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40. それぞれの思惑

 

 俺、桧山祐紀経は衝撃の事実を知った。

 速報 ━━ 精霊と会話出来ない、姿も見えない ━━ である。

 陽気なオッサン共はいっつもワイワイ騒いで普通に会話していたが、今のところ俺だけだった。

 

「貴方、私の精霊と会話を?そんな馬鹿な。精霊は直接会話出来ないし、他人に認識出来るなんて…… 。いえ、気のせいよそんな筈無いわ、気の迷いよ」


 ぶつぶつ呟いて一人納得するティア。


「っつ、テオって何なの?普通の人間とは思えない。まるで強い魔物に出会った時みたいに体がすくんだわ」


 暫く固まっていたティアが動いた。


「俺はお前の期待する人間じゃない」


 テオはフードをぬいだ。そこに現れる四つの耳。ティアが息を飲む。街を行く人も足を止めてテオを見る。周囲の明らかな軽蔑の眼差しを感じた。


「獣人なのね。良いわ対して問題はない。ビジネスパートナーだもの」


 耳を見て少しびびった様だが相変わらずのティア。彼女の精霊はテオが嫌いみたいだ。


『もーティアったら、そんなヤツなかまにしちゃダメなの。ケモノなのよ』


「お前の精霊はテオが嫌いみたいだけど」


「なんで私に分からないのに私の精霊の言葉がわかるのよ」


「普通に喋ってるし。ちっちゃい女の子が一生懸命アピールしているぞ」


「嘘よ!だったら私の精霊の名前は何て名なの」


『リリルだよ、ティア』


「リリルだってよ」


「リリル…… ?」


 ティアが名前を呼ぶとリリルは光を増して、ポン、と現れた。今まで少し透けて見えていたものが、はっきりと形になったのだ。


『ティア!ワタシのナをよんでくれた』


 リリルは嬉しそうに飛び回った。


「リリル?嘘でしょう、姿がはっきり見えるわ!」


『ティアがちゃんとよんでくれたから、チカラがツヨくなったの』


「リリル、ずっと会いたかったの。私を護ってくれる精霊に。子供の時に出会ってからずっと…… 色んな本を読んで精霊との付き合い方を調べても、リリルは見えなかった」


 何やら感動しているみたいだ。


「ユキツネ、貴方………… 凄いわ、有り難う。私の精霊と会わせてくれて」


「別に俺が何かした訳じゃない。最初からソイツはそこにいただけだ」


「でも嬉しいの。光の玉にしか見えなかった精霊に、やっと会えて。ユキツネは最初から見えていたのね」


『ワタシはユキツネのセーレーよりもチカラがヨワイから。ワタシもティアとハナせてうれしい』


 ティアはリリルと色々喋って、此方を見た。テオと組むのは諦めると。精霊の使い手である俺の護衛に、テオは必要だろうと。


「最初は貴方に興味が無かったけど、出会えて良かったわ。きっとこれから精霊と人間の付き合い方が変わる、いえ変えて見せるわ」


 ティアは何度も俺に礼を言って別れた。そんなに凄い事は一切していないのだが。

 ティアと別れた後はひたすら買い食いをして回った。珍しい果物や、魚の干物もあった。屋台も独特の風味の物もあって、まあまあ楽しんだ。前回は冒険の旅、初級編って感じだったから。


 宿に戻ればエルフとドワーフのチームも荷物をしこたま抱えて戻ってきた。観光を楽しんだ様である。翌日の午前中までゆっくりして街の外まで馬車で送られた。そこからはヒミツなので兵士もそこまでで別れる。


 再び森まで分け入ると隠していた荷台の前で暫く待つ。テオが森の奥へ入って行って、再びあの恐竜?を連れて来た。どうやって見つけたのだろうか。口輪を付けて荷台を引っ張る。恐ろしい勢いで、森を駆けた。

 国に帰る頃には皆はヘロヘロになりながらも、無事にたどり着いた。それぞれ土産を手にして帰路へとついた。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 リンドガルディアの王宮。そこに精霊使いの少女が呼び出されていた。


「どうだった?お前はどう思ったのだ、レティシア」


「彼は面白いです。まるで普通の人っぽいのに、とっても精霊に愛されているみたい。私の精霊はアイツヤバいって言っていたもの」


 報告を受けアムルは唸る。城を出たあとかの王は普通に観光していた様であった。だがその途中で精霊魔術師とやらに出会い、話し込んでいた。


 精霊魔術師は少し前からこの国に居るそうで、何でもキングオルラシオンを仕留めたらしいのだ。その時一緒にいた冒険者が驚くべき事に、ヒ・イズル国の王と護衛のテオだと。


 今回の招待は一か八かの賭けであった。そもそもエルモニアには何かしらの方法で出入り出来るようになったとしても、リンドガルディア迄足を運べるのかさえ不明であった。

 レティシアの精霊を飛ばせると聞いて、返事は期待しないで待っていたつもりであった。


 しかし直ぐに返事が来て此方へ赴くと言われた。あの森の奥からいとも簡単に出て来たのだ。しかもこれが初めてではなかったとは。


 ヒ・イズル国との間に道を作り国交を結べば、最初の友好国となれる。まだ見ぬ未知の国はどの様に出来たのか。未開の地に其ほどの産業が在るとは思えないが、得体の知れぬ力を持った国だ。エルモニアの二の轍を踏んではならない。


 今回得られた情報を元に慎重に相手を探らねば。ヒ・イズル国の王は小娘とも気さくに話し、温厚そうな男だった。その男の護衛が曲者だった。通常獣混じりと呼ばれ避けられる者。

 まるで総てをい殺す様な殺気を放っていたと。獣混じりは通常よりも力が強い者が多く、気性も荒い。


 あの優男に黙って従う様な性質ではない筈だが、護衛として大人しく従っている。見た目通りの凡庸な男ではない、何かがあるのだ。


「面白いな」


 思わず漏れた感想にアムルは苦笑いをしてしまった。一つ間違えれば国を滅ぼす存在。ここ何年も一向に変わらない大陸の国々に新しい風が吹いているのだ。


 それが吉と出るか凶と出るか。妙に期待をしてしまうのだ。この世界は長らく発展していない。その勢力図を塗り替え兼ねない存在に胸が高鳴る。


 新しく時代が動き出す事を願って。




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