ギルドマスター
エサを見つけたアリの行列みたいに、翼竜と街の間を冒険者たちが往復している。
シュンも荷車に翼竜の亡骸を乗せて運んでいた。
その荷車の後ろを、ユキミは押してくれている。
「ユキミさん。ユキミさんは翼竜を倒す大手柄を取ったんだ。こんな事しなくても……」
「い、いや、したいから……」
改めてユキミさんはいい子だなと思うシュン。
「ユキミさんは命の恩人だぜ。ありがとな」
「そ、そんな……」
昼過ぎには運搬が終わり、一息つく事ができた。
ギルドの食堂で椅子にドカッとシュンは座る。
「いやー、疲れた疲れた」
ユキミと隣同士でお茶を飲みながらくつろぐ。
翼竜の買い取り査定が終わるまで、どう時間を潰そうかと思っていたときだ。
「失礼します。シュンさん、ユキミさん」
見慣れたギルドスタッフがやって来た。彼女の名をシュンは知っている。
「あぁ、レモンさん。どうしたん?」
「ギルドマスターが翼竜の件でお話が聞きたいと」
レモンと呼ばれたスタッフの言葉をシュンは聞き返す。
「お? ギルドマスターが?」
「はい。お話がしたいと」
「まぁ、Dランクの冒険者が翼竜倒しましたなんて言ったら気になるよなー。ユキミさん行っといでー」
シュンにそう言われ、ユキミはビクッとし、声を震わせる。
「わ、私を一人にしないでくれ……。見捨てないでくれ……」
「いや、言い方よ言い方!! わかったわかった、俺も行くから。いいよな? レモンさん」
レモンは笑顔を作って返事した。
「はい。大丈夫ですよ! むしろ証人として来て頂かないと困ります」
「はいはーい。行きましょユキミさん」
「うん……」
レモンの案内でギルド奥の応接室まで歩くシュンとユキミ。
ユキミは翼竜を倒した者とは思えないほどしおしおとしており、浮かない顔をしていた。
心臓はバクバクとしており、シュンの服の後ろを摘まむ。
「や、やっぱむり……」
「えー。大丈夫ですって。俺もなるべく話すんで」
応接室に入れられてしまったユキミは縮こまり、翼竜を倒した時のような凛とした佇まいは見る影もない。
座って待っていたギルドマスターが立ち上がり、ユキミに手を差し出し、握手を求めてきた。
「こんにちは。お話は伺っていますよ、ユキミ・サヴィさん。シュンさんも翼竜に会うとは災難でしたな」
「あ、あが、こ、こんにちは!」
噛みながらも挨拶をし、手を握るユキミ。
「どうぞお掛けください」
ギルドマスターに促され、シュンは柔らかなソファに座る。
「失礼します」
ユキミもガチガチに緊張しながら座った。
「し、失礼しましゅる!」
二人が座ったのを見て、ギルドマスターが話を始めた。
「まずは、お二人ともご無事でなにより。それで、ユキミさんはDランクなのに翼竜を倒したと……」
口をパクパクさせるユキミの代わりにシュンが答えてやる。
「えぇ、間違いありませんぜ。この目で確かに見ました。ぶっとい氷柱がブワーって出て翼竜が串刺しになるのを!」
「どういった魔法か詳しく教えて頂けませんかな?」
「ぶ、ブライニクルスラッシュ……と言います」
うーんとギルドマスターは悩む。
「浅学で申し訳ない、存じ上げませんな……」
「き、北の国の魔法剣術なので……」
そこでギルドマスターは提案する。
「信じていないわけではありませんが、是非とも一目見せてほしいので、ギルドの広場で披露願えませんかな?」
「ユキミさん、実力を見せてやろうぜ!」
「あ、あわ、はい!!」




