六花
冒険、ファンタジーと来て……次はSF行きます。
趣味全開です。
そしてこの話、夢で見た一部分を最大活用して書き上げました。
睡眠障害も無駄にしたくない、というセコイ根性からですね。
国王陛下の遊撃隊では、魔法などの力はわざと使いませんでした。
今回は、ちょっと現実世界の力ではないものを使います。
今回も少々暑苦しいところもありますが、お付き合いいただけると嬉しく思います。
序章
鉛色の空。
頬を裂くような寒気の中、白い綿毛がふわり、ふわりと舞い落ちる。
……六花。
その結晶はそんな名で呼ばれていた。
雪だ。
真夜中の丹沢。半月前からの降雪により、丹沢はすっかり雪化粧を終えていた。
あの日の、災厄の日の爪痕を、優しく、そして清らかに白く包みこむ。
その雪の中……いや、雪の丹沢の最中、少女が一人空を見上げていた。
……今日も見えないよ。
本来ならば、この丹沢は月の光に照らされている筈だった。
しかし、雲に覆われた空の下、その恩恵に見放され、全き闇。周囲全てが黒く、僅かに白い六花のみが感じられるだけだった。
月があるならば、彼女の足許……巨大なパラボラアンテナの存在を知ることになるだろう。今はその全力を月に向ける、パラボラアンテナを……。
彼女は、ふと視線を裾野の方面へ向けた。
そこも、闇に覆われていた。
数ヵ月前までは、国道 246 号線と秦野の町灯りがうるさかったというのに……。
そう、全てが雪の下だ。
……もう、終わったのに。
ここからだ。始まりも、そして終りも……。
諦めて、少女はその場を後にした。