七
佐助は深夜、物音で起きた。
音の聞こえた方へ行くと、そこには。
「志乃?」
「こんばんは。どうしたんですか?」
「いや、音がしたから…。志乃はどうしてここにいるの?」
「暇潰し?ですかね~。見張り、みたいな?」
返ってきたのはなんとも面妖な答え。
「俺、志乃が寝てるの見たこと無いんだけど。」
「でしょうね。寝てませんし。」
「は?どうゆうこと?」
「まあ、いいじゃありませんか。」
誤魔化された。
それから、暫くして。佐助が自室で本を読んでいると、耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。
「キャーーッ!」
「!?」
悲鳴の主である女のもとへ佐助が駆けつけると、そこには。
血の海があった。
おびただしい数の死体、血で染まった部屋。その中に悠然と立ち、微笑みさえ浮かべている者は、あまりにも場違いで。
「遅かったですねぇ。もう、やっちゃいましたよ?なんか、不審者がいたんで。あ、そんな怖い顔しないでくださいよ。ちゃんと一人は生かしてますよ?私、有能ですから。」
彼女の着ている服も赤で汚れ、顔にも返り血が着いている。
クナイ片手に首を傾げる様子は愛らしくもあり、余計に違和感が引き立っている。
腰を抜かした…食事当番だったらしい女は気を失っている。
志乃の足元の死体から、すべて一撃で致命傷が与えられていることがわかる。
相当の手練れでないと無理だ。
「これ、志乃がやったんだ?」
志乃はすんなりと頷く。
「そうですよ。あ、部屋を汚してしまいましたね。つい…。減給ですか?
」
強張った笑みで聞くと、返ってきたのは肯定。
「減給には、ならないんじゃないかな。」
「良かった。」
その夜、佐助は志乃という忍の異常性、そして強さに初めて触れた。
それは、『夢幻の華』が彼女だという真実を否定させないだけの力があった。