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42. 開通

 

 新しい国ヒ・イズルを巡り、又も大陸に衝撃が走った。リンドガルディアとの国交が成されたのである。しかもリンドガルディアにヒ・イズル国の王が招かれて、リンドガルディア側が、道を作りたいと申し出たのだ。


 しかし恐るべき事に、ヒ・イズル国は二月(ふたつき)も掛けずに道を整備したと。あの深い森を僅かな期間で切り開いたのだ。リンドガルディアが数年の規模で開拓する予定だったのが、驚くべき速さで成し遂げられたのだ。


 現在リンドガルディアの周辺に溜まっている難民を、ヒ・イズル国が受け入れる代わりに、食料を安く提供して欲しいと申し出があった。無論最初からその予定であったので、快く引き受けた。

 本音を言えば街道の整備等で恩を売りたかったのだが。


 しかしこれで今まで実態の掴めなかったヒ・イズル国に行く事が出来る。難民と共に兵士と冒険者を送り込み、ヒ・イズル国の実情を探る事とする。


  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 平和だ。取り敢えず平和。だけど国民が一気に増えたことで、エルフドワーフは目まぐるしく働いていた。カイラスには部下が付き、急速に法の整備や国民の登録、各種書類の整備等、やることは盛りだくさんだ。俺は時々どうでしょうと提案されるも、ほぼ頷く事しか出来ない。


 王様の役目は、時々書類に判子を押すだけの簡単な仕事です。


 エレノアは店番を任せる人を雇い、王城の畑で採取するのが専らの仕事だ。現在食料は配給制で日に二度、配られている。エレノアの指図で現在割と暇なメイド部隊が野菜を収穫し、広場前に急遽作られた食堂で、人を雇い国営の食堂になった。


 お金を持っている人はエレノアの店で、野菜意外にもジャムやスパイスも買える。ドワーフも工房に弟子を雇う事が出来たが、現在不足気味の食料の輸入に奔走している。


 目まぐるしく発展していく街並みを、他人事の様に眺める。街から少し離れた場所に広大な畑も作り、小麦も生産している。

 農業の経験者もいて農家の希望者も多かったが、くじ引きで決めた。土地は国のものだが、一軒家に住めるし家族が多い者は、有難いのだ。土地も将来的には買い取る事も出来る様にする。


 俺は相変わらず街をプラプラ歩いたりする。王様として顔も知られているが、人化し耳を隠したテオが付き添う。街の人の反応は、ちょっとした有名人が近所に住んでいる、みたいな程度だ。


 最初はエルフ達に街をふらつかないで欲しいと要求されたが、堅苦しいのは好きじゃないし、少しずつ発展する街を見るのは楽しい。国民に直接ああして欲しいとか要求されて、困り事とか割と思い付かなかった部分も聞ける。


 今では街にいるのが当たり前になっている。時々指を指されるが、その程度だ。俺は庶民派の王様なのだ。


 だが。


「ねーユキツネ、新しい料理作ってよう」


 重ねて言うが俺は料理人ではない王様である。そしてこんな要求をするのは一人しかいない。


「エレノア前から思っていたんだが、お前の要求はおかしいと思うのだが」


「だって私達の村は以前はシンプルな料理しか無かったの。でもユキツネは、調味料からスパイス迄、色々知ってるし、期待してるの。勿論子供達もね」


 ここ最近は忙しく、子供達も遊びに来ていない。DVDと料理に目を輝かせる子供達が、浮かぶ。仕方ない。


 明後日に子供達を連れて来ると言うので、何にするか考える。子供の好きなメニューか。…… あれで良いか。

 その当日には緊張した面持ちの子供達が、現れた。


「こここ、国王陛下に置かれました?」


「王様万歳?」


「べ、別に陛下って呼んでやっても良いんだから」


 最後のリザはツンデレが入ったな。ちょっと可愛いらしいが、俺はロリコンではない。もう少し成長したらいって欲しい。しかし急に王様扱いだな。


「村の皆が陛下には粗相の無いよう敬いなさいって」


 新メンバーの子供がそんな事言い出した。まあ今や俺の国も大分大きくなって、エルフ村でも色々注意を受けているみたいだ。だからって俺が変わる訳では無いので気楽にして欲しいと伝える。


「もうDVDも見飽きて来ただろう?今回はゲームを用意してやったぞ」


 押し入れに眠っていたゲームを取り出す。アナログの巨大な物だ。


「これは俺の国で人気のゲームだ。エレノア、ノートは持っているな」


「昨日ユキツネに言われるまま、書いたけど」



「ではやり方を説明する」


 人生ゲーム。大人数でやるには丁度良いだろう。日本語で書かれているので、エレノアに順番にマスに番号を振って、書いて貰った。職業とか解りにくい物は、此方の物に当てはまるもので表現した。


「………… 説明は以上だ。皆で仲良く遊べよ」


「えー。人生って、私達は森の民だもん。こんな人間の街に長く住まないし、下らないわよね」


 エレノアが小馬鹿にした発言をする。しかし人生ゲームは自分では出来ない体験をするゲームなのだ。それはさておき料理を作るか。


 今回は食堂のおばちゃんにパンを用意して貰った。何時もと違うパンである。テオの捕ってきた肉を細かく刻んだ物に、豆乳に浸したパン粉と玉子、刻んだ玉ねぎをぶちこむ。ナツメグ、塩胡椒

 も加えて混ぜたら丸く形を整える。


 フライパンで強火で焼いて行く。表面が焼けたら火を弱める。そして具材の用意だ。トマト、ピクルス、レタスにチーズ。おわかり頂けただろうか。そう、あのジャンクフードである。

 丸いパンを横半分に切って、軽く焼いて具材を入れる。ハンバーグも焼き直してチーズを乗っけた。予め作って置いたミートソース、野菜にマヨネーズを少々。


 ハンバーガーだ。付け合わせにポテトとオニオンリングを添えて。


「お待たせ」


「何で私が貧乏人なのよう~!」


 エレノアが絶叫する。どうやらゲームで商人として成功し、大金を得て子供も五人生まれたが、転落して離婚。子供は相手が引き取り財産を全て失い、借金もこさえたそうだ。


「こんなの間違いだよ。私はもっと上手くやれる」


 最初は鼻で笑っていたのに、一番はまって要るんじゃ無かろうか。子供達も困り顔である。


「ほら、さっさとどけよ。冷めないうちに食べろ」


 ワッと子供達が笑顔になる。食べなれたパンとポテトに、ユキツネにしては普通の料理だと、エレノアがやや不満げだった。だが、食べ始めると、その表情が変わった。


「なにこれ?!お肉柔かっ。うまっ、ふぉおお」


「飲み物もあるぞ」


「フェ?ドロッとしてピンクで、ひんやり??」


「甘ーい、うまーい」


 砂糖を入れた豆乳とイチゴを凍らせて、ミキサーに豆乳とそれらを入れて混ぜた物だ。簡単シェイクの出来上がりだ。最強の組み合わせに、子供達は息も絶え絶えだ。


「もう食べられないよ」


 付け合わせのポテトとオニオンリングは多めに作ったのだ。それぞれ食べる量が違うから、一つの皿でまとめて出したんだが、殆ど平らげたな。満足そうだ。


「ねえ、私はこんなものじゃ無いの。もう一回ゲームを」


「エレノア、帰りが遅くなるだろう。お前は子供達の保護者なんだから、ちゃんと送って行けよ」


 未練がましいエレノアを引きずり村へと帰って行った。どっちが保護者なんだかわからないな。


 今回も良い仕事したぜ。あれ?王様ってこんなんだっけ。ま、いっか。





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