2話
このままでは魔法の杖としての誇りが失われてしまう。
どうしよう・・・まずはこの子が魔法をどう思っているのかしら?
「私は魔法使いの為の杖なんだけど、アイラは魔法って使ってみたいと思う?」
「そりゃぁあるよ。
でも、学校でいっぱい勉強したけど、ダメなものはダメだったね。」
「・・・そう、でもねアイラ、私を装備出来たってことは、あなたが魔法の素質が有るからだと思うのよ。」
「かなぁ?」
この子は魔法が使えないだけで興味はあるのね。
それなら簡単。
「アイラ、さっき私の力を説明したよね。私を装備すればマジックポイントの底上げが出来るの。
だから、私を装備すれば魔法が使えるわ。
マジックポイントが0のアイラの場合、私の力をもってしても最初は何か一個しか覚えられないわ。
でも、それを根気よく使い続けて行けばマジックポイントも増えるはずよ。」
私を握る手に力が篭る。 その気になってくれたのかしら?
「魔法が・・・使えるのか?」
「ええ、まずは初歩の魔法一つだけだけどね。」
「なぁ、魔法はカシエを握ってないと使えないのか?」
「握らなくても、身に付けていれば大丈夫よ。
今はアイラの胸元くらいの長さだけど、私に短くなれと念じれば短くなるわ。」
私の説明が終わると直ぐにアイラの念が伝わってきて、柄の部分が短くなってくる。
30センチ位まで縮めると腰ベルトに括り付けてきた。
「なんかお守りみたい。」
「そ、そうね。
いずれ、アイラの魔法が上達したらちゃんと杖として使って欲しいわ。」
「まぁ、その時が来たらね。」
良かった、不本意だけど鈍器よりましだわ。
さて、遂に私にも旅立ちの時が来たのね。
「さぁ、この部屋から出ましょう。 私を日の光の下へ!」
「それじゃあ、出口に向かうね。」
「でも、モンスターには気を付けて。 と言うかよくここまで来れたわね。」
「ん? ここにモンスターなんていないよ。
ギルド学校の卒業試験で使われる場所だし、そんな危険じゃないよここ。」
アイラの話を聞くと私は愕然とした。
私が作られた時にはこの神殿を守る為に守護モンスターが配置されていたはずなのに、
モンスターは退治され、神殿を取り囲むように町が出来、
神殿の一部区画を冒険ギルド学校の卒業試験を実施する場所として使われているらしい。
「そう、アイラは卒業試験でここに来て私と会ったのね。」
「うん、でも変だよね。
ここには沢山の人が来ているのに、誰もカシエを見つけられなかったなんて。」
「当然、適合者以外には私のいる場所には入れないように結界が貼ってあるのよ。」
「そうなんだ、じゃあ本当にカシエは特別な武器なのかもしれないね。」
この子、まだ私を認めてくれていないのね。
仕方ない、本当はここから出て一息ついてからにしようと思ったけど、奥の手ね。
「アイラ、折角だしここで魔法を覚えちゃう?」
「え? そんな簡単に覚えられるの魔法って。」
「私のサポートがあれば問題なしよ。
目を瞑って貰えれば、アイラが今使える魔法の一覧をイメージで送るわ。
その中から一つ、使いたいのを選べは自然と使い方が頭の中に湧き上がってくるの。」
「覚える! 今すぐ覚えるよ。」
早速目を閉じたアイラに、使える魔法の一覧を送る。
すると、そわそわ体をゆすっていたアイラが急に背筋を伸ばし動かなくなる。
無事に魔法の一覧が届いたのだろう。
「お、おおおぉ。
凄い、なんか知らないけど凄いぞこれ、この中から一つなんだよね?」
「えぇ、一つだけよ。 私のお勧めは・・・」
「それじゃあ、これ。」
え、もう決めちゃったの?
不安だわ、この子に好きに決めさせたのは誤った選択だったかも。
「アイラ、何にしたの?」
「んー、秘密。」
「ね、ねぇ教えて、とっても不安なの。
お勧めも聞かなうちに決められると、とっても不安なのよ。」
「卒業試験の時間が無くなっちゃうから、試験が終わってからねー。」
あら、いつの間にやら部屋から出てる。
待ち望んだ瞬間がいつの間にやら過ぎているのは何ともやるせない気持ちね。
薄暗い通路を進みその先にある階段を上ると、長い通路がありその先に光が見える。
「あそこが出口。」
「眩しいわ。 ずっと暗闇の中でいたから凄い眩しく感じるの。」
「あそこまでいけば私もついに卒業。」
この子にとってあの光は卒業、私にとっては初めの一歩…
同じ場所に行くのに、目標が違うのはずっと一人でいた私にとってはそれだけ新鮮な事…
「さ、行きましょうか。」
「うん。」
魔法が使えないこの子に、私の力を存分に使ってもらうにはどれだけ時間が掛かるか知らないけど、気長に行きましょ。




