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俺様日記~魔界行~  作者: 清野詠一
16/27

ペリッシュ



もうダメぷり……

洸一、即座に覚悟完了。

死ぬのは当然の事ながら、怖い。

怖いが、痛くないのなら別に良いですよ、はい。

一瞬で死ぬのなら、それはそれで有りかなと。

しかしまぁ、幸の薄い人生だったなぁ……ってかボクちゃん、まだチェリーなボーイですよ。

生物としての役割を果たしてないですよ。

ま、参ったなぁ……

このままだと多分、死んだら何か性的な悪戯を得意とする怨霊になっちゃうよ。


だが、どうやら俺はまだ生きているみたいだ。

寸での所で「うぉりゃーー」と男らしい掛け声と共にプルーデンスが女暗殺者を横合いから蹴り飛ばし、更にそこへリステインも参戦。

剣を振り回し、敵を追い詰めている真っ最中だった。


しかし……あの女、何者だ?

プルーデンスとリステイン、二人を同時に相手しながら互角……や、それ以上に戦ってやがる。

プロなんちゃらって言う魔神の手下らしいが、かなりの強さだぞ。


「こ、この……しぶといわねっ!!」

プルーデンスが片手で剣を水平に振り、もう片方の手で魔法を放つ。

だが敵は両の手首に装着した鎌を縦横無尽に繰り出し、剣どころかその魔法をも弾き返して行く。

しかも弾き返した魔法が、リステインの方へ跳ぶ様に調整してだ。


「こいつ……ただの暗殺者ではないぞ。この力、上級魔族か」

リステインの眉間に皺が寄る。


「ふ……番人とは言え、この狭間の地ではその力はあまり使えまい」


「それはアンタも同じでしょ!!」

プルーデンスが吼えながら大上段から力強い一撃。

が、敵は難無くそれを躱し

「だから事前に準備をしている」

言うや懐からゴルフボールぐらいの大きさの赤い玉を取り出し、それを投げ付ける。

瞬間、爆発音と共に辺りが炎に包まれた。


――ぬぉ!?これは……マジックアイテムってヤツか!?

ここ、こりゃいかん。

プルーデンスもリステインも劣勢ではないか。

ならばここは、この神代洸一、再び参戦を……

足手まといになりそうな気もするが、それでも男としてただ黙って見ているわけには行かない。

俺は剣を握り締め、いざ突撃を敢行しようと思ったのだが……

「ぬぅ…」

足が動かない。

それどころか、視界もブラックアウトしてきた。

これは……魔法攻撃か?

あの女、俺様の力を恐れて何時の間にか攻撃を……

と思ったが、どうも違う。

この体の重さは……うむ、血が足りないみたいだ。

何しろ未だ、切られた左腕からドバドバと出血しているしな。

今更気が付いたけど、足元は血の海ですよ。

うむ、こりゃ参った。

神代洸一、バトルの外でいきなり瀕死状態の巻で御座る。

「うぅぅ、情けない」

呟くや、いきなり膝が落ちた。

あ、イカン……既に立つパワーも無くなって来た。これ、マジで死ぬヤツだ……


――その刹那、いきなり辺りが閃光に包まれた。

それと同時に、声にならない悲鳴らしき物を上げ、その女暗殺者が吹き飛んだ。

な、なんだ?

強い光で霞んだ目を瞬かせながら状況を確認。

プルーデンスかリステインが、何か魔法を使ったのか?


だが、そうではなかった。

俺の背後から響く、少し甲高い感じの女性の声。

「立ち入りを禁じられた地に刺客を送り込むとは……プロセルピナめ。遂に血迷うたか」

慌てて振り返ると、直ぐ近くの岩の上に立つ影が一つ。

闇夜で染め上げたかのような深黒の長い髪に、如何にも悪魔ですと言わんばかりの山羊のような長い角を生やした女性が、裏地を赤に染め上げた薄青のマントを靡かせ、佇んでいた。

