プロローグ・第一次星眼戦争
かつて世界は2つの国に分かれていた。1つは醜い豚面のオークが蔓延る凶徒の国アルカトラズ。1つは叡智を結集させて人類が築いた黄金の国ジパング。
2つの国の種族はお互いに対立し合い、第一次星眼戦争に敗れたオーク達は人間の奴隷として未来永劫強制的に働かされていた。
この現状に待ったをかけたのは、アルカトラズ第6代皇帝のヘルガンスクだ。ヘルガンスクは植民地を逃れた数少ない部族をかき集めて、奴隷解放宣言を発令。これが後の伝説的革命として語られる第二次星眼戦争に発展した。
160億の人類が率いる軍隊と、僅か3万のオーク戦士達。強大なる戦力や科学力の差で、人類側の勝利は決定かに見えたが、皇帝ヘルガンスクが攻撃を掻い潜ってジパングの王城に突入する事に成功した。
愁歴127年。大和王城。
駆け寄ってくる人間の首を次々と刎ねていくオークがいた。
彼こそがアルカトラズの英雄『ヘルガンスク』だ。
数々の死地を乗り越えてきただろう、顔に刻まれた傷と鍛え抜かれた体が特徴。
既に60を超えた老体とはとても思えない。
「雑魚は消えるが良し」
国王の零尽を守る精鋭部隊がいともたやすく絶命していく。
オーク単体の戦闘力は兵士10人分に値するといわれているが,ヘルガンスクの戦闘力は兵士60人分に値していた。
「何をしておるのじゃ! 早くあの豚を駆逐せんか」
唾を飛ばして喚き散らす零尽。しかし、精鋭部隊はヘルガンスクの威圧感に圧倒されて怯え嘆き、命乞いをする者もいた。勿論、ヘルガンスクは命乞いをする兵士にも容赦なく四肢を切り裂いたり、内臓をぶちまけている。
「ひいい」
あっという間に部屋が血の海に変わって、零尽は死臭に耐えきれなくなり発狂。
「勝負ありだな」
「見逃してくれい……」
頭を抱えて全身を震わせている零尽。
「アルカトラズの民を全員解放しろ」
「分かった。解放する」
「それと、スクリーバを儂に寄こせ」
ヘルガンスクの一言に零尽の顔が更にこわばった。スクリーバとは、全てを生み出し、全てを支配すると伝えられる禁書の巻物だ。ジパングでは禍の書と伝承されており、大和王城の地下に厳重な警備で保管されている。
「ならぬ。あれは世界を破滅に導く禁書じゃ!」
つい、声を荒げてしまった零尽は「はぅ」と我に返って、赤い絨緞の上に座り込んだ。
「どうした?」
「頼む。スクリーバだけは……スクリーバだけは諦めてくれい」
土下座して必死に頼み込む零尽。
「顔をあげろ」
「はい」
頭を上げた直後にヘルガンスクは斧を振り下ろして、零尽の首を胴体から切り離した。
「悪いな」
ヘルガンスクは玉座の下に隠された階段を下っていき、スクリーバが隠されているであろう部屋の前まで到達した。
「誰だ貴様」
二人の門番がヘルガンスクを制止させようと歩み寄ってきたが、二人の首は遭えなく刎ねられた。