デストラップ
敵との戦いを避けるため、迂回路を取った俺達一行。
グライアイの支配する魔界領へと通じる最短距離の道を外れ、ゴツゴツとした奇岩・珍石に巨岩が鎮座する斜面を、えっちらおっちらと息を少し切らしながら登って行く。
不気味な色をしたこの狭間の地の空と相俟って、なんちゅうか異星探検をしているような気分だ。
「んで、このルートを進むと、どれぐらいでグライアイの所へ行けるんだ?」
前を歩くリステインにそう尋ねると、彼女は僅かに小首を傾げ、
「ふ、良く分からん」
「あ、ありゃまぁ…」
「この辺りは入った事がないからな。ただ通常の倍ぐらいは掛かるだろう」
「倍ですか…」
僕チンの生存確率が、一段と下がりましたね。
号泣モンのションボリ感ですよ。
「ところでリステイン。今更ながら聞くけど……なんでプロセルピナは、お前達を狙ってるんだ?何かしたのか?そいつのオヤツを黙って食ったとか」
「詳しい事は分からん。が、おおよその見当は付く」
「ヤツの狙いは、多分、鍵よ」
と、俺の直ぐ後ろを歩いているプルーデンスが言った。
「鍵?」
「冥府の門の鍵よ。私達番人は、冥府の門を守るのが仕事。だからその門を開ける為の鍵も持ってるわ。プロセルピナはそれを手に入れたいのよ」
「むぅ……良く分からん」
俺は手の甲で軽く額に浮かんだ汗を拭う。
「なんでその魔神は鍵を……や、そもそも冥府の門ってなんだ?黄泉への入り口?」
「違うわよ」
「冥界はまた別次元にある存在だ。冥府の門は、何かを封印する為に魔界と神界の狭間にて設けられた特殊な結界の事だ」
「何かって…」
「ふ、知らん」
「私も良く知らないわ」
「ア、アバウトですねぇ」
「遥か遠い昔から、この門は存在すると聞いた。我等番人は、それを見張る為に魔界、そして神界から選ばれて派遣される。そもそもこの地は不入の地。魔族だろうが神族だろうが、妄りに立ち入りを禁ずる場所だ。それをまさかプロセルピナのヤツ……」
「……その鍵を渡したりするとどうなるワケ?」
「なによ洸一。私とリステインに死ねって言うの?」
「ふぇ?」
え?どーゆー事?
鍵を取られたりすると誰かに処刑されるの?
「鍵と言うのは抽象的な意味だ。物質的な鍵ではない」
「特別な力みたいなものよ。番人になると同時に、魂に直接組み込まれるのよ」
「つまり、鍵イコール私達の魂、イコール命と言うことだ、神代洸一」
「うぉう……」
なるほど。
だからあんな直接的に命を狙ってきたのか……
鍵が魂そのものなら、交渉とか絶対に無理だしな。
「しかしそのプロセルピナの狙いが本当にその鍵だった場合、リステイン達から奪ってそれで門とやらを開けて……何をするんじゃろうね?」
「分からん。が、私やプルーデンスの知らない門の秘密を、ヤツは何か知っているのかもな」
リステインはそう言って、少しだけ目を細めながら
「上手く逃げ延びれば良いが……万が一の時は、神代洸一の世界へ隠れるのも有りかもな。ふふ」
「お、俺の世界?え?人界へ?」
「そうねぇ」
とプルーデンス。
「人界は多次元世界で構成されてるから、プロセルピナにも見つけ難いだろうし……ま、そン時は洸一の所に世話になるわ」
「お、おぅ。まぁ……俺の家は空いてる部屋とかあるから別に構わんが……」
異世界の美少女が俺の家に居候……か。
うむ、厨二の妄想が具現化したような展開ですな。
けど、なんでだろう?
なんか、あまり嬉しくないぞよ。
トキメキもしねぇ。
なんちゅうか、地獄のような日々が連想されるんじゃが……気のせいかな?
