人形の正体
「ん・・・」
「藤井君!大丈夫!?」
目が覚めるとそこは車の中だった。保志は周りを見渡す。運転席にはあの謎の男。上を見ると春川。どうやら膝枕されていたらしい。色々驚きの状況だが、先ほどの少女の攻撃でのダメージは大きいらしくリアクションを取るほどの余力は残っていなかった。そして同時にそれは先ほどまでの事象が夢では無かったという事を保志に改めて痛感させたのだった。
「目が覚めたようだな」
男が言う。
「貴方は・・・いったい?」
「ただの変な男と思ってくれればいい」
「それじゃ腑に落ちないけど・・・・まぁあんたの事はこの際どうでもいいよ。あの人形の事とかはあんた知ってるのか?あれは一体何なんだ?それといま何処に向かおうとしてるんだ?」
「そうだな。君も聞きたいことは沢山あるだろうけど、いきなり全部話すのも面倒だ。手始めに親睦も兼ねて軽い雑談でもしないか?幸い目的地までまだ距離がある。」
男はそう言って話し始める。
「君はUMAを信じてる?」
「信じてないですよ。そもそも俺らの世代じゃ流行ってなかったし」
「まぁそういうのを信じるのも信じないのも娯楽みたいなもんだし。でも仮に今俺がいると言ったら君はどう思う?」
「いるのかもな」
「偉く素直だな。ある程度否定するんじゃないかと思ったんだが」
「それが今回の事と何か関係あるんですか?」
春川が横から男に尋ねる。
「まぁ、端的に言えばあれは宇宙人と俺たちが定義してる連中が作った兵器なんだよね」
「!!?」
「やっぱこう直に言うと疑心暗鬼になるよね。でも事実だ。少なくともあれだけ人を摸して、高機能に動く兵器は人類の現存テクノロジーでは作れない。」
「そんな・・・」
「よく宇宙人がらみの話題になると攫われて、色々調べられたとか話題が上がるじゃん。あれ半分正解で半分外れなんだよ」
「どういうことですか?」
「かつて世界各地で原因不明の失踪事件が多発した。ただの失踪と言われるかもしれないが、被害者は共通して心身共に健康で、これといった兆候も動機もない人間だった。そして必ず致死量以上の血痕のついた生前の身に着けていたものだけが必ず一週間以内に見つかる。基本的に攫われた人間は生きて帰ってこない。俺の妹がそうだった・・・・」
「え・・・・?」
二人はその時、前席の真ん中にあるオーディオ部分に貼られている一枚の写真を発見した。ある家族の集合写真だろう。其処には恐らく若かったであろう男の姿と、あの襲い掛かった少女の姿があった。その表情は襲った時とはうって変わって生き生きとしていて、満面の笑みの美少女だった。
「これって・・・まさか・・・」
「あれは、奴らが攫った俺の妹を摸した人型の兵器だ。さながら人造人間・・・いや人間が作ったわけじゃないから語弊があるな・・・」
「そんな事が有り得るのかよ・・・」
「奴らは来るべき地球侵略に向けた尖兵且つその情報収集として、攫った人間をモチーフにした兵器を作成した。あの人形もその中の一つに過ぎない。」
「仮にそうだとしても態々あんな虐殺をする必要があるのかよ」
「あくまで使い捨ての道具に過ぎないからな。彼女たちは。非戦闘員を主軸に無差別攻撃を行わせる。必然的に警察などの公安、それでも対処出来ないなら軍隊等の武力勢力をぶつけるほかない。そういう状況を作り出して、各々の国の対応能力や戦力を見計らってるのさ」
「あんな高度なモノを作れるならそんな回りくどい事する必要ないだろ」
「文明の力量を見計らうというのもあるだろう。政府の特殊機関の調査結果によれば、彼らは非常に高度な技術を持っているだけでなく、創作のように別段、自分たちの星自体が住めなくなるといった緊迫した状況になっているわけでは無いらしい。要するに余裕があるんだ。」
「それなら、対話を持ち掛けられないんでしょうか?それくらい高度な文明なら少なくとも私たちの言葉とかだって分かるはずです。」
春川が訴えるような口調でいう。状況が状況だけにこれまでにないくらい悲しい表情を見せる春川。
「政府をはじめ人類側は何度も試みた・・・というか現在も必死に試みた。しかし彼らは一切応じることは無くこういったテロまがいの行為を、各地で繰り返している。」
「そんな・・・どうして・・・」
「仮にいくら良い交渉や取引を持ち掛けようが、最終的にそれを判断するのは持ち掛けられた側だ。不利益への不満から争いに発展することは人類の歴史の中じゃ当たり前だ。しかしその側面に隠れて、利益や譲歩の条件すら破られて争いに発展したことも多々あったわけさ。政府がどの程度の交渉をしたかは定かじゃないが、少なくとも彼らはそれを拒否しただけだ」
最早どうにもならない。男は少しため息をつく。
「結局、どこに向かってるんだ?俺たちは」
保志が尋ねた。
「あの人形はまだ機能を停止していない。」
男はそう言ってラジオをつける。ラジオは、凄惨な街の状況を伝えていた。彼らを襲った少女の人形の手によって、沢山の死傷者が出たほか、公安などとの衝突によって建物などにも甚大な被害が出ているらしい。街はパニック状態だった。
「どうやら、睨んだ通り被害の方はここで頭打ちみたいだな。恐らくあの兵器は俺たちを追ってこの混乱の最中、移動を開始している。」
「俺たちを追ってって・・・?」
「あの兵器・・・もとい人形を組み立てたのは君だろう?」
「!?どうしてそれを?」
「君のスマホと、君を開放してくれてる子から大まかな事を聞いたよ。あの兵器は基本的に制作者の住んでいる地域を軸にその範囲で稼働限界が来るまで殺戮を行う。そして限界が来る直前に製作者を殺して自爆するんだ・・・」
「・・・・そんな・・・。」
「おそらくそろそろ活動限界が来てるはず。活動限界近くになると製作者を始末することに注力し、殺戮を停止する性質がある。今俺たちは奴を人里から兎に角離してる最中だ」
「倒すって・・・どうやって・・・?」
保志が男に聞く。男は即座には答えなかった。しかし程なくして車が停車した。
「そのためにここまで来た」
「・・・・ここは?」
到着したのは閉鎖されたとされる寂れたゴミの集積場だった。
「決戦の場所だ」
男はそう言って二人に降りるよう指示する。保志も春川も大きく唾を飲み込むのだった・・・・。
文章ショボ過ぎて書いてる自分自身満足出来る代物ではない。整合性や設定が弱い。動機が弱い。ベースは維持しつついずれ修正をかけていきたい。次か次辺りで完結予定。