侵略開始
『 system Rabbit …… ready 』
「 チェック、東洋方面遊撃隊、赤城香織」
『 OK …… systemopen< 』
ディスプレイが一斉に蘇り、機内は光に満ちる。
……大丈夫!
「 フライ モード 」
純白のAM、 Rabbit のスラスターより飛翔フィンが展開。香織は小さく自分に呟いた。
「 Let's dive 」
金の羽を広げた妖精が、屋上より身を投げ出した。
『 minx だ。奴の装甲はハンパじゃないよ。関節部を狙いな』
恵美からだ。妹を思うようなその言葉に、香織は微笑した。
「はい、なんとかやってみます」
やはり、なんとか……なのだろう。微笑む口端も、引き攣っていることが自覚出来るほど強がりだ。校庭にふわりと着地した香織は、正面より言い知れぬ圧力を感じた。
「へ、また新しいガラクタか」
香織の負けん気だけは恵美譲りだ。
「新しいのはガラクタって言いませんよ」
「屁理屈かよ。その声はあの小娘か」
暗視センサーの捉える Eridanus は、胸部に凹みは見えるが基本的に……無傷。
特注したテフロン加工の 105mm 徹甲弾をしてこれだ。
……技術部の人たち泣くかしら。
「子供扱いして馬鹿にしてると、痛い目見ますよ」
Eridanus は鼻先で一蹴。
「やってみろよ」
「 ツールセット、 ソード‼︎ 」
弐尺壱寸と常寸よりも僅かに短い刀身。 Rabbit は腰に装着された刀の鞘を払う。
「ご丁寧に3機目が Pleiades と同型かい」
Rabbit が加速。
「ぃヤァァァァ !! 」
Eridanus の胸部装甲、凹みへ平突き。ぎぃん、と金属の衝撃音が甲走る。
「……く」
が、やはり無傷。
「健気に可愛いねぇ」
懐で固まる Rabbit へ Eridanus は肘を放つ。
しかし rabbit は刀を返し、身の楯に。 Eridanus の肘が刀身を滑って火花が散った。
「はぁぁぁぁ !! 」
そのまま渾身の力を込めて、刀を首筋に叩き込む。
……これで!
Eridanus の左目が光を消した。と同時、刀が砕け散る。
「おのれ!」
Eridanus の右拳が迫る。
香織は反射的に上、 Eridanus の頭上に転じて背面へ。
「 ツール セット、ガン‼︎」
初速マッハ7の銃弾をEridanusの後背至近より左肘に連射。衝撃波に双方吹き飛ばされた。
「どうよ !! 」
勝ち誇る香織に、抗議のメッセージが。
『 caution 』
両肘関節部停止。
「やば……」
しかも、センサーの捉える Eridanus は、左を動かせないながらも立ち上がっていた。
その時……
うぉぉぉぉぉぉぉ !!
叫び……慟哭……何にしても、怒りと悲しみがないまぜになったような声が響き渡った。
「……まさか!」
不遜であった Eridanus に、明らかな怯えの色が浮いた。
……この声は。
「涼ちゃん?」
香織は思わず屋上を振り仰ぐ。
光球が……医務室で見たあの光球が。それがふわり、と校庭に落下。その中心には人影があった。
「 Pleiades ……覚醒するのか!」
Eridanus は着地点に向けて、光弾発射。
涼介が右手を払うと、光弾が消滅。
「ちぃぃぃ !! 」
「うぉぉぉぉぉ !! 」
涼介の周囲を覆っていた光が収束し、胸に。それが7つに分裂し、体を覆う。
「ちょっと……まさか」
呆然とその光景に目を奪われる香織。
光の向こうに現れたのは、まさしくAM。白地に赤ストライプのAM。いや、 Eridanus のような、と言った方がいいだろう。
「プレアデスー !! 」
スラスター全開。拳を固めて襲い掛る Eridanus は、その闘気よりも、恐怖に突き動かされる弱者のようにも見えた。
「ふん!」
涼介、いや、 Pleiades は Eridanus の拳を冷然と受け止めた。
「ぐ、ぐぉぉぉ!」
Eridanus のスラスターが一段と炎を上げる。が、びくとも動かない。
Pleiades は更にEridanusの左肩を掴み、
「おぉぉぉおお !! 」
頭突き、頭突き、頭突き !!
Eridanus の頭部が閃光を放って損壊。
「く、くそったれぇぇぇ!」
Eridanusは意地を以って Pleiades の腕より抜けた。直後、
「でぇやぁぁぁぁぁ !! 」
地を揺るがす踏み込みと同時、 Pleiades の右拳が Eridanus の胸部装甲をえぐる。
吹き飛ばされた Eridanus の胸には、生身の肉体が露出していた。
「ひ、ひぃぃ!ゆ、許せ、頼む、もう……」
「聞こえない……」
涼介の声が……涙に濡れているような……。
「お前たちの声は聞こえない……。許すなんて、出来る訳ないよ……」
腕を一振り、刀が現れた。
「故郷に還れ !! 」
Eridanus を両断。
爆発した。
爆発による光芒は夜空の成層圏を貫き、半径 500m 内の建造物がその衝撃波で崩壊した。
6
- 同刻 GDS 本部 -
丹沢山中に構える GDS 本部の地下 50m 。集中発令所は異様な沈黙に包まれていた。
『 Wyvern だ、誰か返事しろ!』
しかし、 GDS 長官赤城秀三だけでなく、 15 名からなるオペレーション・スタッフがその言葉を聞いてはいなかった。
大根大学八王子校舎爆発の報とほぼ同時、各国支部より悲鳴にも似た現状が次々と報告されていた。
「これは……」
……狙われている。
赤城の脳裏をあの光景が貫いた。
15年前、異星人の船内で見たあの言葉……。
……これが、そうなのか!
北半球における人口密集都市。そこに、正確に隕石らしき物体が次々に落下、都市機能を半壊した。
それは、日本の東京でさえ例外ではなかった。
「侵略が……始まった」
プレアデス 第1章 「邂逅」 終
To be continue ……




