One chance
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見上げても、屋上を照らす光芒と夜空のみ。噴射音は聞こえども、姿が見えなかった。
「遅いですよ!早くAM降ろしてください !! 」
『ちょい待ち、急かすなよ』
天が揺らいだ。するとそこに、翼を広げた大型の V-TOL( 垂直離着陸機 ) の姿が現れた。
ステルス モード( 光学迷彩 ) を解除した輸送機、 Wyvern( ワイバーン ) だ。
そのカーゴが開くと、人型の機械が ワイヤで釣られて降下開始した。
細身純白のAM、香織専用機 Rabbit( ラビット ) だ。
- 校庭 -
「こっのぉぉぉ!」
Tomcat の超伝導モーターが焦げた臭いをさせる。しかしナイフは Eridanus の装甲の前に無力だった。
その、シンの目は屋上に降下する Wyvern の姿を捉えていた。
……せめて香織が乗り込むまで。
「なるほど」
Eridanus が Tomcat の腕を掴む。
「屋上でこそこそしてやがるのは pleiades と小娘か」
……気付かれた!
「邪魔させねぇ !! 」
しかし、
「……ふん」
Eridanus が鼻で笑うと、掴まれた腕が押し戻され……
「ぐぁっ」
肘のモーターが爆発した。
『 DANGER!! 』
機体監視システムの右肘が真っ赤に染まる。
次いでメディカル システム 自動作動。右尺骨剥離骨折。
「…… Shit!! 右腕作動停止、固定。局所麻酔」
『 execution 』
直ちに右腕の機能停止、緩衝剤が充填された。
その隙に、 Eridanus は右掌をぴたりと屋上に据えていた。
掌に光が集う。今までとは明らかに違うエネルギー量だ。
「はぁぁぁぁぁ !! 」
発射。
「させるかよ!」
直後、シンが足を払う。
僅かに逸れた光弾は校舎と大地を両断。
「野郎!」
Eridanus は左掌を Tomcat の胸に当てた。すると、 Eridanus の肘より衝撃が疾り、
「がはっ!」
Tomcat の装甲を貫いた。
Tomcat 青い両目の光が点滅、その場に崩れ落ちた。
「く……まだだ」
シンの口端を血が伝う。
『 Life save system ready ……』
「ひ……必要ない!動け !! 」
しかし、倒れゆく視界の中で、フィンを展開して飛び立つ Eridanus がノイズ混じりに確認されるだけだった。
- 屋上 -
一瞬目の前がホワイトアウトした。
次いで轟音と激しい揺れが襲う。
「今度はなによ!」
目が暗順応し、暗い風景が像を結び始めた。
「……うそ」
言葉を失った。
向こうに続いていた校舎西側が崩壊し、粉塵を巻き上げていた。
「これもあいつが……?」
「香織クン、急げ!」
藤岡の声に振り返る。
Eridanus がスラスターの蒼炎を曳いて飛翔していた。
Rabbit は……今の砲撃でバランスを崩し、未だ宙空だ。
「早く!」
すると傍らに、感じ慣れた排気が。背後の景色が揺らぐ。
「あんたはさっさとAMに乗りな!」
胸部装甲を大きく破損させた、真っ赤なAM、 Minx 。
「恵ねぇ!」
「 Wyvern 、 105mm 迫撃砲落として。あいつには借りを返さなきゃならないんだ……早ぁく !! 」
砲身長 1.8m。戦車の主砲の如き迫撃砲が Wyvern より放り出された。
『テストで3発しか撃ってないんだ、どうなっても知らんぞ!』
「上等 !! 」
恵美は総重量 500kg の迫撃砲を受け取った。衝撃で屋上のコンクリに足がめりこんだ。
「 キャノン セット!」
Minx のツールボックスより同調ケーブルが伸び、迫撃砲と接続。ディスプレイにレティクルが走り、 Eridanus を捉えた。
「燃料なし、時間もなし。 One chance ってやつね」
恵美は腰を据え……
「 Fire!! 」
大気を振動させて 105mm 迫撃砲発射。
衝撃で Minx はフェンスにまで押し戻された。
爆音が響く。徹甲弾が Eridanus に直撃。白煙を曳いて校庭に墜落した。
「うっしゃ!」
ガッツポーズを入れると、 Minx が膝から崩れ落ちた。
「香織、あたしのは燃料切れ。後は任せたよ」
香織はブイサインを返す。
「任された!セット AM !! 」
屋上に起立するAM、 Rabbit が香織の声に反応して背面を解放、慣れた動作で搭乗した。




