現実
圧倒的だった。
9体残っていた機甲体は全機沈黙。恵美たちの被害はほぼ無きに等しかった。
正直言えば、手応えがなさすぎだ。
「昨日の奴とは格が違うのか……」
シンの呟きをイェンが笑う。
「そんなんじゃ昨日の言い訳に聞こえるよ」
『いや、実際そうかもしれん』
phantom だ。
『映像で比較すると……例えるなら、昨日の奴は防弾チョッキを着ていたが、今の奴らはまるで下着姿だ』
……確に。
四人は同じ感想を持った。
『 Elephant 、もう一度映像を送れ』
「りょーかい」
踵を返したレイが、思わず呻きを漏らした。
-GDS 集中発令所 -
Wyvern を経由して送られた映像に、室内が沈黙した。
もう動くことのない遺体は、既に装甲が消失していた。
どう見ても人間のそれ……いや、そんな大くくりな枠など吹き飛ぶ現実が目の前にあった。よもや、そこに知るべの顏を見ることになろうとは。
「……お、近江」
赤城の口よりやっと出た言葉がそれだった。
「どういうことなんだ!」
沈黙を破る赤城の叫び。
「やはり……奴らは我々人間を兵士としていたのか」
やけに冷たく見解を口にした藤岡に赤城は詰め寄った。
「じゃぁ我々は、敵の本体に行き着くまで仲間同士、潰し合わにゃないかんのですか!」
「そうならない為に……」
「ために?」
「長官!呼び出しです!」
一触即発の二人を オペレーターが引き止めた。
「そちらに回します」
息荒くモニターに向かうと、それは医局部長の小林だった。
『長官、すぐに呼び戻してください!』
「……え?」
意味が分からない。
『シン・オルコックですよ!彼の骨はまだ完全じゃない、戦える体じゃないんですよ !! 』
-Wyvern-
「なんだって !? 」
寝耳に水。東郷は思わず聞き返した。
『とにかく呼び戻せ……』
……丁度いい。近江を現場で確認出来る。
「では、自分が出……」
『いやいい。直接話す。 tomcat と中継しろ!』
……まさかあれは。
横で聞いていた香織は、シンの注射を思い出した。 と、隣で涼介が蹲る。
「涼ちゃん、どう……」
言葉が続かない。涼介の胸に、光の球が浮き出ていた。
「この感覚……お前は……」
呻きに似た涼介の声。胸の……いや、心臓の光を取り巻くように、七つの光が回転した。
「ねぇ、涼ちゃん……」
香織の言葉は耳に入らない。
「お前は Vega !」
不意に席を立ち、搭乗口を……解放。
「な、何をしてる!」
気圧差で機内の空気は嵐のように吹き荒れた。
「やらせるかよ!」
「待って!」
香織の止める間もなく空へ飛び出した。
「 ベガぁぁぁぁぁ!! 」
「涼ちゃん!」
空中で光に包まれた涼介を確認し、香織はカーゴエリアへ駆け出した。
「あたしも出ます!」
「なに !? 」
東郷が振り返ると、既に香織は消えていた。
「 セット AM !! 」




