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17. あれは定番の食事

 

 無事にエルフ村に戻った俺達は子供に囲まれた。


「お帰りユキツネ~」

「お帰りなさい。どうだったの」

「ちゃんと出来た?」


 元気な女の子ノルン、中性的な男の子エルガー、おしゃまな女の子リザだ。少し離れてユアラ。


「ユキツネ、王様と交渉出来たのかしら?心配だよ」


 おっと大きな子供、エレノアもいた。


「心配いらん。無事に交渉して国と認めて貰ったし、人を集める許可も貰った」


「えー!ユキツネなのに。やっぱりカイラスが一緒に行って正解だったね」


 すると側にいたカイラスはエレノアを嗜めた。


「こら、王にその様な口を効くのではない。この方はこれから大国の王に成られる方だ。我等の王に相応しい素晴らしきお方だぞ」


 ヤバい、カイラスの信頼が厚すぎて変な事になってる。俺は殆ど何にもしてないのに。


「我等ドワーフ族から見ても、素晴らしい王だ。元より既に忠誠を誓っている」


 ゴルドまで何だろう。俺を誉め殺しにする気か。恥ずかしさで爆発しそうだぞ。その後もエルフと色々話をして、自宅へと戻った。こたつに入ると今日の緊張から一気に解放された。こたつには癒し成分が入っているのか。


 数日後ドワーフ族の皆さんが国へ赴き、国民を募る運びとなった。転移はしないでトンネルを抜け人を連れて来るのだ。少なくとも一月以上はかかる。


「より良い職人を育てるぞ」


「うむ、楽しみだのう」


 …… 何だか不安な気もするが張り切って要るのでここは任せよう。まとめ役のタロス以下、総勢九名のドワーフが旅立った。三人は留守番を務める。


 そうしてまた平穏な日常が訪れる。なので俺はカレーを作ってみようと思った。庭には各種スパイスがある。問題は配合だ。

 ターメリック、ナツメグ、コリアンダー胡椒にクミン等々。本棚にあったザ.男飯、拘りの手作り料理成る本を参考に、色々混ぜていく。

 すり鉢でゴリゴリ混ぜた材料をフライパンで煎って、肉と野菜を炒める。すりおろしたリンゴと水を入れたらひたすら煮込む。


「ユキツネ、何か変な臭いするよ」


 エレノアがやって来た。俺は広場に煮炊きの出来るスペースを作ってもらい、そこで大きな鍋で煮込んでいた。


「これは凄い料理を作っているんだ。上手く出来たら子供達を呼んで食べにこい」


「おお、ユキツネの国の料理は美味しいもんね。でも何か凄い香りだよ」


「これは子供から大人まで大好きな料理だ。ただし初めて挑戦するから上手く出来るかは分からん」


 じっくり煮込んで翌日に子供達を連れてエレノアがやって来た。大人の女性も二人いる。


「王様が凄いもの作ってるって聞いて、やって来たんだ」


 ノルンちゃんの姉エイラさんとリザの母親だった。美女二人の登場に俺は緊張する。


「気に入って貰えるかは分からんが、まあまあ美味しく出来たと思う」


 テーブルに人数分の食器を用意し、お釜で炊いたご飯をよそう。ぶつ切りの野菜は原形を留めていない。お水も配って試食会だ。街の広場でランチとは奇妙な絵面だ。


「いっただきまーす」


 俺が教えた食事の挨拶をし、スプーンを突き刺す。口に入れればスパイシーな香りが広がる。仕上げのヨーグルトがなかったが、カレーっぽくなった。


「ングング」


 横を見ればノルンちゃんがハムスターみたく、頬っぺたを膨らませて食べている。他の子も無口だ。


「美味しいわぁ」


 美女二人も嬉しそうだ。どうやら試食会は成功のようだ。気を良くした俺は真っ赤な粉を取り出す。


「ユキツネ、それは何?」


「ふっ、これは大人にだけ許された、禁断の味だ」


 俺は真っ赤な粉を自身の皿に振りかけた。複雑な味に刺激が加わる。やっぱ辛口だよねカレーは。


「私にも頂戴よ」


「エレノアにはまだ早い」


「私だって大人だもん。ユキツネずるい」


 ノルンちゃんもヨダレを垂らして見ているが、これは流石に食べさせられない。大人の味だからね。


「そこまで言うならかけても良いけど、ほんの一寸にしておけよ」


 俺が真っ赤な粉の容器をエレノアに渡すと、スプーンに山盛りのそれを振りかけた。


「あっ、こら!」


「へっへー頂き」


 軽く混ぜてパクパクと口へ運ぶ。大丈夫…… なのか。


「っつ!!!」


 最初は勢い良く食べたものの徐々に顔が赤くなり、目尻に涙が浮かぶ。


「水を飲め!」


 エレノアはあっという間に水を飲み干し、隣のリザの母親の水も飲んだ。


「痛い、酷いよユキツネ。これは毒が入っているの?」


「毒じゃない、大人の味だ。だから言っただろう」


 エレノアの惨状に子供達がドン引きである。その後も暫く咳き込み、微妙な空気で試食会は幕を閉じた。

 俺はやったねカレー試食会、大成功と言いたかったのに、エレノアのせいで妙な雰囲気になってしまった。


 カレーは皆完食していたけれども。


 その後も数日はカレーの件でエレノアが愚痴を言ってきた。元はと言えば俺の制止を聴かずに勝手にかけた癖に。

 だが更に日にちがたつと、エレノアの様子が変わる。


「あのね、ユキツネ。子供達がカレーとっても美味しかったって」


「ふうん。そりゃあよかったな」


「皆が又食べたいって言うの」


「じゃあ今度作るか。エレノアは抜きで」


「そ、そんなの駄目だよ!私は皆のお姉さんなんだから、一緒に食べる義務が有るの」


「義務で嫌なものを食べなくっていいぞ。食料なら一杯ある」


 エレノアは涙目である。子供達の話を聞いた大人も食べてみたいと思っているようだ。それならエルフの村で作れば良いと、レシピを渡す事にした。


「でもお米がないよ」


「カレーはお米にもパンにも合う、魔法の食事なんだ」


 俺が教えたレシピを元に、畑に赴き材料を揃える。野菜も様々な組み合わせで試すと美味しいと伝える。エレノアは上機嫌で村へと帰って行った。


 カレーは正義である。








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