その姿に、リステインとプルーデンスは驚いた顔で、

「――グライアイ!!?」

と叫んだ。


「チッ……」

女暗殺が態勢を立て直し、鎌を構える。


「ほぅ……誰かと思えば、アリアンロッドかえ」

「グ、グライアイ。何故に貴様がここに……」

「それは妾の台詞じゃな。ふん、貴様ほどの者を送り込むとは……プロセルピナ、かなり本気のようじゃな」

「……チッ」

再び、アリアンロッドと言う名前らしき女殺者の口元から、舌打ちが漏れた。

「計画の修正が必要だな。ここは一先ず、退くか」

「逃がすと思うたかえ?」

「逃げるさ」

暗殺者は口元に不敵な笑みを浮かべると、おもむろに指をパチンと鳴らした。

それと同時に、周囲に爆音と共に視界を遮る白煙が広がる。

「煙幕?この程度の児戯で妾から逃げられると――」

「――グライアイ!!ただの煙幕じゃないわよ!!麻痺と毒効果が付与されてるわ!!」

「チッ……周到だな」


ちなみに洸一、ただいま出血多量に麻痺と毒が追加され、棺桶に下半身が入っている状態です。

ふふ、これが死か……

もう、真っ暗で何も見えないや。



「洸一ーーーッ!?」

リステインとプルーデンスが、崩れ落ちた神代洸一の元へと駆け寄る。

「大変!?死に掛けてるわ!!」

「む……マズイな」

「ど、どうしようリステイン?ったくこの馬鹿、大人しく隠れていれば良いのに……」

「……グライアイ。何か治癒アイテムを持っているか?」

「生憎と。緊急を要すると思うて、慌てて飛び出して来た。それで、その男は一体何者じゃ?下級魔族かえ?」

魔神グライアイは身を屈め、倒れている洸一の顔を覗き込んだ。

「いや、人間だ」

「アンタに会いに、洸一はこの世界に来たのよ」

「妾にかえ?」

「って言うかグライアイ。アンタなんでここにいるの?私とリステインはアンタの領地へ向かおうって歩いて来たのに……」

「……妙な男が現れてな」

「妙な男?」

リステインとグライアイは顔を見合わせる。

「そうじゃ。珍妙な甲冑を身に付けた男じゃ。それが突如、妾の前に現れてな。そなた達の危機を教えてくれたのじゃ。しかも御丁寧に、この場所までもな」

「ふむ、そうか」

「で、グライアイはわざわざここまで?え?そんなの信じたの?」

「普段の妾なら信じぬが、その男の言葉に真実を見たのでな。ふふ、駆けつけてみれば危機一髪じゃったな」

「ふむ……どう思う、プルーデンス。グライアイの前に現れた男、洸一の言っていた男と――」

「――同じね。何者なのかしら?」

「妾にも分からぬ。不思議な気配を纏った者じゃったし、何より、妾の城に誰にも悟られずに侵入するとはな」

「……取り敢えず、今は洸一の治療が先だ」

「そ、そうね」

「洸一と言うのか、その者は?しかも妾に会いにわざわざ次元移動までしてとは……はて?何用じゃろうか?」

「ん、その話は後だグライアイ。詳しい事は洸一から聞くが良い」

「どうするのよリステイン?」

「治癒魔法を掛けよう」

「この傷に?それだとかなり魔力が……アンタ大丈夫なの?」

「……もしもの時は既に話した筈だぞ?後を頼む、プルーデンス」

「ちちち、ちょっと!?なら私がやるわよ。まだ魔力に余裕はあるし……」

「ダメだ。それはこれから先の戦いに取っておけ。あの女が手を引いたとは思えん」

「ならアンタだって…」

「いや、無理だな。実は今の戦いで、殆ど魔力は残っていない。次にヤツと出会えば、間違いなく私は倒される。ならばここで、洸一に残りの魔力を使った方が良い」

「リステイン…」

「ふむ、後でちゃんと復活させてくれよ、プルーデンス」

「あ、当たり前よ」

「それにもし、お前もダメだと思ったら、その時は……ふふ、本当に洸一の世界へ紛れ込むか。コイツとは、出会った時から何か縁を感じていた。あぁ、彼の家に居候すると言うのも、それはそれで面白いかもな」

「コイツは馬鹿でスケベでパープーなだけよ。ったく……」

「頼むぞ、プルーデンス。グライアイ、万が一の時はプルーデンスの転移を手伝ってくれ」

「うむ、何となく話は掴めた。良かろう。プロセルピナに鍵を渡すワケにはいかぬからな」

「ふむ、では早速洸一の治療を……む、イカン」

「ど、どうしたのよ?」

「既に息をしとらん。やれやれ、手間の掛かるヤツだ……」









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