祭り特派員 6
end その2
日が暮れて、月が空の上に昇る頃。その場所は、灯りに満ちていた。
年に一度の盆踊り。町の人々は、踊り、屋台、雰囲気、それぞれ様々な楽しみ方で祭りを楽しんでいる。
そこを、一人歩く女性の姿があった。
長い髪をアップにまとめ、右手にりんご飴、左手にヨーヨー、更に頭にはお面と、祭りを存分に楽しんでいる装いだった。
「ふんふふーん〜、やっぱりこの祭りは楽しいよねー、まぁ盆踊りが主なんだけどさ」
鼻歌まじりで歩いていると、
「おや〜?」
前に二人組を見つけた。
「よーし、さっそく屋台を見て回るとするか」
「うん、まずはどこから行く?」
「そうだな……結構屋台の数多いしなここ、なるべく効率良く回った方が…」
「ちょいちょい、そこのお二人」
「うぉ!?」
「きゃ!?」
間に入った女性に二人は驚き一歩下がった。
二人は男女で、茶髪の少年と、日傘を手に持つ少女だ。
「な、なんすか?」
「ひょっとしてキミ達……」
女性は声を潜めて、二人に訊ねた。
「祭り特派員やってる?」
「え!? な、なぜそれを!」
「あ、ダメだよ! 他の人にバレちゃいけないって……」
「あ、ヤベ……」
「ノープロブレーム。誰かにバラすことはしないよ」女性はりんご飴をかじり、二人を交互に見る。
「こう見えて、昨年の祭り特派員やってた者です」
「去年! ということは先輩!?」
「いえーす。そして今年もまたやらないかと電話も来ました」
「す、凄い……」
女性は茶髪の少年の腰に、帽子がついていることに気付いた。
「ふむふむなるほど……多分帽子を被ってたこっちの子が日傘の子と一緒にいたところを見つけて声をかけた、という感じだね」
「はい? 何ですって?」
「気にしなーい。ただの一人言さ」
「はぁ……」
「そんなことより。今年もまた、祭り特派員は何人もいるみたいだね」
「え? 俺達だけじゃないんですか?」
「一人は知ってるよ。本人に聞いても否定するだろうけど」
「へー、俺達だけじゃないのか……」
「会ってみる?」
「会えるんですか!?」
「おぅともよー、ついでに効率良く回る道順も教えてしんぜよー」
「おぉぉ……」
「ありがとうございます!」
少年は驚き。少女は深く頭を下げてお礼を言った。
「さー! 着いてきなさーい!」
女性の後に続いて、茶髪の少年と日傘を持つ少女は祭りの中を歩いていった。
―――翌日、町の掲示板には祭り特派員の評価シートが貼られていた。