ウォルフの7人
- 朝霞駐屯地 -
「げほっ、げほっ!」
涼介は数度咳き込み、粘り付くような血をコンクリの床に吐き捨てた。
「しぶとい!なぜ機甲体にならん!」
椅子に張り付けられた涼介は怯えるような目で渡瀬を見上げた。
「し、知らないよ。いい加減にしてよ……」
殴り疲れた渡瀬は背を向けた。
「電流を流せ。殺すつもりでな」
涼介の顏が青冷めた。
「ぐぁぁぁぁ!」
本来なら即死する程の電流だ。しかし、苦しみに悲鳴を上げる涼介の生命反応は衰えない。
渡瀬の背筋をうそ寒い物が伝った。
……本当に地球人ではないのか?
不意に変電機がショート。涼介の心臓に七つの光が浮いた。
『……無駄なことを』
「誰だ !? 」
これは音ではない。頭の中に直接語りかけていた。
『私はリュオス。ウォルフ星の戦士。今は涼介と命を共にする』
『私はクレシダ』
『私はソンフォ』
『私はオルディア』
『私はガイアス』
『私はイィリエ』
『私はゼブリア』
七つの声に、渡瀬の頭は混乱と頭痛に襲われた。
……奴は宇宙人の巣か !! いや、こいつはやはり地球人じゃない !!
『それは違う』
心を読まれた。
『涼介を地球人として存在させる為に、我等7人の仲間が命を共にした』
「……なんだって」
秘密に近付いた。
渡瀬は恍惚と笑みを浮かべた。
「良かった!リュオス、だったか。教えてくれ、機甲体の強さの秘密を !! 」
急き立てる渡瀬を、涼介の精気の失せた双眸が射すくめた。
これは……涼介ではない。
『アカギはどうした。貴様は奴に比べて愚かだ。話にならん』
……くぅ。
腹より込み上げた怒りを押さえ込む。
「済まないが、今の責任者は私だ」
『そうか……。装甲は修復中だ。今はまだ発動出来ない』
「しゅ、修復するのか。素晴らしい!この地球を守る為、その力が欲しいんだ」
『だから愚か。 Pavor に全て奪われるのが交換条件だぞ。AMで戦え。それ以外、方法はない』
次は隠さなかった。渡瀬は表情を歪めて舌を打つ。
「そのAMがまるで歯が立たないから!」
『泣き言か。涼介の持ち帰った Guardian を基に造った筈だ』
「ガーディアンだと?」
『成程。アカギに訊くんだな』
「貴様ぁ‼︎」
渡瀬は癇癪に任せて涼介 ( リュオス ) を殴りつけた。
『無駄なことを。この侵略者たる Pavor は、頑健な肉体に造り変える』
「どうすれば勝てるんだ!セルへの各国同時総攻撃のカウントダウンが始まってるってのに、奴ら、 Pavor の奴ら、衛星を全て破壊してしまったんだぞ !! 」
今にも悲鳴を上げそうな渡瀬に、リュオスは冷笑を投げ掛けた。
『ほぅ、 Pavor が本腰を入れたぞ。そんな時に地表のセルへ総攻撃など無駄な……』
「それはどういう……」
『貴様に語ることはもうない。涼介の父は戦士だった。そんな者の惑星に期待したが、私も愚かだった訳か』
「私をそこまで愚弄するかぁ !! 」
逆上極まれり。奇声を発する渡瀬は涼介を殴りつけた。
拳が割れ、血が飛沫し、3人の自衛官に止められるまで我を忘れ……。
『すまん、涼介。もう少し、もう少しだ……』




