化け物
- 地下最奥部 -
祭壇を思わせる母身の間。その扉を守る親衛隊の黒い機甲体、 Kastor と Pollux は異常な圧力に慄然とした。
上、地表近くからだ。
見上げた直後、天井を突き破り、光の塊が通過。この空間を貫通し、親衛隊の部下の殆んどを蒸発させた。
「 Kastor、こいつぁ Pleiades か !? 」
「あぁ……。しかし、この気の高まりは異常だぞ」
……来た。
「面白ぇ!」
天井よりプラズマの発光を纏い、白い機甲体、 Pleiades が降下。
「ぅえぁぁぁ !! 」
5機残った Kastorの部下に乱入。蒼流剣が一瞬弧を描いたかと思うと、全て両断した。
「やるな、 Pleiades !」
息荒く Pleiades が二人と対峙した。
「どいてくれ、速人さん、昭人さん!」
Pollux が舌を打つ。
「嫌な名で呼ぶんじゃねぇよ」
「この扉を越えたくば、我等を倒してゆけ!」
Kastor とPollux の手に、漆黒の槍が現れた。
「分かった。もう、自分でも止められないよ」
「戯れ言を!」
Kastor の右掌より光弾が放たれた。
「せぁぁぁ!」
蒼流剣が円を描く。光弾は Pleiades の手前で消失し、余波で爆炎が燃え上がる。
「笑わせるな!」
Pleiades はスラスターで加速。炎を突っ切り Kastorに斬りつけた。
「ぬん!」
槍で止めた。
「周囲を気にした攻撃で俺を止められると思ってんのかよ!」
「だろうぜ!」
背後より殺気。
咄嗟に左右分かれて飛んだ Pleiades と Kastorの間を光弾が疾り、壁一面が蒸発、月面まで貫通した。
Pollux だ。
「 Pollux 貴様!」
Kastorの装甲表面にスパークが奔る。
「私はともかく、母身まで巻き添えにする気か!」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。遠慮してっとこっちがやられちまうぜ!」
その Pollux の足下に白い影。
「野郎!」
Pleiades は Pollux の槍に左掌を当てた。
「はぁぁ!」
槍が弾け飛ぶ。
「せぃやぁぁぁ !! 」
続けて剣が水平に胴を狙う。
「くっ!」
Pollux は後転で間合いを空けた。
直後、 Pleiades の背に Kastorが槍で突き込んだ。
しかし……
金属音が甲走る。
「これで本気か?」
Pleiades が背に回した剣が槍を受け止めていた。
「この……」
Kastorは後ろに飛び、一度 Pleiades との間合いを空けた。
「よう Kastor、やっと本気か?」
「黙れ!」
Kastorの自尊心は打ち砕かれた。
「 Pleiades 、貴様に問う」
Pleiades は立ち上がり、左右に腕を広げて双方牽制した。
「母身に会ってどうする」
「確かめる。そして、倒す!」
Kastorと Pollux は槍を回転させ、右に構えた。
「ゆくぞ Pollux 、遠慮はなしだ!」
「応さ!」
二人は同時に Pleiades まで間合いを詰める。
「やぁぁぁ!」
上下に分かれ、槍が飛ぶ。
……伍の型、旋風。
Pleiades の身が螺旋に舞う。一瞬剣に弾かれた槍、 Pleiades の手と足それぞれに抑え込まれていた。
しかし、 Kastorと Pollux はあっさり槍を手放した。
「……な!」
同時に左掌を Pleiades の肩へ左右それぞれ当てた。
「はぁぁぁぁ!」
衝撃波 だ。 Pleiades は回転して投げ出された。
「親衛隊の双壁、甘く見るなよ!」
地に伏した Pleiades へ、2機は同時に宙へ跳んで襲いかかった。
『動け、涼介!』
リュオスの呼び掛けに、しかし涼介の反応がない。
いくら機甲体とはいえ、必殺の衝撃波をまともに受けて無事でいられる訳がない。
「くぅ……」
Kastor と Pollux が宙よりスラスターを噴かして降下。
「えやぁぁぁぁ!」
加速した蹴りが Pleiades にまともに極まる。
「ぐはっ!」
装甲の一部を破損し、壁へめり込んだ。
『リュオス、やるしかない!』
オルディアだ。
『最後の封印を解く!』
Kastorと Pollux は右掌を向け、気を集中した。
『しかし、涼介のこころが保つのか !? 』
「いいよ……オルディア、頼む」
涼介は血を吐きつつ、壁より抜けた。
『よし……。いざとなれば、私が抑える。リュオス、デスデモーナ、サポートしてくれ』
涼介の、 Pleiades の胸に、一際強く青い光が輝いた。
「無駄なあがきか!」
2機の掌に、最大のエネルギーが充填された。
「消え去れ !! 」
二条の巨大な光弾は Pleiades へ放たれた。
「くぅおぉぉぉぉぉぉ !! 」
二つの巨大なエネルギーは確実に Pleiades を呑み込み、その余波で空と地を鳴動させた。
「……やったか」
エネルギーの大量放出に、 Kastorと Pollux は肩で息を吐く。
膨大な熱量により、空気が揺らいで確認が出来なかった。
と、揺らめきの中に、赤い光点が二つ……。それが、青い光の旋風によって姿が露となった。
「 Pleiades !」
しかし、そこに岐立する機甲体は、明らかに気配が違う。
目は赤く光り、破損した筈の装甲が既に修復され、確実に一回り大きくなっていた。そして……淡い光が全身を包み、その身を護っているようでもあった。
「最終形態……同調を強めやがった」
「構わん。ゆくぞ Pollux !」
2機は同時に飛びかかる。
しかし Pleiades は2機の腕を難無く捕え……無造作に捻り上げた。
「ぐぁぁぁ!」
装甲を施した腕が、あらぬ方向へと折れ曲がる。
……ば、化け物か!
敵わない。
恐怖心が心を縛る。
「 Pollux !」
頷き合い、逃げ出した。 「待て、 Kastor、 Pollux !」
Pleiades は拳を合わせ、前に突き出した。すると肘より放熱フィンが展開、全身の光が拳に向けて収束した。
「うぉぉぉぉぉぉぉ !! 」
涼介が絶叫した。
スラスターで加速。逃げ出す Kastor と Pollux を一瞬で追い越した。
「く、お……」
その拳が、 Kastorと Pollux の心臓を貫いていた。




