Minx
頭上でVegaのスラスターが閃いた。
「今だ、早く!」
急降下する Vega を Minx が正面より迎え撃つ。
「頼みます!」
涼介は唇を噛み、 Rabbit をきつく抱いて離脱した。
「逃げんのか、 Pleiades !」
Minx は空中で Vega を捕まえた。
「野暮はいけないよ。あんたの相手はあたしさ」
「こ、この!」
Vega は足で Minx を突き放す。
「いいぜ、ガラクタから相手してやるよ」
「鏡見てから言えっての」
確かに外見は Vega の方が遥かにガラクタだ。
……でも、性能では。
恵美も自覚する所だ。
「 リミッター解除」
恵美の口にした命令に、 AI がしばし停止。
『 again mam 』
「うだうだ言ってんじゃないよ。さっさとリミッター解除、出し惜しみなんかして勝てる相手じゃないんだよ!」
各関節部超伝導モーターのリミッター。これを解除すれば確かに速度とパワーは倍増する。しかし……。
『 yes mam 』
ビルとビルに挟まれた宙空に向かい合い、恵美は大きく口を綻ばせた。
「最高に楽しむよ」
2機が激突した。
「ぃやぁぁぁぁ !! 」
Minx の回し蹴りと Vega の右ストレートがそれぞれを弾き飛ばした。
「くぅっ!」
スラスターを全開にするが、ビルへ突っ込んだ。
「ったぁぁ。以前ならこれでおしゃかだね」
起き上がり、再び飛び出した。
すると、先にビルより抜け出た Vega が右掌を構えていた。あの光弾だ。
「ちぃっ!」
「はぁぁぁぁ !! 」
Minx はビルの縁に手を掛け上昇。直下を光芒が駆け抜けた。
『 caution 』
掠っただけで表面温度が瞬間的に 1000 ℃を超えた。
「にゃろぉ!」
Vega がぴたりと追う。 Minx は壁を蹴り付け Vega へ飛び付いた。
「付いてくんな !! 」
しかし、 Vega はそれをあっさり躱す。
Minx はビルに飛び付きターン……と、 Vega が目の前に。
「せあぁぁぁ !! 」
Vega が殴り、蹴る。左腕を欠いたハンデなど感じさせなかった。
しかし、 Minx もそれを全て躱す。
モーターが唸り、焦げた臭いがAM内に充満する。
それでも……足りない !!
「もっと……もっと早く !! 」
……躱すだけじゃ勝てないんだよ !!
意を決して Minx は降下。それを Vega が追う。
「見せてあげるよ、戦いってもんを!」
着地した Minx の頭部を狙い、 Vega が突っ込んだ。が、
「消えた !? 」
高速移動による衝撃波が Vega を攪乱。
背後に Minx の両目が光る。
「ぃやぁぁぁぁぁ !! 」
回転を加えた Minx の踵が Vega を吹き飛ばす。
更に追う。
続けて両拳の連撃を Vega へ叩き込む。その速度、既に恵美にも自分の腕が見えていない。
まだ、まだ止まらない。
「ぅあぁぁぁぁぁぁ !! 」
地面に Vega を叩き付けた。彼女の口より出たのは、もはや悲鳴であった。
『 DANGER 』
「起き、上がるんじゃ、ないわよ……」
折れた。
腕が折れ、腸骨が折れ、肋骨も折れて、肺に刺さっていた。
高速化したAMの機動に、彼女の関節が付いていけなかったのだ。
『 medical system …… Error 』
痛みに口が歪む。その口端を気泡状の血が伝う。
その恵美の口許が痛々しくも笑った。
「いーこと、教えて、あげる……いらない、システムは、ね……出撃前に、切っておくものよ……シン」
荒い息の向こうで、 Vega が立ち上がる。
……まったく。
「香織、涼介……後は、頼んだよ」
Vega の装甲はもはや見る影もない。しかし、自分がAMに生かされているだけなのも事実だ。
「緑の兄さん、あんた、最っ高よ……」
恵美は涼介が剣で貫いた亀裂に集中した。
「お前もな……」
Vega も残ったエネルギーをかき集め、集中した。
……行くよ !!
「ぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ !! 」
スラスターで加速。
喉を逆流する血を吐き出しつつ、ただ伸ばした腕を Vega の亀裂へ。
「ぐ、はぁ……」
Minx の腕がVegaの心臓を貫通した。
しかし、 Vega も覚悟の上。最後の力で右掌の砲口を Minx に。
「はぁぁぁぁぁぁ !! 」
視界が光に包まれた。
爆発が、地を揺るがした。
爆発の光球は三宅坂付近を消滅させた。
さて……この回。
これを夢で見て、作品に仕立て上げようと思いました。
ここに持ってくる為には何が必要で、これを終わらせるにはどんな結末が必要か。
骨組みと肉付け。
自分としては、大切な部分の1つとなります。