★
日も暮れてきたので、大きな岩陰に身を潜めるようにして野営の準備。
幸い、食料にはまだ多少だが余裕はあるが、水の方が些か足りない。
川みたいなモノも無さそうだし、はてさて、どうしたもんか……
「ふむ。水ならば、この苔で代用できるぞ」
リステインがしゃがみながら、岩肌に付いた緑色をした物体を手に取った。
プルーデンスが、うへぇ~と言うような顔をする。
「……苔って言うか、緑色したエノキ茸みたいだな」
かなり不気味な感じだ。
「水分を多く溜め込んでいるし、栄養価も高い」
言って彼女は、その苔を握った手の親指を口に当て、顔を上げながら拳に力を込める。
と、苔から抽出された水が親指を伝わり、ゴクゴクと口の中へ。
「どれ……」
俺も同じようにして、その苔から水分を補給してみる。
味の方は、プルーデンスの顔付きからして期待はしていなかったが……
「お……おおぅ」
想像以上だった。
生まれて初めて口にした味だった。
例えるなら、ニガウリとピーマンと正露丸をミキサーに掛けた後に抹茶で割った味と言うのか……
ともかく、苦い。
口の中の粘膜が根こそぎ持って行かれるような苦さだ。
「お、おふぅ。逆に口直しに水が欲しいぞ。本末転倒だね」
「緊急時には最適な植物だぞ。さっきも言ったが、栄養もあるし、何より魔力も微量ながら含んでいる」
「これで栄養も無かったら、単なる拷問ですよ」
でも、数日もすればこれが唯一の食料になったりして……
うへぃ、こりゃマジで先を急がないと。
「さて、取り敢えず食事をして休もう。明日は陽が昇る前に出立するぞ」
夜は進まないのか?
と思ったら、その疑問をプルーデンスが口に出した。
が、リステインは小難しい顔で首を横に振り、
「明かりを点けて進んだら、敵に察知されるだろ?」
「暗視魔法を掛ければ良いじゃない。アンタも使えるでしょ?」
「……今は少しでも魔力を温存しておくべきだぞ」
「あ、そっか……」
どうも、そう言うことらしい。
「取り敢えず、私とプルーデンスが交代で見張りをしよう。神代洸一は寝てて良いぞ」
「お、おいおい。俺も不寝番をしますよ。ちゃんと交代するって」
「いや、相手は手練の魔族だ。神代洸一では気配を察知出来まい」
「そうそう。見張りは私とリステインがしてあげるから、アンタは大人しく寝てなさい」
「ぬぅ」
そこまで言われると、チョモランマより高いと評判の俺のプライドも甚く刺激される。
確かに、俺はか弱い人間だが、それでも男だ。
超人的力を持つ異界の者達とは言え、女の子に守ってもらうばかりと言うのは、神代洸一の沽券に関わる大問題だ。
「いーや、俺も見張る。見張るったら見張る。だってオイラ、男の子だもん!!」
「いや、しかしな……」
「交代してくれないと、泣くぞ。物凄く泣き喚くぞ」
「どこか男の子なのよ……」
プルーデンスが呆れた声を上げるが、俺は諦めません。
何だったら泣くどころか駄々までこねますよ。
「分かった分かった。なら、最初は私が見張りをしよう。次にプルーデンス。そして最後は神代洸一……それで良いな」
「OK。プルーデンス、ちゃんと起してくれよ?絶対だぞ?起してくれないと、明日の晩は凄い事をするぞ」
「何する気なのよぅ」
「ふ、お嫁に行けなくなる様な事だ」
「……」
「いや、ウソ。うん、ゴメン。だからそんなに指をボキボキと鳴らさないでね」
★
夜中にプルーデンスに起され、そこから空が少し白み始める頃まで見張り番。
幸いにして、怪しい気配を感じる事は無かった。
だが、敵の追跡を振り切ったと言う確証が無い以上、油断は禁物だ。
敵は手練と言う話だ。
僅かな痕跡から、此方を追跡中と言うのは充分に考えられる。
「この山ともう一つ向こうの山を超えた辺りで、進路をグライアイの領土方面へ変えるぞ」
