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死臭女神  作者: 駿河留守
3章 -悪魔釣り-
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悪魔釣り-6

 次の日、朝普通に登校する。

「おはよう、犬山くん」

「おはよう、麻乃さん」

 いつも通り隣の席に座る。依然、教室に飛び交っているのは波羅くんを殺した奴が誰なのかというものだ。議論はいくらやってもここのいる奴らには証拠も確証もなく、ただの仮説であり、妄想である。だが、それは今まで慎重だった真犯人にプレッシャーを与えるには十分だった。

 志州が登校してくると誰もが距離を置いた。昨日の涼元さんとの口論で志州への疑いは薄くなってきている。事件当初とはまったく逆の効果を涼元さんは生んでくれた。彼女のためにも波羅くんを殺した真犯人を見つけなければならない。

 昨日、矢田部くんを捕まえて話を聞いた。何を聞いて、何がわかったのかは後に説明するとして今は仕掛けた餌に悪魔が食いつくのを待つ。

 志州が席に着くとかばんから教科書やらノートを取り出して机の中に入れようとすると何かが机の中で突っかかる。教科書を入れるのを一旦断念して入れようとしていた強化書類を机の上において机の中に手を突っ込んで突っかかったものを取り出す。それは一枚の茶封筒だった。

「何これ?」

 見に覚えのないものに疑問を呟く志州の姿を俺も見ていた。俺だけじゃない。隣にいた麻乃さんも近くでおしゃべりをしていた女子生徒も。

「どうしたの?志州さん」

 麻乃さんは志州のことを犯人だと思っていない。だから、こうやって皆が警戒する中で普通に話しかけることができる。俺と同じように。

「たぶん、手紙かな?」

 封はされていなかった。麻乃さんが志州からその手紙を受け取って中身を取り出す。中からは一枚の紙が丁寧に折られて出てきた。それを麻乃さんが広げるとそれは意外なものだった。いや、下手したらこの事件をひっくり返すとんでもないものだった。驚愕した麻乃さんは無心にただ声に出してその手紙の内容を口にした。

「僕、波羅は恋人、涼元に脅され、苦しみから逃げるために、死ぬことを許してくださいって」

 教室中がまるで氷河期にでも入ったかのように凍りついた。

 それは紛れもない自殺を決定的にする遺書だった。ここで教室の誰もが同じ思考になったはずだ。

 警察は犯人の目星が突いてて最後の追い込みにかかっている。波羅くんが自殺だってことで捜査が進んでいるっていう噂が流れていた。でも、波羅くんは自殺ではなく他殺というのが有力となっていた。真犯人は波羅くんを自殺だと断定できる証拠を用意してあたかも偶然発見されたようにすれば、波羅くんの自殺が確定するという点を突くはずだ。波羅くんを自殺に見せかけるための小道具を誰かの持ち物から出てきたとなれば、その誰かが犯人ということになる。その遺書が志州の机の中から出てきた。ならば、志州が波羅くん殺害に関与していると誰もが思う。志州の疑惑が一旦晴れたところに再び雲行きが怪しくなってきた。あれだけ志州を信じていた麻乃さんでさえも手紙を持って志州から離れた。

 志州は無言で自分に向けられている目線を受け入れた。動揺もせず落ち着いていた。そう、この教室において波羅くんの遺書の発見に動揺していないのは志州のほかにもうひとりいる。

 俺だ。

「釣れたよ。志州」

 俺の言葉に志州は笑みを浮かべて振り返った。

「悪魔が」

 俺は立ち上がってすぐ後ろにある掃除道具入れに向かう。そして、乱暴に中を開ける。中にはモップやらほうきやら雑巾やらが乱雑に置かれている。ロッカーの形をした掃除道具入れの上段の棚においてあったのはビデオカメラだ。それは掃除道具要れの上のほうにある空気孔から教室の中を写している。だが、視界は狭く写せる範囲は限られている。そう、写せるのは俺や志州が座っている一番窓側の列の席だけ。

「ここからだ。逆転劇は」

 高まる鼓動は嬉しさか緊張感か恐怖心かどれなのかは俺自身には分からない。だが、悪魔は釣れた。

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