ある冒険者が見たギルド団長
お久しぶりです。
ある森林にて、3人の男女が魔物と対峙していた。
しかし、目に見えて戦況は悪かった。
闘い始めは互角の闘いを展開した。
彼らの持ち味は、魔法使いと狩人による遠距離からの攻撃を戦士が引き気味に2人を守りながら隙が有れば、一気に前に出て勝負を決めるという短期決戦を得意とする戦法であった。
だが、この魔物は戦士が前に出た瞬間に戦士を殴り飛ばし、遠距離攻撃を打つ2人を真っ先に倒しに向かった。
戦士が起き上がった時には、既に狩人は倒され魔法使いもHPが残りわずかであった。
◇
剣を捨て魔物の攻撃を防ぐのに手一杯の男は焦燥した様子で言葉を吐き捨てた。
「何でこんなメタルベアーがいるんだよぉ!」
魔法使いと狩人は既に倒されためセーブポイントに送還されていた。
◇
彼らと対峙していたメタルベアーはいわゆる“初心者キラー”と恐れられる魔物であった。
装甲が厚い為、物理攻撃を苦にしないタイプであり、なりたて戦士では剣が通らないということがざらではない。
そのような時には、有用と言われているのが魔法の存在だ。
メタルベアーは、魔法攻撃にはとても弱い、初心者チームに1人は魔法の使える者を入れておくというのはある意味チーム組みの掟であった。
だが、彼らが対峙しているのは変異種であり
魔法にある程度耐性があった。
普通であれば勝てる相手であったが、苦戦を強いられていた。
(チッ!…こいつ魔法が弱点じゃなかったのかよ?!2人やられちまったし、こりゃ負けたな…)
もう既に勝てないと踏んだ、戦士は一か八か木々を障害物にして逃げられ無いかと考えていた。
そんな時だった。
凄まじい爆発音と煙が戦士を襲った。
(なんだ?!新しい敵か?)
「やぁ!見知らぬ冒険者さん、手伝おうか?」
この緊迫した場面で場違いの呑気な声が聞こえた。
煙のせいで話しかけてきた相手がどんな姿か戦士には分からなかったが、藁にも縋る思いで助けを求めた。
「ああ!頼む助けてくれ!!」
◇
それからは一瞬であった。
また爆発音が聞こえると、もうメタルベアーの姿はなく、ドロップアイテムが落ちていた。
(すげぇ…あんなに苦戦したメタルベアーが一瞬で…)
間近で見ていた筈の戦士でさえも、何が起きたのか全ては分からなかった。
ただ、1人で何かしらの爆発系でメタルベアーを倒したということだけは理解した。
「いやぁー、危ないところだったね」
何事も無かったような声で話しかけてきた女に、戦士は見覚えがあった。
現状このゲーム『エブリーオンライン』において、トップの戦力を持つと言われているギルドの団長であると。
◇ ◇ ◇
この話にでる専門用語
ギルド
所属するとギルド対抗戦に参加できる。
また、戦闘を主にするギルドならばごく稀に与えるダメージが増えるなどギルドによって恩恵がある。
チーム
一緒に戦うことができる。
経験値を共有でき、レアアイテムを複数個入手しやすくなる。
ドロップアイテム
敵を倒した時に現れるアイテム。
S~Gのランク別に分けられる。
冒険者
プレイヤーまたは、それに似た存在を一括り表す。
狩人
基本的に弓を使ったスキルでの攻撃と、対魔物の罠を設置を得意とする。
魔法使い
魔法による遠距離攻撃、広範囲の魔法防御を得意とする。
戦士
様々なスタイルに変化することが出来る人気職。
メタルベアー
可愛い見た目とは裏腹に非常に凶暴。
鼻が優れているため、隠れていても見つけられやすい。
冒険者達の噂では、焼き魚を投げるとその方向にメタルベアーが行くらしい…?
1週間に1度ほど更新していきます。