やや急な斜面を息一つ乱さずに先頭を歩くリステインが、そう言った。
「へーい……」
と返事をしつつ、軽く息を吐き出す。
少しだけ、疲れて来た。
足もちょっとだけ痛い。
そして精神は……いたって普通だ。
我ながらビックリである。
普通、こんな異世界に飛ばされ、しかもワケの分からんまま暗殺者に追跡されてると言う状況なら、心は悲鳴を上げ、何かしら精神に異常をきたしてもおかしくはないのだが……
俺は何も感じていなかった。
心はフラットのままだ。
何故かこの状況に慣れたと言うか達観してしまったと言うか、自分の環境適応力に些か驚いてしまう。
もし俺が火星とかに置き去りにされても、その内進化して一人で繁殖すらしてしまうかも知れん。
新種誕生だ。
ふふ、穂波やまどかからは、よく洸一は無神経とかKYとか言われてたが……無神経さも、こーゆー時は役立つもんだねぇ。
「しっかし、なんだ……この辺は雨とか降らないのか?」
「ん?降るぞ」
とリステイン。
「ただ、今は雨季じゃないからな」
「そっか……。雨が降れば、水も補給出来るし、敵の追跡も巻き易いんだがなぁ」
「ふむ、なるほど」
「それだとこっちも動き難いじゃないのぅ」
後方を警戒しながら歩いているプルーデンスが、唇を3の字にしながら言った。
「ま、そりゃそうだが……ん?」
「なに?どったの洸一?」
「や、何か今……嫌な視線を感じたと言うか……」
例えるなら、電柱の陰から俺を見つめている穂波の視線にも似た気配だったが……
と、その時、風に押されたのか、小石が一つ、斜面を転がって来た。
刹那――
「何者かっ!!」
リステインが腰に下げた剣を引き抜きながら叫ぶ。
同時にプルーデンスも武器を手に、俺の前に躍り出た。
――ぬぉッ!?
斜面の先の岩陰から、例の小汚い灰色のフードを纏った暗殺者どもが姿を現した。
その数――え?6人?
「マジか……」
先回りされた?
それとも、まさか……最初から、この辺りに潜んでいた?
それはつまり……
「や、考えるのは後だ」
俺も腰に下げた無用の長物とも言うべきショートソードを引き抜き、敵に対峙する。
ちなみに、超へっぴり腰である。
ま、自信を持って言えるが、俺は戦力にはならん。
がしかし、せめて自分の身だけは守る努力をしないと……
「――はぁぁぁッ!!」
勇躍、リステインが問答無用で敵に襲い掛かる。
プルーデンスも同じく。
巧みに剣を振るいつつ、至近距で何やら魔法を放ったりしている。
うぉう、圧倒的な強さだ……
瞬く間に、4匹を仕留めたぞ。
「プルーデンス。魔法はあまり使うな。この地では効果が薄い上に魔力の消費は倍だぞ」
「分かってるわよ!!」
ちょいとい怒鳴り気味の声を上げ、プルーデンスの稲妻のような蹴りが炸裂。
敵は体をくの字に曲げたまま、岩肌に減り込んだ。
「ふん、ゴミどもが」
リステインが目の前に敵に向かって水辺に剣を振るう。
敵はククリナイフのような獲物で、その剣を受け止めるが、
「――がッ!?」
いきなり頭部と胴体を切断され、その場に崩れ落ちた。
スゲェ……どうやったんだ?
一度しか剣を振ってない筈なのに……
俺の目に止まらない速度ってこと?
それとも、一回の攻撃で三度攻撃が当たる特別なスキルってことかにゃ?
良く分からんが、ともかくスゲェな……
「ふん、他愛も無い」
リステインが剣を鞘に収め、チラリと俺に視線を走らせながら
「神代洸一。怪我はないか?」
「うん、無いよ」
ってか、一瞬で片が付いちゃったよ……倍の敵なのに。
本当に強いね、この二人。
「それは良かった」
ニコッと微笑むリステイン。
と次の瞬間、いきなり体を半回転させつつ再び剣を抜き放つ。
――キンッ!!
