弐の型、閃電
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-GDS 集中発令所 -
「映像、回復します !! 」
上空 800m の高みより撮影された Pixy の映像に、赤城たちは愕然とした。
「こ、これは……」
東京の中心部、新宿が地形を変えていた。
あの巨大な光芒が駆け抜けた後、深淵な爪痕はビル群をも消失させた。
「一体……何が起きたんだ」
- 神宮外苑 -
……はぁぁぁ。
大量のエネルギー放出を、呼気を以って調節。
「やるねぇ、 Pleiades 」
Vega の声。未だ陽炎に霞む破孔に、黒い影が揺らめいた。
……直撃を避けたか!
Pleiadesはフィン展開、スラスター全開。
「ぃやぁぁぁ!」
体ごと影に飛び込み、右拳を叩き込む。が、Vegaの影を突き抜けた。
「しまった!」
陽炎のホログラフだ。
「でぁぁ !! 」
左の死角より蹴りが飛ぶ。
『見るな、感じろ!』
リュオス!
涼介は咄嗟に身を沈め、蹴りを躱す。
……見えた!
Vega の本体を捉えた。大きく踏み込み、
「うぅおぉぉ !! 」
懐へ肘打ち。
耳朶をつんざく金属音が辺りを疾る。肘と肘との衝突。その衝撃波が地に孔を穿ち、二人を弾き飛ばした。
「は、はははは!」
不意に笑い出す Vega 。
Pleiades が色めき立った。
「なにがおかしい!」
「いや、楽しいのさ」
電磁フィールド全開。
熱と衝撃波。このAMでなければ今頃消し炭だ。
「ひょえ~。恵ねぇ無事ですか?」
耐光フィルターを入れたセンサーが未だ戻らない。
「あんたに言われたかないよ」
「俺の上からどけよ」
シンも無事なようだ。
「まだやる気?次元が違うよ、あれは……」
二人が交錯する度に耳を貫く金属音、そして衝撃波。
「……涼ちゃん」
「三味線弾くなよ!もっと本気で来い !! 」
Pleiades は足を払われ転倒。左掌が迫る。
「……くっ」
スラスターを噴かして移動。
Vega の掌は大地をえぐる。
「楽しい、楽しいよなぁ!」
涼介は奥歯を噛み締めた。
「殺し合うことがそんなに楽しいのかよ!」
「あぁ楽しい。心が振るえる」
Vega は Pleiades が体勢を整える隙を与えず、踵を顔面に。
「くそ!」
左掌をかざし、足へ衝撃波を放つ。踵と掌、辛うじて力が相殺された。
「お前も 15 年前、心が躍ったろう!」
「違う!」
Pleiades の拳が Vega の頭部を捉え、亀裂が走る。
が、退かない。
Vega はそのまま Pleiades の腕を捕る。
「嘘だな。あん時ぁこんな腐抜けたパンチじゃぁなかったぜ。一撃で機能が停止しやがった」
Vega の拳が腹を打つ。
「ぐふっ……」
辛うじて装甲に傷はない。
「つまんねぇことにこだわりやがって。まだ地球人のつもりか」
「悪いかぁ !! 」
Pleiades が頭突きを放つ。 Vega は正面から受けた。
「悪い!いや、不快だ邪魔だ愚かだ !! 」
角を付き合わせて睨み合う。
「俺の前で執着するのが不快だ !! くだらねぇ人間の味方をするのが愚かだ !! 」
「 Pavor に呑み込まれた奴に言われる筋合いはない !! 」
「 Wolf の戦士に支えられた命だろうが !! 」
胸が疼く。心臓が光を放ち、腹の底より怒りが込み上げた。
「それに、兄貴はどうだ。一人にする気か、また殺そうとするのか!」
涙が、涙が溢れ出た。
「知ったふうなことを言うなぁ !! 」
「てめぇは甘いんだよ !! 」
Vega の左掌が Pleiades の胸に。
「悪いかぁぁぁぁ !! 」
衝撃波で吹き飛ばされた。
「ぅおぁぁぁぁぁ!」
耳を貫く慟哭。
Vega の衝撃波が貫通した筈の胸に、七つの光が一際虹彩を放っていた。
「涼ちゃん!」
……これは!
香織には覚えがあった。この感覚は昨夜……。
Vega はこの威圧感に歓喜した。
「これだ、これだよ Pleiades !あの時の迫力はこれだ !! 」
15 年振りの獲物を前に、 Vega はスラスターを全開。
……今度は殺る!
Pleiades の飛ばされたそこには……突き立つ長剣を引き抜き構えた。
「……蒼流剣」
あの野獣の如き吠吼をした Pleiades はもういない。
明鏡止水……波一つない水面に涼介の心が立つ。
……弐の型、閃電。
「 Pleiades 、覚悟ぉぉぉぉ!」
「ぇやぁぁぁ !! 」
二人が交錯。
宙に緑の腕が舞った。陽光の反射を受けて、回転しつつ閃いた。
Vega の左腕だ。
「な、に……」
素早く振り向いた Pleiades は、Vega の背に鋭く剣尖を平突きに……貫通。
「ぐ、はぁ……」
Vega は機能を停止し、その場に膝から崩折れた。




