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週巻 彼女を造るっ!  作者: 業野一生
11/11

曇天の先

一人称に変更。

 ゴミ処理場での戦いは男と人形の死闘の末、相打ちという形で終結した。春川と口論になりかけた直後の轟音を聞き、俺たちが駆け付けた時に目にしたのは、血まみれになった男と、ぎこちない状態で、立ち尽くしていた人形の姿だった。男の下に駆け付けようとしたのも束の間で、男の最後の力とも言うべき突進で、人形は勢いよく男と激突。そのまま、真後ろの焼却炉に男と共に落ちていったのだった。本来動いていないはずの焼却炉だが、男が仕掛けていたのか稼働しており、二人ともに亡骸も残すことなく消えていったのだった。俺も春川もその一部始終を呆然と立ち尽くしてみている他なかった。

 程なくして警察などに保護された俺たち。事務的かつ彼らの職務に則った対応以外はされず、男の事や、人形の事も一切聞かれることは無かった。聴取にあたっていた人物の一人が「このことをあまり口外しない方がいい」と(特に聞かれてもいないが)前置きされた辺り、状況も彼らもある程度把握していたのだろうか。どちらにせよそれくらいの配慮が聞くならはじめから本腰を入れて欲しいと思うばかりだった。


 あれから、7年の月日が流れた。俺は結局進学を諦め、国防隊に入った。愛国心があってとかそういうのではない。あの一件以降、我が家はより滅茶苦茶な状態になり、家を出ざる得なかったからだ。兄の広志は奇跡的に一命を取り留めていた。しかし精神を病み、7年経った現在も引きこもっている。当然大学も中退だ。しかし退学後に判明したのは、広志自身、その当時は碌に単位を取得出来ていなかったらしく、いずれにせよ留年していただろうから金が浮いて良かったと親父は吐き捨てていた。冷淡だが、今までの行いを考えれば仕方無かっただろう。しかし結局引きこもってしまったし、ある意味私大の学費並みに兄の維持費や労力は掛かっているといっても過言ではない。そんな途方もない苦労からの愚痴に等しいモノだったし、それくらいじゃないと父自身狂ってしまうと自認していたからだろう。母は結局、そんな兄の介抱に手を回すため、パートを止める事になった。現在は最早、まともな人間としての状況も維持できない兄につきっきりである。そんな状況下で進学は、学校を選ばなければ出来るだろうが、兄のように無駄に4年費やす位ならしない方がマシだと俺は思い止めた。まぁ単純に勉強も大して出来なくなってたし、当然だろう。そう言い聞かせている・・・・。


・・・・7年前、春川に言われた通りだろう。過去の出来事に執着しつづけて、自分の将来をうまく見てこれなかった。そう周りにも言われ続けたし、自分でもそう自覚して、一方的に保守し続けた。その結果でしかないのだ。イレギュラーな悲劇は一過性の出来事に過ぎない。兄がああならなかった場合や、人形の一件が無かった場合も、恐らく俺は似たような顛末に突き進んでいたと思う。


・・・・そして今俺は、駅で電車待ちだ。これから転属先へ向かうのだ。元々地元のエリアに近い(それでも都心から相当離れた)基地に赴任していたのだが、上官との折り合いの悪さと、その上官との不祥事まがいの出来事を起こした俺は、極寒の地域への赴任が決定したのだ。普通、俺の様な下っ端はほぼ転勤が無い。そしてこの上官の不祥事まがいの出来事は本来なら除隊ものである。それは現在の情勢が大きかった。あの一件以降も断片的だが、異星人による兵器が巻き起こす事件が世界各地で多発した。その一方で大国によってはその技術を一部流用し軍事転用する事例も出始めてきたそうだ。戦争とまではいかないが(恐らく戦争にはならない)、それらを転用した上でのテストも兼ねてかの小規模な激突が、俺が赴任する地域では最近多発している。殉職者も出ているが、これらの事実は公には伏せられたままだ。しかし隊員たちの間では、もっぱら悪い噂として流れていた。そんな悪い噂の絶えない地域へ俺はこれから向かうのである。

 そして間もなく電車が到着するという時だった。俺はまさかの人物とホーム越しの再開を果たす。春川リコである。より美人に成長していたが、俺には彼女が本人だと一目で分かった。彼女の方は気付いていない。そしてよく見ると彼女のつないでいた手の先には幼い2、3歳の女の子の姿があった。左薬指には、彼女の誕生石で作られた指輪をはめていた。程なくして旦那と思われる大らかそうな若い男性が二人の下に合流した。

「・・・・そうか」

 俺は、少し上を見上げて微笑んだ。俺は3人の親子の姿を見てようやく気付いたのだ。これまで俺は何か挫折するたびに心の中で何かが止まったようなまま生き続けてきた。しかし結局それは自分の中でそう思い続けているだけで、時間はどこまでも残酷に経過していくのである。それは別に今まで分からなかった訳じゃない。ただ現れた具体的な現実を目にすることで、俺は、実感としてその事実を受け入れることが出来たのだ。それはきっと自分が目指していた第一志望の高校を落としたあの時からきっと変わることは無い。程なくして、電車が到着する。俺は乗り込む。あの家族の姿は向かい側にも反対方向へ進む車両が到着したことで見ることはできない。その車両に春川たちが乗るのだろうかは知る由もない。出発時刻になり、列車は動き始める。窓越しに反対方向に進む車両を俺は無意識に追っていた。その距離はホームを離れるにつれ、一瞬のごとく遠ざかってゆく。交わることなど絶対にない二つの車両。空は薄暗く、くぐもった曇天の中、あの車両が向かった方向にある雲の隙間から、僅かな明るく尊い太陽の兆しが差し込んでいた・・・。

 



一人称に変更。全話こっちの文体に書き換え予定。話の展開一部改正予定。メンドイのでバトルシーン省略。フィクションなので全話通して実名組織や実名地域を書かない様に心がけました。改善点を次回に生かします。見てくださった方に感謝。ありがとうございました。

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