甲高い音を立て、どこからか飛んで来た五寸釘のような投擲武器が弾かれた。
「ふん、甘いな。まだ隠れているのは分かっているぞ」
「そーゆーこと♪」
プルーデンスが跳ぶ様にリステインを追い抜き、隠れ潜んでいる敵に向かって小さな魔法を放ちつつ、華麗に剣を振るう。
「ぐ…」
岩陰から、更に二匹の敵が切断されて地面に転がった。
がしかし―――
「な゛…ッ!?」
「――ッ!?」
リステインのくぐもった声に慌てて視線を向けると、彼女の肩と腹、そして太股に、敵の投擲武器が突き刺さっていた。
「リステインッ!?」
プルーデンスが尋常ではない速度で手にした剣を投げ付ける。
別の岩陰から、喉元を剣で貫かれた暗殺者が転がった。
「チッ、私とした事が……先の二匹は囮だったか。ふん、仲間を犠牲にしてもか……中々にやる」
「リステイン!!」
「大事無い」
彼女は自分の身体に突き刺さっている武器を引き抜く。
「と言いたい所だが……ふむ、少し拙いな」
「こ、これは……」
「ど、どどどうした?」
遅まきながら俺も彼女の元へと駆けつける。
リステインが手にしていた敵の棒手裏剣にも似た武器は鋭いが小さく、ダメージ的にはそれ程ではないと思うが……
「ふん、枯渇のバフが掛けられているな。刺さった瞬間、かなりの魔力が持って行かれたぞ」
「え……?」
「と、ともかく治療を」
と、プルーデンスが手を翳すが、リステインはそれを押し留めるように、
「止めておけ。魔力は使うな。この程度の傷なら、回復薬で治る」
「そ、そうだけど…」
「だ、大丈夫なのかリステイン?」
「……傷はな」
言いながら、服のポケットから小瓶を取り出し、中に入っている液体を一気に飲み干す。
瞬時に、体に穿かれた穴が塞いで行くが
「く……」
グラリと彼女の体が揺れたと思いきや、その場に膝を着いた。
「リステインッ!?」
俺とプルーデンスの声が重なる。
「ふん、参ったな。力が入らんぞ」
リステインの顔色は、かなり悪くなっていた。
魔力と言うものを持たない人間の俺には良く分からないが、察するにどうもこの世界の住人達とって魔力とは、生命力らしきモノと連動しているみたいだ。
「だ、大丈夫なの?ど、どれぐらいなの?あと、どれぐらい魔力は残ってるの?」
「……3割。いや、2割強と言った所か」
「そんな……」
「案ずるな、プルーデンス。それよりも先を急ぐぞ。今ので恐らく、此方の居場所は知られた」
言ってリステインは立ち上がろうとするが、足元がかなり覚束無い感じだ。
膝とかガクガクと震えているし。
「く……」
「リステイン。俺におぶされ」
俺は彼女の前にしゃがみこんだ。
「む……それは少し恥ずかしいぞ」
「何を言ってるんだ?ってか、恥ずかしがってる場合じゃないでしょ?早く行かないと……それとも、お姫様抱っこの方が良いか?」
「や、しかし……だったらプルーデンスの方が……」
「いやいやいや、プルーデンスが自由に動けないと、いざと言うとき困るでしょうが」
敵がまた出た場合、俺ではぶっちゃけ瞬殺されますぞ。
「……それもそうか。ふん、スマンな神代洸一」
「何を仰る……」
そう、本当に何を仰るだ。
彼女がいなければ、俺は当の昔に死んでいただろう。
何より……俺はなにもしてねぇ。
何も出来ていねぇ。
しかも戦う事はおろか、自分の身だって守れるかどうかも怪しい。
地域最強と呼ばれたこの俺様が、実に情けない話だ。
「良し、行くぞ。プルーデンス、前を頼む」
俺はリステインをおぶさりながら言う。
「分かってるわ。陽が高い内に出来るだけ進むわよ」
「了解だ。今こそ御町内でもカモシカと呼ばれたこの俺の脚力、見せてくれようぞ」
★
リステインを背負って岩山を駆け上がる俺様チン。
彼女は口を開ける度、「スマン」だの「大丈夫か?」だの「重くないか?」だの少しネガティブな事しか言わないので、「ところでリステイン。ちと尋ねたいんじゃが……魔力が無くなるとどうなるんだ?」と、少々強引に話題を振ってみた。
「ん?魔力が枯渇するとどうなるか、と言う事か?」
「うん。どうなるんだ?俺、人間だから良く分からないんだよねぇ。もしかして、死んじゃうとか……」
「いや、別に死にはしないぞ」
「そうなのか?」
「そうだ。魔力と生命力は別物だ」
リステインがそう言うと、前方からプルーデンスが、
「疲れて動けなくなるのよ」
「ほぅ、動けなくなると……」
「ギリギリまで魔力が落ちたら、最悪の場合……寝ちゃうわ」
「ね、寝る?」
何それ?
