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エピソード02「子猫の誘惑」

女の子:「別に、想像する位なら許してあげるけど、その代わりに到着ロビーまで一緒に付き添ってくれない。」


ぞろぞろと動き出した人の波に乗って、女の子と私は、やがて入国審査の長い行列へと、流れ着く。



女の子:「おじさんって、一人暮らしなの?」


正:「ああ、単身赴任だ。 日本には、君より大きな子供が居るよ。」


女の子:「何処に住んでるの?」


正:「ロンドンの北の外れかな、」


女の子:「もしも危なっかしくて放って置けないと思うのなら、イギリスに滞在する間、おじさんが私の面倒を見てくれない?」


私は途端に苦笑いする。



正:「いやいや、君みたいな「不思議な女の子」に関わりあう程、私は世間知らずでは無いよ。 君の言っている事の半分位は信じられないしね。まあ、物語としては面白いけれど、そんな危なっかしいモノに自分から関わろうとは思わないな。」


女の子:「こんなに可愛らしい女の子が一緒に暮らしてあげるって言ってるのよ?」


女の子は、子猫の様な上目遣いで、私の瞳の奥を覗き込む。



正:「君が可愛いと言うのは認めても良いけど、いい大人が見ず知らずの女子高校生と馴れ馴れしくする事が、どんなにハイリスク・ローリタンか位、私は心得てるよ。」


女の子:「良いわ、見返りが足りないと言うのなら、イギリスにいる間私の面倒を見る代わりに、私の両手首から先を自由にして良い権利をおじさんにあげるわ。」


正:「ナンダイそれ?」


女の子:「この白魚の様に綺麗な指と掌を、おじさんの自由にして良いのよ。触れても、舐めても、どんなモノを握らせても、おじさんの自由。」


正:「そんな馬鹿げた取引は口にしない方が良いぞ、おかしな男なら、その自慢の指を切り落としてしまうかも知れないぜ、」


女の子:「あら、おじさん、シェークスピア読んだ事無いの? 自由にして良いのは手首から先だけよ、血の一滴もおじさんにあげるとは言ってないわ。」


女の子は悪戯そうに微笑みながら、私の動揺を見逃すまいと、益々その大きな瞳の引力を濃く深めていく。



女の子:「それに勿論、誰にでもこんな取引を持ち掛けたりはしないわ、おじさんは、安全そうだもの。」


正:「君は良い女になる素質を持っているよ。」


私は、これ見よがしな深い溜息を一つ、



正:「やはり取引は辞退するよ。 私にとって何もメリットが無いもの。 君が想像している様な行為は、実行不可能だからね。そんな事すれば、私はたちまち犯罪者リストに仲間入りだ。」


女の子:「おじさんが一体どんな行為を想像しているのかは、想像も付かないけれど、私が黙っていれば、それで済む話じゃないのかしら?」


正:「シンプルに、君の事が一番信用できないって事なんだが。…」


女の子:「でももう、おじさんが断る事は出来ないわ、だって、もしも断ったら、私「おじさんに誘拐された」って騒ぐもの。」


正:「脅迫する気か? いい加減疲れるから、冗談は此れまでにしてくれないか?」


女の子:「あら、冗談ではないわ。私は既におじさんの顔写真と入国カードのコピーを手に入れてるのよ、」


女の子は、そう言って、私にスマホの画面を見せる。



正:「怖いな、」


私は、そう言って、苦笑いする。



正:「悪いけど、私はお嬢様の酔狂に付き合うほど暇じゃないよ、仕事もあるしね、兎に角、僕には面倒見れないな。 君みたいな怪しい子。」


女の子:「見捨てたら、私、おじさんの良心が痛むような処に、ノコノコ出かけて行くかも知れないわ。 明日の朝刊に日本人の女の子の記事が載ったら、おじさんの責任だから。」


女の子は、パスポートチェックで、すかさず私に付いて来て、



女の子:「He is my uncle. I will stay at his home during my UK visiting.(彼は私の叔父さんよ、私はイギリスに居る間、叔父さんの家に滞在するわ、)」


あっと言う間に、私は窮地に陥れられる。


白魚の様に細くシナヤカな女の子の指が、親しげに私の袖を握る。


何事も無く入国審査は終了し、まんまと私の住所を書き込んだ女の子の入国カードは受理されてしまった。



「おじさんが私の事を信用できないと言うのは判るわ。 だって、こんな可愛い女の子が、おじさんみたいな「さえない中年」に話しかけるなんて、普通なら有り得ないものね。」


女の子:「だから、私はパスポートとクレジットカードをおじさんに渡しておいても良いわ、これでどう? 私は、おじさんの事を信用するって、そういう意味よ。」


バッゲージクライムのターンテーブルの前で、女の子はパスポートとクレジットカードを私に差し出した。



正:「良いよ、それは自分で持ってな、滅多な事で他人に見せたりするんじゃない。」


私は、根負けした風を装って、これ見よがしな、深い溜息を、もう一つ。



正:「良いか、私が君の事を面倒見るのは、一週間だけだ。 その間に、帰りのチケットを買って、日本へ帰るんだ。」


女の子:「それって、おじさんが、一週間の内に、私が此れから生きていく意味を教えてくれるって事?」


途端に、女の子の顔が、真っ赤に染まる。



正:「やれやれ、兎に角、君の名前を教えてくれないか、私は君を何と呼べばいい?」


女の子:「私の名前は羽立栞、しおりって呼び捨てにしてくれて良いわよ。 ウチのクラスの男子が聞いたら、凄く羨ましがると思うわ。」

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