ。身分に関係なく一緒に来た兵士も参加するように促す。宴迄は部屋を用意して寛いで貰う事にした。部屋にはフルーツが用意されている。紅茶と茶菓子も出す。


 魔術師テレジオスは戸惑う。食料にも事欠く未開の地とばかり聞いていたのに、現実はまるで違う。これ程多彩なフルーツが惜しげもなく盛られていて、自由に食べても良いと。このようなフルーツは王族や貴族しか口に出来ない物だが、足りなければいくらでも出すと言う。


 一緒に来た兵士は感激していた。フルーツはどれも甘く、新鮮で美味しい。見たことの無いものもあったが、全て平らげた。貴重な紅茶も兵士の分も用意された。


 少し経って難民の団体が到着したと知らせが入った。難民の収用施設に案内し、そちらでも食事を振る舞う様に言ってある。


 日も暮れて来たのでいよいよ宴の始まりだ。立食形式で用意した。まあ俺が堅苦しい食事は苦手だし、身分に関係なく気兼ねせずに食べられるしね。


 俺の音頭で乾杯すれば全員で食事をする。勿論俺の兵士も混じっている。何せこっちの人間で代表は俺とカイラスだけ。普段から食事は皆で食べてるし、何時もの食堂が品数多くなった感覚だ。


「陛下、これはとっても美味しいですな。パンの上に色んな具材が乗っていて」


 ドワーフのタロスは食事を楽しんでいる。酒もあるのでドワーフの皆は浮き浮きしている。


「ピザって言うんだ。そっちのは天婦羅だ。ミートスパゲッティも美味いぞ」


「酒が進む料理だな。ドワーフ全員で来ればよかったわい」


 うちの兵士もがっついている。食堂よりもちょっぴり豪華メニューだしな。兵士はお酒は禁止であるが、ドワーフは飲ませないとうるさいからな。


 最初は萎縮していたリンドガルディアの兵士も、俺がドワーフと話しているのを見て、少し緊張がほぐれた様だ。テレジオスが俺に話かけてくる。


「ヒ・イズル国はとても立派な国ですな、陛下。正直これ程とは思っても見ませんでした。これは精霊の加護なのですか?」


「そうじゃ、うちの陛下は凄いんじゃ。誰もが平和に暮らす国を造ろうとしておる」


 何故かタロスが応える。酒が入って上機嫌だ。


「この国ではドワーフもエルフも、獣人だって自由に暮らせる。素晴らしい国じゃ」


「そうなのですね。この様に難民を多く受け入れて下さり、なおかつ庶民にも心を砕いておられる。まるで夢の様な国ですな」


 その後も色々話をし、運ばれた物の目録を貰い、テレジオスと兵士は帰国する。難民の方は冒険者が付いて来ていて、暫く勝手をしないように見張り、管理するそうだ。


 これで本格的に国交が始まるな。どんどん国が出来て行く。正直こんなに立派な国の王様になっても良いのだろうか。最初はがむしゃらに国を作って来たけれど、あまり大きくなると不安になる。


 願わくば此のままで。この平和が続きます様に。




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