突入命令
- 校庭 -
「ドラ猫遅い~。まさか渋滞?ダサすぎんのよ」
暗くなりつつある木の枝で一通りの苦情を呟いた彼女は、くぅっと伸びをしてみせた。瞬間、監視目標から爆炎。危うく枝から落ちかけた。
「な、な、何事 !? 」
目標に向けるスコープに点滅する緊急信号の確認と同時、インカムに入電。
『 phantom だ! king( キング ) より突入命令が発令された !! 』
「こっちも rabbit( ラビット ) からのシグナル受信。 Z ・ Z ・ Z よ。壁が吹っ飛んだわ !! 」
『くそ……。状況は不明。兵装は各自判断』
「んなの、AM (Armed Mail) 使わせてもらうに決ってんでしょ。 Rabbit は?」
『未搬送だ』
「あらもったいない。通信以上! Set AM !! 」
彼女の声に応じ、木の根本の風景が揺らぐ……と、一部空間に裂け目が生じ、その奥に機械部品が浮き出した。
彼女は滑るように楠木より降りると、その機械部品の浮き出た中へ。それは彼女を包み込む。
機械の頭部内側に設置された、ゴーグルのようなディスプレイが顔に圧着し、文字が点灯。
『 system Minx …… ready? 』
「 チェック、東洋方面遊撃隊、北条恵美」
『 OK …… system open』
北条恵美は軽く口笛を吹く。
「 ステルスモード解除。余分な消費は避けるのよ。暮れてきたわ。暗視と防御フィルタ用意」
『 yes mam 』
「さぁ、初の実戦、しかも一番乗り。気合い入れるわよ !! 」
再び楠木の根本が微妙に歪む。と、不意に彼女より 1.5 倍程の体長をした真っ赤な人型が現れた。
光学迷彩を解除した人型……全環境型装着兵器、 GDS 遊撃隊主力の Armde Mailである。
そのAMより二枚のフィンが開き、勢い爆破点の四階まで一瞬にして跳躍した。
- 国道 129 号橋本 -
18 時以降の帰宅渋滞にはまった GDS 搬送トレーラーの助手席で、男は編み上げブーツの足をコンソールの上に投げ出した。
「あ~あ、ハズレだぜ!」
金髪を手櫛だけで無造作に撫でつけた、碧眼の優男。細面のそれは、自称英国紳士と言うが……同僚曰く、イタリアの女たらしの方がまだ信頼出来る、そうだ。
「オルコックさん、ふてないでくださいよ」
運転をする整備班の吉岡はたまったものではない。
「だぁってよ、男とドライブ、しかもその後子守りじゃぁなぁ」
この男、 GDS 東洋方面遊撃隊のシン・オルコックは口端の煙草を道路に吹き出した。
「英国紳士はそんなことしませんよ」
「へぇいへい」
と、そこに通信が。
「はいはい、こちら体操のお兄さんですよぉ」
『ふざけるな! phantom だ。 tomcat だな !? 』
「ただの冗談ですよ。はい、 tomcat です。命令変更ですか?」
『冗談を言ってる場合じゃない !! 』
通信相手のまくしたてる内容に、シンは笑みを見せた。
「あれま、姉さん突貫かよ。さすが minx( おてんば ) だぜ」
『感心している場合か!お前もそこからAMで向かえ !! 』
「 Yar phantom !」
シンはヘッドレスト横の窓より荷室へ滑り込んだ。
「 Set AM !! 」




