脱出
慌てふためく涼介の声に、 Minx は下に降り立った。
「あんた……装甲ボロボロじゃない」
無数に亀裂の入る Pleiades の装甲は、今にも全て崩れ落ちそうだった。
「俺なんかいいよ!それより香織が……」
Minx は手首より端末のラインを引き出し、 Rabbit の首筋に繋いだ。
「 アクセ…… into Rabbit 」
『 yes mam 』
香織のメディカル データが Minx に転送された。
恵美は息を吐く。
「大丈夫、生きてる。 Rabbit のシステムで応急処置してるけど……でも急ぎたいわね」
そして Pleiades に視線を上げた。
「ここの動力部みたいな所に爆薬仕掛けたのよ」
不意を突かれた涼介はしばし思考を停止した。
「……動力部に?」
「そう。ここの内部強度は?」
「ないですよ殆んど。内側からは弱いんです」
「なら急いだ方がいいわね。3分以内に爆発するわ」
Pleiades は Rabbit を置いて壁に右手を当てた。
「壁を飛ばします」
……いけるか?
Syleus との戦いで力の残りが僅かだ。
……それでも!
「はぁぁぁぁ !! 」
永田町クレーターの地中より、蒼い光芒が空へ駆け抜けた。
「うっひょぉ、迫力ね」
Minx は Rabbit を抱え上げた。
「涼介くん、一人で行ける?」
大量にエネルギーを消費した Pleiades は、膝を付いて呼吸を整える。
「はい……なんとか」
地上へ向けて開いた坑道。 Minx はフィンを展開し、先行した。
「あんたも早く!」
立ち上がり、スラスターを噴かして後を追う。
……光が。
3機は地上へ飛び出した。
「なるべく離れて!」
速度を上げて、クレーターより離脱。ビルの陰へ逃げ込んだ。
すると……第二の太陽が地上で発光し、次いで轟音と衝撃波が千代田区を蹂躙した。
「どれだけの爆薬だよ……」
あまりの爆発に閉口する涼介。ふと、心臓にあの感覚が。
機甲体が近い。
……誰だ。
「恵美さんは香織を……」
最後まで言わさず、緑色をした影が飛び込み Pleiades を地面に叩き落とした。
「くはっ!」
落下の衝撃で息が詰まる。
装甲が装甲の役目を果たしていない。
……奴は。
「 Pleiades 、勝ち逃げは良くないなぁ」
「ベ……ガ」
涼介は目を疑った。
「……生きていたのか」
上空より見下ろすは、確かに Vega 。胸部と頭部の装甲に亀裂があり、左腕がない。しかし、確実にエネルギーは Pleiades より回復していた。
「お前は死にそうじゃねぇか。とどめが必要だな」
……動けるか?
すると、 Minx が降下
「まぁ無事なようね」
そして Rabbit を押し付けた。
「……な、何を」
「もう戦えないんだろ。あたしがやるよ。あんたは香織を連れて邂逅地点、渋谷駅前に行きな」
「そんな……無茶だ」
「なめんじゃないよ!あたしはこれで飯食ってんだ。機甲体っても、あんな死に損ないにやられやしないよ」
「でも……」
すると、 Pleiades の肩に手を置いた。
「頼んだよ。香織はあたしの妹みたいなもんだ。あんたになら任せられる。死なすんじゃないよ」
既に意識のない香織から、微かな呻きが聞こえた。
「いいかい、生き残るんだよ」
涼介は頷いた。




