弐
佐助は少年と青年の間くらいです。
チャラッとさわやか!みたいな?
高1くらい。
少女が目覚めた。
「あ、あの…。ここは…?」
「!心配いらないよ。上田城のなかだ。俺は真田幸村。」
「お、お城?真田幸村様?」
驚いた顔の娘は、栗色の目をまん丸にしてから、俯きながら言った。
「嗚呼、これも天のお召しぼし…。妹ののため、今まで宿で身を粉にして働いてきましたが、ついに宿を追い出され、職をなくしました。これからどうやって生きてゆけばよいのか…。どうか住み込みの洗濯女として、私を雇っては下さりませぬか…。」
佐助は、天井裏で聞きながら、
「そうだったのか…!大丈夫だ、もう心配いらないよ!」
という幸村の返事を耳にした。
少女はよく働いた。佐助の命で監視についていた忍も不審なところは無いと言っていた。3日たち、大丈夫だと思った佐助は、監視を外すことにした。
佐助は今日も、任務へ向かう。
(今日は…、確かどっかのお姫さんとこだったっけ。)
姫の部屋にある書物に記された、財宝の地図を書き写してこなければならないらしい。
闇へ、佐助は降り立った。姫の部屋だ。
「貴方は、誰でしょう?死神さん?私を、殺しにきてくれたのですか?なんて、ね・・・。」
「!?」
少女は、くすっと笑う。佐助は何の気配も感じなかった。異常なことだ。
「…ふふ、違うなら、帰ってもらえまか?。今はまだ、その時ではありません・・。」
姫が振り向く。
その微笑は、ただ、美しかった。月明かりが、謎めいた神秘的な美貌を引き立たせていた。まるで、かの有名なかぐや姫のような。
「名前は、なぁに?」
「猿飛佐助。侵入者だよ~。キミは誰?」
「…輝夜。香久夜でも可。」
「ぴったりだ。いー名前。」
ふふっ、と楽しそうに笑って「ありがとう。」という。
普通の姫君ではないことは確かだ。
「・・・貴方、地図を探してるんでしょう?」
「知ってるんだ?」
輝夜はにこ、と微笑んでスッと一冊の書物を差し出した。
「欲しいのですよね?」
「欲しいねー。貰っちゃってよかったり?」
「んー、どうぞ。」
何の抵抗もなく渡された書物に警戒しながらも、笑顔で受け取る。
「帰るのかしら?」
「そー、帰るのですよ。」
ひょいと高い塀に飛び乗った佐助は、「じゃ、また。」と言って消えた。その挨拶が一番ふさわしく思えたからだ。
この少女には、また会うような気がした。佐助は、少しいい気分で、屋敷を後にした。
「………どうして。」
彼女のつぶやきを聞くことなく。