地球の友
- 月面 -
地球を半径約 38 万 Km の軌道で公転する衛星、月。
その月面にニール・アームストロングが俳徊してより幾代も世代を重ね、居住を可能とするに至った。
その 1/6 の重力と真空の中、人類の生活を可能にした Biosphere( バイオスフィア ) 。
広大な区画を密閉し、自然界の生物的循環を再現したそこが……環境破壊されていた。
「まったく、手応えねぇなぁ」
ツェルコフスキー・クレーターに建設された、同名の基地。エアロックが破られ、各所黒煙を上げていた。筋を作るそのガスに、密閉の崩壊が知れた。
「気を抜くな。 Eridanus の反応は消えたんだぞ」
漆黒のボディをした機体が振り向いた。その手には、血の滴る心臓が……。
「 Castor( カストル ) よぉ、ここは心配ねぇぜ。それに、 Eridanus は同調不足だった。ありゃ出来損ないだ」
「言い訳だ。俺は兎を狩るにも手を抜かん」
「まぁいい。こいつら処理しちまおう」
足元に倒れ臥す地球人たち。
二人の向こうにはあの、銀のオブジェが岐立していた。
- 永田町 -
「自分たちの避難はまだなのか?」
周辺地域の要人、民間人の避難は既に終え、今は消防と警察が被害区域を警備していた。
ただ、彼らも人の子だ。暗天に一つ、朧に輝く月光の下、不安に苛まれていた。警視庁の新米巡査が、クレーターを背中に相棒へ泣き言を洩らしたとて無理からぬこと。
と、胸元の通信機に入電。
「はいこちら吉川」
それは、雑音から始まった。
『……げろ……にげ、ろ!奴ら……』
「どうした、おい!」
応答を待つ二人の前に、月光を浴びて反射する姿が現れた。
「まったく、 Vega( ヴェガ ) は仕事が荒い」
「誰だ!」
銀色をした機体……。
「言葉に気を付けろ」
この姿、 Fang を倒した…… Syleus 。
「私はお前たちの主人だ」
-GDS 居住区 -
「やめろ Syleus !」
個室のベッドより悲鳴にも似た声が甲走る。
涼介だ。
目は覚めていない。
その胸、心臓に昂然と光が輝いた。それを守るように集う、七つの光。
「ぅおぉぉぉぉぉぉ !! 」
memory third
15yea's ago in orbitalbase (15年前、衛星軌道基地)
- 地球衛星軌道上 -
囲まれた。
この2ヶ月で得た機械の鎧は、涼介にあらゆる力と情報をもたらした。
しかし、頭の中が……。
『プレアデス、急ぐんだ!』
ウォルフ星系の……地球の発音でリュオス。彼の言葉は直接涼介の頭に鳴り響く。
『ここまでやって、お前が死んでは意味がない!』
心臓の鼓動が熱く、そして苦しい。
一度は父に移植されたこの……。
「でも、シリウスが!」
……シリウス?
違う。
『彼は諦めろ!』
「いやだ、だってもう……」
『私の星の二の舞になりたいのか!それに、お前は希望なのだ !! 』
隔壁の一部が爆発し、軌道基地が大きく鳴動した。
『成功だ。切り離した。後は、逃げるだけだ』
しかし、涼介は動けない。
「いやだよ……。なんで僕だけが……」
リュオスは無言で隔壁を開けた。
接舷するのは、ウォルフ星人の巡洋艦だ。
『お前はまだ不安定だ。すぐコールド・スリープに入れ』
涼介は涙を流して首を振る。
『行け。行くんだ。一人じゃない。ソンフォもイィリエも、みんなお前と居る。私もすぐに……いく』
リュオスは涼介を中へ押し込み、隔壁閉鎖。自動で射出シークエンスへ。
『さらばだ、地球の友よ !! 』
パウォルの軌道基地は爆発、消滅した。




