表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/63

助けてみせます!

     4

    - 4階廊下 -

  香織は廊下を駆け抜けつつ、内ポケットより通信機を取り出し左耳にセットした。その勢いでジャケットを脱ぎ捨てる。

 「こちら rabbit 。 phantom 聞いてますか !? 」

 鞄より帯嚢とショルダーホルスターを引っ張り出し、装着。鞄も投げ捨てた。

 『 phantom だ。無事か?』

 「保護対象(涼介)と joker (藤岡)も無事です。現場を離脱しました。現在 Minx が交戦中」

 『了解した。現場の状況を詳しく報告しろ』

 「不審人物乱入後、その容姿が変貌。例えるなら……AMのような……」

 『なんだって !? 』

 「そうとしか言いようがないんですよ!それが判別不能の兵器で横山祥子殺害。目的は対象の殺害です」

 階段だ。

 ……下へ。

 振り返ると、藤岡に引きずられるようにして、涼介は遥か後方だった。

 「あぁ、もぉ!」

 とって返す香織。

 するとその時、足下を揺るがす衝撃が。

 耳に一瞬の雑音。爆発による電磁波の乱れだ。

 ……なに !?

 不吉な予感がよぎる。

 『…… antom だ。 Minx が ライフ セーブ モード に入った !! 』

 香織は一瞬固まった。

  ライフ セーブ モード。AMが行動不能に近いダメージを受けた、或いは搭乗者が生命に関わる事態に陥った場合、自動で発動するシステムだ。

 AMの実戦は初めてだが、まさか初舞台から……。

 「そんな……恵ねぇが……」

 『今は任務が優先だ。 Minx の支援は望めない。 Tomcat と Wyvern(ワイバーン) を向かわせた。それまで凌げ !! 』

 「……了解」

 香織は、ぱんと頬を両手で叩いて気合いを入れた。

 「先生、涼ちゃんをおぶって下さい。校庭に急ぎます」

 「あ、あぁ。任せろ」

 未だ涼介は視点が定まらない。しかも支援は無きに等しい。

 訓練で想定していた事態から考えれば……下から数えた方が早いくらいだ。

 ……それでも。

 「絶対私が助けてみせます!」

 それは、自分への激励でもあった。


    - 医務室 -

 「ちっ……」

  Eridanus は舌を打ち、右手に目をやった。

 手応え不十分。

 「起きたばかりで調子が出ねぇか」

 しかし、深追いしている場合じゃぁない。

 「下……だろうな」

 左手のナイフを床に振るい、コンパスのように切りつける。円形に抜けた床へ、 Eridanus の姿が吸い込まれて行った。


    - 東階段 -

 「先生、仮にも GDS のスタッフなんですから、頑張って下さいよ」

 身軽な香織はいい。涼介を背負う藤岡は踊り場で作業する香織を睨めつけた。

 「君ねぇ、僕ぁ非戦闘員だよ。それに年寄りは労るものだ」

 「たまには運動して下さい。それに、英国紳士は年齢に関係なくレディー・ファーストですよ」

 ……ここは日本だ!

 声を大にして言いたい。しかし、いざという時香織が動けなければ意味がないのも事実だ。

 ふと、コンポジット4 (C-4) 爆薬に雷管をセットする香織が作業を中断した。

 「……気配が」

 香織は手早く作業を終え、口にくわえたマグライトの照明を落とした。

 「……まさか」

 「しっ」

 香織は唇に指を立て、ホルスターの銃を抜く。 藤岡にハンドサインでその場を動かぬよう指示。safety 解除。ハンマーを起こし、下、2階へ足を忍ばせた。

 既に気配は藤岡にまで感じられた。

 彼女は壁に背を当て、呼吸を整える。

 ……1、2の3!

 銃を構えて廊下へ。

 「動くな!」

 「うぉあぁ!」

 人影が仰け反り転倒。

 ……げ !

 「せ、先生 !! 」

 香織は慌てて銃を戻した。

 心理学助教授の大郷だ。

 「き、君は赤城くんか」

 大郷は眼鏡を直しつつ立ち上がる。

 「まったく、遅くまで何をやっているやら……」

 ……やっばぁ。

 話し出すと長い先生なのだ。

 「す、すいません……」

 「ところで、これは君のせいなのか?停電になる、電話も繋がらない。爆発音がしたみたいだが、警備の……」

 不意に大郷の表情が固まった。

 「先生?」

 首がずれた、と思った直後、大郷の首が落ち、鮮血が吹き出した。

 「いやぁぁぁ !! 」

 不覚にも香織は悲鳴を上げた。

 死に対する感覚の接続を切るための訓練は受けてきた。が、面前でこれは衝撃が大きすぎた。

 「嘆くこたぁねぇ。次はお前だ」

 首のない大郷の向こうに赤く光る、一対の目。

 ……あいつ !!

 香織の頭は瞬時に切り替わる。

 「先生ごめん!」

 香織は大郷の遺体を Eridanus に蹴り倒し、階段へ飛び込んだ。

 「……く、この!」

 Eridanusは不意を突かれて出遅れた。

 「香織クン、今の悲鳴は !? 」

 藤岡の開口一番、香織は唇を噛み締めた。

 「何でもありません……。ただ、あいつが先回りしてました」

 「なんだって !? 」

 藤岡の狼狽へ首を振る。

 「予想は出来たことです。先生は涼ちゃん連れて屋上へ」

 「しかし君は?」

 香織は精一杯の笑みを見せた。

 「すぐ追い付きます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