遠慮はしない!
- 神宮外苑 -
「俺たちは何をしちまったんだ……?」
呆然と立ち尽くす Elephant の目に、かつての同僚の遺体が痛かった。
「地球を……守ったんだろ」
シンの皮肉にレイが殺気立つ。
と、それぞれのセンサーに反応。
……上!
恵美が早かった。 Minx は反射的にレールキャノンを振り上げる。
「 Fire!! 」
宙空に伸びた蒼い光芒が、緑の機体を直撃した。
衝撃波で傾いていたビルが倒壊。付近を粉塵が包み込む。
「やったか !? 」
しかし、四人は一瞬姿を捉えた緑の機体に、異常な戦慄を覚えた。
今までの奴とは違う。
白く煙る向こうで、緑の光点が二つ、獲物を見つめていた。
『 king だ。 tomcat 、おいシン、戻れ、お前は帰投しろ !お前の身体、言わば仮止めみたいなもんだろ‼︎』
猛獣に目を付けられたシンは視線を外せない。
「あらららら、バレた?」
『ふざけるな!激痛で動けん筈だぞ !! 』
「いやいやいや……」
Tomcat の Medical system は戦闘活動に『 caution 』を表示。事実、シンの額には脂汗が浮いていた。
「あの痛み止は結構効いたみたいだぜ」
「あんた、機内でやってたの……」
『嘘吐くな! system のデータは……』
通信途絶。
「それに、帰投してる場合じゃないっしょ」
-GDS 集中発令所 -
「通信途絶!強力な ECM です!」
「くそ! Wyvern から命令させるんだ!」
「その Wyvern との通信も途絶しました!」
- 神宮外苑 -
緑の光点がゆらり、と揺れた……刹那、
「うぇあぁぁぁぁ!」
「 フライモード!」
Minx の手元で爆発。それより早く彼女はスラスターで後方に待避していた。
「こいつぁ厄介だからな」
緑の機甲体がレールキャノンを破壊した。
「真打ち登場ってとこかしら?」
分厚い緑の装甲に亀裂が見て取れた。レールキャノンの直撃だろう。
「出来立ての蛹体とは違うぜ。俺は Vega 。覚悟はいいな」
「貴様こそな!」
その Vega の背後より Elephant がハンマーを振り下ろす。
しかし、
「いい覚悟だ」
その分厚い装甲の巨躯に似合わず素早く躱す。そして左手をひたりと Elephant の胸へ。
「離れろ!」
シンが叫ぶ。あの衝撃の前に装甲は無力だ。
「死ね!」
Eridanus の物とは比較にならぬ衝撃がAMの装甲ごと吹き飛ばした。
「レぇぇぇぇぇイ !! 」
鮮血が舞う。
「 On doun 」
「きさまぁ!」
アドレナリンが脳を満たす。シンは既に体の痛みを忘れていた。
「うぉぉぉぉ !! 」
Tomcat が銃を連射。しかし、 Vega の出した杖の一振りで弾丸消失。
『 empty 』
スライドがバックの位置で固定。弾切れだ。
「 Shit!! 」
「ぬん!」
大振りで襲う Vega の杖を、 Tomcat は左腕で受け止めた。衝撃は……電磁フィールドの干渉により軽減。
「 Tool set 、 Knife !」
右手に送られたナイフを杖に振り下ろす。すると手応えもなく両断した。
「やるな!」
続いて水平に斬り付けた Tomcat の手を、 Vega は片手で押さえた。しかし、
「ぅうおぉぉぉぉ !! 」
シンの叫びに呼応し、モーターが更に力を放出。
「くぅぅぅ……」
機甲体が力で圧され始めた。
……いける!
シンは、そして恵美でさえ一瞬希望を見た……が、
『 caution 』
Tomcat のディスプレイに警告が。モーターの力に装甲が負け、腕が歪み始めた。
右は、まだ完治していない腕……
『 DANGER!Medical systemready……』
「必要ない!痛みもなぁぁぁい !! 」
シンの苦痛を伴う叫びを無視し、右肘及び肩モーター停止。
「 Tow doun 」
目の前で Vega の右掌砲口が視界を覆う。
「シン避けて !! 」
……遅い。
と、不意に Vega は空を仰ぎ見た。
「ベガぁぁぁぁぁ !! 」
「来たか、 Pleiades!! 」
後方に一転下がった Vega の目の前に、片刃の長剣……蒼い刀が突き立った。
「また邪魔をする気か!」
スラスターより蒼い炎を噴射し、白地に赤ラインの機甲体、 Pleiades が着地した。
「直哉……」
Pleiades ……いや、涼介の呼び掛けに、 Vega は舌を鳴らした。
「その名で呼ぶな。俺もお前も Pavor の戦士……」
「違う!俺は……」
「……そうだな」
Vega がスラスターで加速。
「裏切り者だったな !! 」
繰り出された右拳を、 Pleiades は受け止めた……が、背後に立つ Tomcat ごと吹き飛ばされた。
「不完全だった Eridanus とは格が違うぜ!」
「くそ!」
立ち上がる Pleiades を、 Tomcat が引き留めた。
「下がれ涼介。俺が」
「あんたこそ下がれ!」
「なに !? 」
「 Wolf guardian( ウォルフ・ガーディアン ) のレプリカで倒せるかよ !! 」
Pleiades は Tomcat を突き飛ばす。
「この !! 」
そこに、白い影が舞い降りた。
純白のAM、 Rabbit 。
「やめて下さい」
香織はかいなを広げ、シンを制止した。
「涼ちゃんに頼るしかないんです!」
「香織、お前……」
目の前に立ち塞がる Rabbit に、シンは怒りを覚えた。
「レイがやられたんだぜ!」
「でも私たちじゃ無理です!」
「それでもやるんだよ……どけ !! 」
左拳で殴りかかる Tomcat 。
「ぇやぁぁぁ!」
Rabbit は柔らかく躱し、腕を捕って投げを打つ。
「ぐっ……」
地面に叩き付けられた Tomcat の背中に膝乗りし、逆関節で封じ込む。
「恵ねぇ、スイッチ!」
呆気に取られていた恵美が、足掻き暴れる Tomcat の背中に張り付いた。
「シン、あんたは休んでな」
緊急停止ボタン。シンのAMは僅かな機能を残して停止。機械の拘束具となった。
「涼ちゃん、お願い!」
Vega が嘲笑。
「茶番はもういいか?」
「……もういい」
Pleiades は拳を固めた。
「友達だったお前はもういないんだ」
「何を今更」
「だからもう……遠慮はしない!」
Pleiades のかざした右掌より、巨大な光弾が放射。一直線に信濃町から四谷、榎町までえぐられた。