昏倒しちゃうってことかな?
「そうだな」
リステインが続ける。
「特に私は上級魔族だ。巨大な力を持つ代わりに、生体活動に於いて下級魔族や他の種族よりも魔力に依存している割合が高い。だから魔力の枯渇による眠りの場合……ふふ、最低100年は眠ったままになるかもな」
「マ、マジか?」
「ふふ、そう言う可能性もあると言うことだ。今この場で私が眠りに就いたら……そこで終わりだ」
「だ、だよねぇ。で、その魔力はどうやったら補充できるの?誰かから奪うとか出来るの?」
「ん?ふむ……通常なら、一晩寝ればある程度は回復できる。が、この地ではな。それに今は魔力回復のアイテムも無い」
「むぅ……あんまし良く分からん」
「人間族は魔力に依存せずに生きてると聞くが……そちらの方が私には分からんぞ。それに魂も一つで、分割すら出来ないと言う話ではないか。そう言う意味ではモンスター種と同じだが、知的レベルが異様に高いのが不思議だ……」
「いやいやいや、魂とチ○コは普通は一つしか無いだろ?」
言うや、前方から小石が飛んできて俺の額にぶち当たった。
「アンタ、なにナチュラルにセクハラなこと言ってるのよ」
「や、だってさぁ……魂って普通は一つじゃね?」
「え?まぁ、大まかな数の上ではね。でも大きさとか違うでしょ?」
「そうなのか?あ、でも確かにチ○コの大きさは人それぞれだし……ちなみに俺は大きい方だと思うぞ」
言うや、更にでっかい石が飛んで来たので、辛うじて俺はそれを避ける。
「あっぶねぇなぁ……」
「うっさい、この変態!!」
「ンだよぅ」
プルーデンスは意外に純情って言うかねぇ……
「しかし神代洸一よ。魂が一つでは復活できないではないか」
「まぁね。この世界はどうか知らんけど、人間は死んだらそれっきりだ」
多分だけど。
のどかさんなら、復活魔法とか使えそうだけど……あ、でもゾンビになるかも知れんな。
もしくは怨霊とか。
「そうなのか。ふむ……死ねばその魂は輪廻の輪に乗り、そして再生と言うわけか。なるほどな。人界は時の造物主の影響を強く受けている世界だから、その辺りは秩序正しいと……」
「何を言ってるのかサッパリ分からんのじゃが……それよりもリステイン、さっきの敵の攻撃、どう思う?」
「ん?どう思うとは?」
「や、もしかして……」
言い掛けるや、
「あ、水の音が聞こえる」
とプルーデンス。
「湧き水みたい。丁度良いわ。日も暮れてきたし、今日はそこで休みましょう」
「む、そうだな。水も補給できるだろうし……どうした、神代洸一?」
「ん?んん~……少しタイミングが良すぎないか?」
「どういう意味だ?」
「さっきのは明らかに奇襲だ。敵は9人もいたんだし、単なる遭遇戦とは思えん」
「……つまり、最初から此方の動きを読んでいたと?ふむ……」
「そうだ。そしてその後で、すぐに水もある夜営するには最適なポイントの発見と。ちょっと出来過ぎだとは思わないか?」
「……休んでいる所を囲む、と言うことか?考え過ぎな気もするが……その可能性も無くはないか。では、どうする?」
「水を補給したら、そのまま進めるだけ進もう。その方が安全だと思うぞ」